第2話 寝過ごしたらラスボス直前でした!

「やばッ! 寝過ごした!」

 オレはベッドか飛び起き、スマホを──


 って、ここはどこだ……?


 木でできた床と壁。スプリングも何も無い簡易的なベッド。煤けた暖炉。天井に照明なんて物は無く、みすぼらしい蝋燭だけが机の上に一つ。

 正に『異世界に来ました』って感じの内装だ。アニメやゲームで見る、異世界民家の一室みたいな雰囲気。


 自分も、いつの間にかスーツ姿じゃなくなってる。

 真っ白な羊毛を簡単に繋ぎ合わせた、簡易的なシャツとズボンだ。

 ん?

 でもオレ、


 女神さまに宣言してないよな、

 まさか、

 オレが全然起きないから、異世界に放り込まれたのか?


 でも、確か一回は起きた!

 その時は──


「まだ三時間程度ですよ、人間。もう心残りはありませんか?」

「いや、まだ寝ます! 社畜時代の名残りで三時間で起きちゃうんですよね〜」


 とか、やり取りした記憶ある……!


 とにかく、今の状況を確認するか!

 オレは、ベットの片隅──くしゃくしゃになっていた青いローブを羽織り、部屋を飛び出した。



 廊下を進み階段を下りると、肉や魚の香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。

 人々の話し声。いくつもの机と、その上に並ぶ食事。狭い空間を行き交う給仕。

 食事処?

 いや、宿屋か。でも、食事処が併設されてるなんて、そうとうデカい宿屋だぞ。


 オレは適当な机につき、男たちのやり取りに耳をすませる。

「ギャーッハッハッハ! だなッ、兄弟!」

 甲冑に身を包んだ大男は、向かいに話しかけた。

「オデも、、ど」

 彼の対面に座るのは、上半身裸で斧を背負った大男だ。


 しまった! 狂戦士タイプの二人か。

 見るからにパワー系だし、きっと話の内容もシンプル。聞き耳立てても仕方がない、か……。


「まさかオデが、魔王討伐のため姫騎士様の選抜部隊として選ばれるとは、栄誉に浴す、ど」

「ギャーッハッハッハ! 今日の夕刻には、眠れる魔王が目覚めちまうからなァ! 主君が為、身を捧げ奉ろうぜェ! ゲッゲッゲ!」


「いや話の内容詰まり過ぎィーッッ!!!!」


 要点全部喋ってくれたじゃん!

 マジで、さっきは先入観で舐めたこと言ってスイマセン!

 パワー系だからって、話の中身がスカスカなんて決めつけだよな。

 オレが間違ってたよ。

 

 つまり、今の状況はゲームで言うラスボス直前!

 オレ、どんだけ寝ちまったんだよ!

 寝過ごしたってレベルじゃねェぞ!


 せっかく異世界に来たからには、何かイベントこなして金稼がなきゃだよな?

 元々、365連勤が終われば、積んでたゲームもやるつもりだった。だから、ゲームのノリで異世界もガッツリ堪能しようと思ってたんだが……。


 ラスボス直前?

 寝起きのオレが、こんな一大イベントに介入できるのか……?

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