第11話 膝枕? 腕枕?
「ニーナ殿、今日は森の案内を頼んで良いか?」
「…え、はい。では、どちらの方へ?」
「ファンデーヌの砦までの良い道はないか見たみたいのだ。」
「あら、それでしたらいくつかありますけど…どのくらいの時間で着きたいですか?」
その答えに戸惑ってしまう、いくつかのルートをどのくらいで行けるかさえも分かるものなのか…。怪訝そうな顔のヘイヴンに気付きニーナはと取り繕うように続ける。
「あぁ、私、以前からファンデーヌを訪れたくて何度か砦近くまで行ったことがあるんです。だからいくつかのルートを知ってるんですよ。」
ヘイヴンはますます何も言えなくなってしまう、魔獣の森を何度も通り抜けているニーナはそれほど異常なのだ。
「砦まで行ってなぜファンデーヌに入らない?」
この二国は同盟を結んでいて比較的行き来がやさしい、砦近くには街がありそこではお互いの国の商人が行きかっている。
「それは…、こんな女一人で魔獣の森から出てきては…下手したら討伐されてしまいますわ!」
「ぷっ…、それはそうだな… 私でもそうする。」
「あら、ヒドイです!!」
こんな美しい娘が森からやって来ては大騒ぎになる、という言葉をヘイヴンは声には出さなかった。
二人は家を出てファンデーヌまでの道を、ルートの一つ、〈魔獣に会いたくない人のためのルート〉を行くことにした。
しばらく森を歩いていくと、辺り一面の花畑に出た。
「この季節は花を売ったら良い商売になるんじゃないか?」
「…そうですね… でも私には難しいです…」
「?…少し休むか?」
花畑が広がる先にちょうど休めそうな場所がある、数本の木が良い日陰を作っていた。 木の下に着くといつものようにニーナは早速寝転がる、手足を伸ばしてゴロゴロし始めた。いつもはすぐにウトウトし始めるのに今日はなんだか時間がかかっている。
「どうした?」
「うーん…、なかなか良い位置が見つかりません…。」
「膝枕でもしてやろうか?」
ヘイヴンは冗談ぽく言う。ニーナは考え込む。
「ん?? 膝枕? 人間が枕になるなんて知りませんでした。」
ヘイヴンは真顔でこう言うニーナに笑ってしまう。そして、ニーナの横に腰を下ろし自分のももをポンポンと叩き膝枕を促す。ニーナはためらうことなく頭を置く。
ヘイヴンは胸が何かにつかまれたような感じになる。
「…う~ん…、固いですね。」
「ぶっ…ぶははっ!!!」
もう、こらえられず吹き出して、後ろに倒れこむ。
ニーナは驚いて飛び上がる。ヘイヴンは今や大の字になって大笑いしている。
「なんですか?急に…、あれ? ここならちょうど…。」
…と言うとニーナは寝転がっているヘイヴンの腕に頭を置く。ヘイヴンの胸板の厚さと腕の高さがちょうど良く、ニーナは頭をすっぽりとうずめている
「ああ、これはちょうど良いです、これは何枕になりますか?」
「……腕…枕だな…。」
ヘイヴンはもう何が何だか分からなくなっている、ただただ全身から汗が噴き出てきて、居たたまれない気持ち…、顔は火が付いたように熱い、そんな気持ちを知らずにニーナは気持ちよさそうに寝息を立て始めた。
一時間くらいだろうか、ニーナは昼寝から起きて今は元気いっぱいだ。
ヘイヴンは拷問にかけられた後のようにげっそりとしている。
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