第10話 二つの国と二人
一か月も経たないうちにヘイヴンの怪我はすっかり良くなっていた。
もう祖国へ帰れる、しかし嬉しいはずなのに心が重い。
ヘイヴンの国・ファンデーヌ王国に帰るには普通魔獣の森を迂回するしかない。
そうすると、数日はかかるし途中で宿をとらなくてはならず資金がかさむ。
森を突っ切ることが出来れば…、ニーナに案内してもらえたら可能かもしれない。
しかし、魔獣の恐ろしさは自分の身を持って知っているし、これ以上ニーナに迷惑をかける訳にもいかない。
「ヘイヴン様、今日は狩りに行きませんか?」
朝食を取っているとニーナが聞いてきた。 狩りでとった獲物の素材を売りさばいて旅の資金を作るしかないと思っていたヘイヴンのには願ってもない誘いだった。
「今日は何の肉がお望みですか?」
「ウフフ…、ウサギが手に入ればウサギのロースト。シカに会えたら最高なんだけど…。」
ニーナは心のままに動く。
毎日したいことして、食べたいものを食べ、眠りたいときに寝る。生きる上で当たり前のことなのだが、毎日の生活のことを考えると難しいことだ。
ヘイヴンは伯爵家の三男に生まれた、兄たちに家のことは任せて自分は騎士になるべく家を出た。騎士団の規則正しい生活がしっかりと身につき、静養している今も毎日の鍛錬は欠かさない。しかし、まだ万全とはいかないので鍛錬はほどほどにしている。時間を持て余すときは、薪割などニーナの家の手伝いをしたり、足を慣らすために家の周りの森の中を見て回ったりしていた。
こうして忙しくしようとしていても、目の端にポーチでウトウトしているニーナ、薬草の世話をしているニーナ、様々なニーナに邪魔をされる。
最初は自分と余りにも違う行動をとるニーナに興味があるだけだと思ったが、最近では少し違う、ニーナのことがもっと知りたい、自分の心のなにか…奥底のほうから湧き出るような感情…これがいったい何なのか、知りたくもあり、そのままにしておきたいような。
ヘイヴンがこれが何かを知るのはそう遠くないことなのであった。
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