第21話 振り出しに戻る旅!?

「とんがり帽子の狼?」

 オレは目の前の獣をじっくりと見つめる。

 確かに、帽子だけじゃない。

 この巨体もどことなく、彼女の要素を孕んでるよな。


「ししし、しかも、この子だけじゃないんです!」

 ラナは大袈裟な身振り手振りで語る。

「町には、こーんな大きさの動物や、あーんな小ささの動物がたくさんいたんです!」


「町にたくさんの動物が?」

 消えた大人。

 現れた動物。

 そして、とんがり帽子の狼。


「まさか、ノクシアさんは、人間から獣に姿を変えられてしまった? いや、彼女だけじゃない」

 乾いて喉に張り付く舌の根。

 じっとりと汗ばむ体。

 オレは戦慄した。


「この町の大人が全て、獣に変えられた!」


「けけけ、獣に? でも、それってマズいですよね、モネア様! だってわたしたちは、モネア様の呪いを解くために──」

「ええ、そうね。頼みの綱の賢者──ノクシアさんが獣に変えられてしまった。つまり、『詰み』。私たちの旅は『振り出しに戻った』のよ」


「振り出し? 何言ってんだ」

 オレはモネアとラナの肩を抱く。


「むしろ核心に近付いたんだぜ? オレたちは」

「かかか、核心? フェイン様、どういう意味ですか?」

「だってそうだろ? 今、この町には何者かが干渉したんだ、『人を獣にする呪い』で。つまり──」


 オレは二人に笑いかけた。

「その敵をブッ飛ばせば全部解決だろ? 簡単じゃねェか!」


「アンタ、マジで単純ね」

 大きくため息をつくモネア。

「けど──」

 彼女はオレの手を取り、笑い返した。


「あるかもしれない、わよね、『単純だからこそ解決できる問題』も」

「ああ! とにかく、手がかりを集めて、敵をブッ飛ばすんだ! ノクシアさんもスグ助けますからね!」

 とんがり帽子の狼に笑いかけ、

 オレはラナの手を取る。

 そして、みんなで堅い握手を交わした。

 刹那──


 背後で響くドアの音。

 その人影に向かい、吠えるノクシア。

「お母さんが、獣に……? 嘘でしょ?」


 すると後ろには、アウローリアが立っていた。

 寝起きのままの格好で、呆然と。


「だだだ、大丈夫ですよ! アウローリアちゃん! きっとフェイン様が全部──」

 優しく語りかけるラナ。

 けれど、


「きっと、『アウのせい』だ」

 小さく呟き

 アウローリアはどこかへ駆け出す。

 その目には、大粒の涙が浮かんでいた。


「お、オイ! アウローリア!」


 『アウのせい』?

 一体、どういう意味だ?


「モネア、ラナ! アウに話を聞くぞ!」

 オレたちは彼女の背を追った。

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