第19話 ヘイヴンの悩み
怪我をした騎士達の治療が本格的に始まった。
ニーナは騎士の傷の状態をじっくりと診ていく、そしてテキパキと薬草を処方していく。ベッドもそれぞれの症状に合わせて作っていく、足りない薬草はその都度ヘイヴンに伝えていく。
治療を受けている騎士はもちろん、砦にいる騎士全員が今やニーナに注目している。
その風変わりな治療法のせいもあるが、もちろんその目を引く美しさだ。
ヘイヴンはニーナにずっと付き添い、手伝いをしている…、と言うのは表向きで、物凄い殺気を出し始終騎士達を睨んでいるのだ。
そんなことに気付かないニーナは初めて会う騎士達と和気あいあいを楽しくおしゃべりしながら治療をしている。
「はぁ~、疲れた~!」
ヘイヴンは隊長の執務室に入るなりソファーに倒れこむ。
「…おまえなぁ、あんな殺気をずっと出してりゃ疲れるさ。ま、初日にああすれば後は楽になるだろうさ。」
「そんなに酷かったか?」
「そんなんで…、これから先どうするんだ?王都に行くんだろう?王都中の男を睨み付けのか?」
「…ああ、一緒に行くことになったが…。…正気でいられる自信がないな。いっそ彼女をどこかに閉じ込めて…。」
「おいおい…、危ないこと言うなよ…ま、彼女なら大丈夫なんじゃないか?オレの美貌でも何ともなかったんだ、誰だって平気だろ。それに、嫌な男と王都まで一緒に行く女ないていないさ。」
「…どうだかな…。」
今のニーナの最大の関心は羽毛布団だ、王都に行けば他にももっとニーナの心を捉えるものはたくさんあるだろう。
どうやって長くニーナを繋ぎ止める? どうやってニーナと長く一緒にいられる?
しばらくすると、ニーナの治療法はぐんぐんと成果を見せ始めた。
負傷していた騎士達はどんどん良くなっていった、回復はゆっくりだが完璧に治ってゆく。隊長はすっかりニーナの治療法が気に入っている。
「ニーナ譲の治療法は良いな、新しい回復療法だ。王都に報告するか?」
「…いや、これ以上ニーナを縛り付けておきたくないな、しかし…、誰から話がゆくか分からないからな…、ツテを頼るさ。」
「あぁ、あのツテねぇ…、どうでるかね?」
「ま、すべてはニーナが決めることだ。…嫌ならまた森に帰ればいいだけさ。」
「おまえはそれで良いのか?」
「はは…、どうだかな、追いかけるかな。」
「…おまえなぁ。」
一週間もすると騎士達の治療は第二段階の体力回復になった、もうベッドには薬草はいらないとニーナは判断してベッドの具合を変えてゆく。変わった治療法だが、今ではすっかり良い睡眠は良い体を作る!というのがここの騎士達に浸透していた。
怪我を負った者もすでに剣の鍛錬に参加している、ヘイヴンもすっかり元通りだ、いや…以前よりも増して厳しい鍛錬をこなしている。
ニーナは時々騎士達の鍛錬を見学していた、ヘイヴンと出会ってからの自分の生活の変化に戸惑っている自分と楽しんでいる自分。
ふと、ヘイヴンを見る。なんて美しく剣を振るう人なんだろう…、今まで男の人とあまり接点がなかったので気付かなかったがヘイヴンは顔も美しい。なんだか段々と顔が熱くなってくる、これは一体なんなのかニーナはまだ分からずにいた。
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