第12話 色の秘密
「大丈夫ですか? もしかして私の頭すごく重かったですか?」
ぐったりとしているヘイヴンに気付いてニーナが聞く。
「…いや…、そういうことじゃ…。 ああ…そうだ、花を摘んで帰るか? 今日はもう戻ろう。」
「え?…あ、私そんなに寝てしまいました? ヘイヴン様の腕枕が心地良くて、つい…。」
何とか話題を変えたいヘイヴンは花に目を向ける。
「あの花なんてどうだろう? 赤とピンクのグラデーションが綺麗だ。」
「そうですね、香りも良さそうです。」
何か…何か違和感を感じる。
「ニーナ殿は花が好きではないのか?」
「いえ…、好きですよ…。」
やはり寂しそうな顔をしている、そんなニーナに摘んだ花を手渡す。
ニーナは手渡された花の香りをかいで目を閉じる。
「…良い香り…。」
「…この色は嫌いか?」
ニーナは何も言わない。
ヘイヴンは気になっていた。以前街の花屋で買った花、茶色に変色してもニーナは飾り続けていた…。 家にある色が揃っていない食器や家具…。 ヘイヴンの持つ色への無反応さ。
今もあのグラデーションの花と言った時にニーナが見ていたのは…別の花だった。
長い沈黙の後、ニーナが静かに言う。
「ヘイヴン様、私に色の好き嫌いはありません。……もうお分かりなんですね?
…私には色が分からないんです。」
「…そうか……。」
違和感の正体…。
「私は気にしていません、私の世界は人とは違う風に目にうつるだけ…、確かに不便もありますが…、私には嗅覚も視覚も味覚もありますから!」
「うん…、君はやはり強いな。そうだな…色など関係ないな…。」
ヘイヴンは自分の瞳の色が嫌いだった、呪われた赤い瞳。両親も兄弟もヘイヴンの瞳については気にすることなく普通の家族の一員をして平穏に暮らしてきた。しかし、それでも自分の瞳のこととなると心の中は平穏とはいかなくなるのだ。
だから、ニーナが初めて自分の瞳を真っすぐ見つめてきたときに何かを感じた。
「…それに、この花がどんな色なのか想像するのは楽しいですよ。 何色であろうがこの花の香りが素晴らしいのは変わりありませんしね…。」
何色であろうが良いのだと…素晴らしさは変わらない。
ヘイヴンは今にも泣きそうになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます