第18話 注目される二人

 ニーナは初めての自分の作った以外のベッドで寝た、というか眠れなかった。

あ~、早く羽毛のベッドで寝てみたい…。頭の中はこればかりだ。 ま、このベッドだって悪くないわよ。でも…。グダグダとベッドの中で考えているとドアを叩くしょうがないのでのそのそとベッドからでる。


「ニーナ、起きてるか?」 

「おはよう、ヘイヴン…。」 


 ドアを開けた瞬間、一気に目が覚めた。

そこには騎士の制服を着たヘイヴンが立っていた、いつものシンプルなシャツ姿の時とはまるで別人のようだ、髪の毛も奇麗に梳かし付けてあり、ヘイヴンの整った顔が良く分かる。初めて見る姿に思わず見とれてしまう。


「どうした? 顔が赤い…。 あぁ、俺の制服姿に見惚れたか?」 


 意地悪そうな笑顔。 いつものヘイヴンだ。

またヘイヴンに心を見透かされた…、ニーナは平静をよそう方法見つけなけらば…と心臓の鼓動が早くなるのを感じながら思った。



 今日は街へ必要な物を買いに行く、ニーナはいつものフード姿。

ヘイヴンは騎士団で必要な物を買うという理由で制服を着ていた、それにしても目立つ。こんな素敵な騎士様がフードを被った怪しい女と歩いているのだ、気にならない方がおかしい。ヘイヴンは慣れているのかそんなこと全く気にしていない、ニーナはも人に見られることには慣れているが、いつも感じる心地悪さとは違いどことなく落ち着かない。

 隣り合ってはいるが、この国の商店に並んでいる品物は大分アルトニアとは違う、ニーナはキョロキョロと辺りを見ては驚いている。早々に治療に必要な物は買い揃えたので、今はもうファンデーヌの街中を散歩がてら歩き廻っている。


「あぁ、あった! あそこでニーナの服を買おう。」

「…え、本当に? 必要ですか?」

「ああ! 王都に行くとなるとドレスも何着か必要だ。」


「…まだ…行くとは言っていません。」

「そうか? しかし、馬車の旅はいいぞ、窓から見る景色の移り変わりはすばらしいものだ。」

「うぅ……。では、ドレスもヘイヴンが選んでくださいね、私にはでレスの良し悪しなど分からないので!」 


 ニーナはヘイヴンに仕返しをしてやろうとドレスの選択を押し付けたが、ヘイヴンには全く効かなかった。

 ヘイヴンと店主が話をしていたかと思うと、何名かのお針子らしき女性がやって来てニーナはあっという間に試着室に連れて来られてしまった。

ニーナは着ていた服をむしり取られ、今やあれやこれやとサイズを測られたり何着ものドレスを着ては脱ぐを繰り返していた。終わりなく続くと思われた時間はニーナの体力の限界とともに終わった…、ニーナがぐったりとして試着室を出るとヘイヴンは優雅にソファに座りお茶を飲んでいた。そしてさらに憎らしい口を利く。


「良いものが見つかったようで…、似合ってますよ。」


 ニーナは最近街で人気というワンピースを着かされていた。何とも可愛らしく、まるでニーナのために作られたデザインのように似合っている。ニーナはこんな上等な洋服は着たことがないので落ち着かない、自分が自分でないような…、そんな気分。

 店員はドレスの方は後日届けるということをヘイヴンに説明すると、どのドレスもニーナにとても似合って選ぶのが大変だったと力説している、ヘイヴンは全部買っても良いのだが…などと言っている。

 店主もそれを聞いて顔がほころんでいるが、ニーナはもう居たたまれない気持ちでそれを全力で止めるしかなかった。




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