第16話 副隊長帰還す!
ファンデーヌの砦が見える、ついに戻って来たのだ、ファンデーヌ王国に!
ヘイヴンは森から見える見張り台に向かって叫ぶ。
「ヘイヴン・フロンデース第二騎士団副隊長、只今帰還した!!」
「え?! ヘイヴン副隊長⁈」
見張り台にいた隊員は慌てふためいている。
ヘイヴンの帰還に砦の中は大騒ぎになっている、そしてヘイヴンが騎士団の副隊長だとたった今知ったニーナの心の中も大騒ぎになっていた。
砦の中に入ると隊員が一斉に押し寄せてくる、皆に囲まれて質問攻めだ。
それもそうだろう、一か月以上行方不明だったヘイヴンが突然姿を現したのだ。
隊員の皆はヘイヴンが魔獣に襲われ大怪我を負いながら数名の隊員と共に森の奥に姿を消すのを見た。皆が生きて帰るとは思っていなかった、しかし、今この目の前にいるヘイヴンは怪我もなく討伐に行く前の彼と同じなのだ。しかも、フードは被ってはいるが女性を連れている!
隊員が戸惑う中、勢いよく扉を開けて入って来たのは、この第二騎士団の隊長だ。
「ヘイヴン!!! おまえ、生きていたとは!!」
力強くヘイヴンを抱擁し背中をバンバンと叩いている、ヘイヴンはそれを引き離しながら言う。
「…隊長…痛いから止めてください。 ヘイヴン・フロンデース、戻りました。」
「ああ、良く戻った。……で、こちらは?」
「あ…こちらはニーナ…譲です。 手負いの私を介抱し、怪我を治してもらいました。 回復魔法が使えるようで…、その話はおいおい…。」
隊長は隣の女性が気になり早速質問してきたが、回復魔法と聞いてピクッとする。
「そうか…。ニーナ譲、第二騎士団一同からお礼を言わせて頂く、本当にありがとう。」
隊長はニーナの前に手を差し出し、ニーナの顔を覗き込む。隊長は金髪に碧眼の持ち主の美男子である、大概の女性はこのキラキラとした美男子を前にすると目を奪われてしまう。隊長もそれは分かっていてわざと女性の反応を見て楽しむ所があるのだ。
「いえ…、当然のことをしただけですので。」
ニーナはしれっと返す。隊長は女性からこんな反応が返って来るのは珍しいので、少し間をおいてヘイヴンの顔を見る。
「オホン…、隊長、ニーナ譲にそれは効きませんよ。」
「…へ⁈」
ニーナは訳が分からずヘイヴンの顔を見る。ヘイヴンは隊長の差し出されている手に目配せをする。 ニーナがハッとして隊長の手をとりお辞儀をする。
「すみません…、こういうのに慣れていなくて…。」
「…オホン。では、ニーナ譲には客室を使って頂く。必要なものは言ってくれ、何でも用意しよう。風呂にでも入ってゆっくりするといいよ。」
「…ヘイヴン、ニーナ譲を案内したら俺の部屋に来い!」
さっと厳しい顔になりヘイヴンに言う、ヘイヴンも顔つきが険しくなる。
トントン…
「入れ。」
「…この度はご迷惑を…。」
「そんなことは良い、無事で何よりだ。…で、あのニーナ譲は? 何があった?」
「…ふ~…。」
ヘイヴンはすでに頭痛がしていた。
ヘイヴンは簡単に何があったかを隊長に説明した。
「では、本当にニーナ譲は回復魔法が使えるのだな。」
「はい、私を見てください。この短期間で死を覚悟した自分がこうも回復しました。
傷の治りはゆっくりですが、治った後に体力回復まで考えての治療です。私の体は怪我を負う前よりも調子がいいくらいです、それに、剣の腕も衰えるどころか力がみなぎるような感じさえします。」
「そうか…、大分従来のものとはかけ離れているな。実際に見てみたい。…おまえと共に傷を負ったものがまだ治っていない…、ニーナ譲に頼めるか?」
「はい。聞いてみますがニーナ譲は規則など知りません…。自由にさせても?」
「おまえ…、そうやってニーナ譲のことばかり考えているな? まさかお前、ここでの治療の後もニーナ譲を引き留めるつもりか? フフッ…、そうか…ついにお前がなぁ…。」
「隊長!そんなことではありません! 私はこの国に一人でも多くの回復魔法士をと…。」
そんな言葉を前に隊長は鼻で笑っている。しかし、隊長の言う通りだ、ヘイヴンはどうやったらニーナを留めておけるかをずっと考えていた。
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