華のメロディとの出会い

ゆらゆら揺れる電車の中で、私はマーチ「エイプリル・リーフ」を聴いていた。

次の停車駅に到着し、隣に座ったのは華のような少女だった。

きっと私よりも年下だろう、そう思っていると、スマホの中で再生されていた動画がちらりと見えた。

20XX年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅱ「エイプリル・リーフ」

吹奏楽部なのか?とふわりと彼女の身の回りを伺うと、リュックに付いているひとつのチャームが目に付いた。

音符に挟まれた漆黒のクラリネット。

その先に繋がれた「かのん」という文字チャーム。

中学生かもしれないし、高校生かもしれないが、吹奏楽部でクラリネット担当だということはそれで伺えた。

彼女が乗ってきた駅周辺には中学・高校が合わせて3つしかない。

さらに、吹奏楽部がある学校となると、2つに絞られる。

強豪の私立「楠学園高校」か公立「東第3中学」だけなのである。

しかし、公立の方はあまり強いとは聞かない。

なんだか親近感を感じつつも、目を逸らした。

私には関係のない話なので、この時は気にも留めずに電車を降りた。

今思えば、この時が愛しいメロディとの出会いだった。

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