第17話 おとりは羽毛布団

 ヘイヴンは自室に戻り、シャワーをして久しぶりに自分の服に袖を通す。

ベッドに腰を下ろし久々の自分の部屋、服、ベッドに不思議な感覚に襲われる。

ふーっと大きな溜息をつくと、この自分の身に起こった様々な出来事を振り返る。

しかし、今はまだ思い出に浸る時ではない…まだまだこれからなのだ、何もかもが始まったばかりだ!


 すでに夕刻だ、ニーナも少しはゆっくりできたはずだと思い夕食に誘うためにニーナの部屋を訪れる。ドアをノックするとニーナがすぐにドアを開けた。


「ヘイヴン!!! 羽毛布団がありません!」

「え⁈…あ…、すまない…、ここは騎士のための宿舎だからな、羽毛など高級品は置いていないんだ。」


 ここでヘイヴンはとてつもないが良い案を思いついた。


「王都に行けば、羽毛布団などいくらでも用意できるんだが。」


王都…?思いがけない言葉にニーナは考え込む。てっきり羽毛とやらをここで堪能出来ると思っていた。あわよくば直ぐにでも羽毛布団を土産にしてアルトニアに帰ろうと思っていたのだ。


「王都は遠いの?」 

「そうだな、馬車で2,3日というところか。」

「馬車⁈」 


何日かかるかなんてもうどうでも良かった、今はもう乗ったことがない馬車という言葉に夢中になっている。


「ところで、ニーナ。 君は着替えなどは持ってきたか?」 


ニーナの荷物の少なさから予想は出来たが…。ニーナは黙っている。


「さては、治療が終わったら羽毛を持ってさっさと帰るつもりだったな?」


ニーナは驚いて、なんで分かるの???とい言わんばかりの顔をしているが、そんなことはお見通しだ。ニーナはどれほど自分の考えが顔に出るかも分かっていない。


「ニーナ、何人かの騎士が怪我に苦しんでいる…、助けてもらえるだろうか? もうすでに君にはたくさん助けてもらっていて図々しいのは承知だ。もう少し力を貸してくれ。」 

「ヘイヴン、忘れたんですか?私はそのためにここに来たんですよ!そんな顔しないでください、今からだって診れますよ?」


 

 夕食を軽く済ますと、早速患者を診て回ることにした。 

重症の者から状態を診ていく、急を要する者はいないようでホッとする。薬草は保管してある分では全然足りないようで至急補充が必要だ。


「薬草は明日用意しよう、出来るだけ間に合わすが…。 ニーナは何がどれだけ必要かだけを指示してくれればいい。明日は俺と街へ行こう、案内するからニーナの必要な物を買おう…お礼だ。」






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