第7話 HELL MARCH
行政制度の改編は帝国の文明化と君主の支配力を確保するための第一歩。
君主が自分の土地がどのような形をしているのか、誰が住んでいるのか、何が生産されているのかを把握しなければ、ただ宮に留まるマスコット以上の役割を果たすことは難しい。
兵役、税金、労役、犯罪の追跡など、帝国を運営するすべての領域において、行政制度の不在は大きく感じられるだろう。
まともな行政は帝国の車輪であり、皇帝の手足だ。
中でも今日取り上げるのは「帝国領に対する勅令第1号。 地域の区分。」
ドラゴンズネストの中央火山を中心とし、その山から700kmに及ぶ全ての地域を帝国の皇道と定め、それに「ヨルムンド」という名称を与える
「もしかしてヨルムンガンドから取った名前ですか?」
アマテリンヌが尋ねた。
「...」
実は書き間違えた。 「ヨルムンガンド」にしようとした。
しかし、間違って書いたと言うのは恥ずかしくてそのまま決めた。
皇帝は先に臣民に公表した、自分の世界から来た単位を使った。
中央火山自体がかなりの大都市の規模なので、一つの都市にしてはかなり巨大な規模を誇るが、事実上皇城として利用されているここ、ヘパイストスルームの規模を考えると、都市の規模もそれに相応しく大きくなければならない。 狭い都市に巨大な宮殿があるのはちょっとぎこちないから。
どの国の歴史でも王政国家で首都とは「王が直接統治する領地」のイメージが強かった。 それだけに帝国の首都は皇帝の権威を反映する。
新しい首都ヨルムンドの各区域は中央火山から伸びる5つの脈に自然に区分され、時計回りに順番に第1~5区域と称する。
各区域に行政、経済及び商業、軍事、研究、外交などそれぞれの役割を与えた。
「続いて、補助火山5つをそれぞれを中心に400kmに及ぶ地域を副首都に定め、それぞれにネオバビロン、ネオロマ、ネオコンスタンティン、ネオテノチチチトラン、ネオクスコの名称を授ける」
地球の人類史に存在した有名帝国の首都名前を使った。
人類史屈指の帝国が柱となって支える巨大帝国というコンセプトで。
もちろん、これらの単語を理解する人はここにはいなかった。
竜人と龍族たちは「ネオ」という単語の意味さえ知らず、ただ皇帝が下賜した都市称号程度に考えていた。
「各副首都は噴火口に居住する龍たちにそれぞれ公爵位を下賜して行政を担当させ、各副首都を連結する円形の『汎皇道循環路』を開通する。 また、各付随度が皇道の各区域と連結されるようにする。 これを『梵皇島動脈路』と命名し、これにより各副首都が各区域の役割を拡張、補助する役割を果たせるようにする。」
続いて、「黄島ヨルムンドから汎皇道循環路に至る地域のうち、副首都を除いた領域を自然境界を基準に分割し、それぞれの都市に指定する。 ただし、自然境界に分かれた領域が大きすぎると判断された場合、任意分割する。」
皇道と副首都の計6つの都市の名前を作ったアウグストゥスだったが、その多くの都市の名前を指定できず、ただ住民たちが自主的に地名を作ることができるよう公募展および投票をするつもりだった。
「最外各地域の港もまた、1つないしはいくつかの港を含む領域をそれぞれの都市に指定し、帝国政府から任命する『総督』を派遣して、当該地域の行政及び軍事、貿易の監督を兼ねるよう命じる。 これらの都市で汎皇道循環路につながる道路を10ヶ追加開設し、既存に使用していた主要道路5ヶを含む15ヶの道路に犯罪発生および物資の運送を補助できる警察署を開設する。 「警察署」とは、帝国政府が指定する「治安総監大臣」が率いる「総警察庁」から続く「治安権」を行使する機関で、犯罪の予防及び犯罪者の逮捕及び引渡を担当し、同時に交通をはじめとする帝国内の秩序維持を補助する。 各警察署は、各地方の都市化が完了するまでの間、当該地域の行政権を一時的に行使する。 これは勅令によっていつでも収められる」
行政制度を改編し、最大限多くの人材を選抜しようとしたが、その数が非常に少なかった。 そのため、派遣された官吏に権力を集中させたり、公共機関にある程度越権できる権限を与えることに代えた。
竜人は本来知能が高い種族だが「行政」に対する理解と知識の不備により大部分の人材をエイヘリアが率いる龍神教の神官に代替した。
既存の新政制を採択したドラゴンズネストの特性上、神官長および神官が普通国家の政府要因を代替してきたためだった。
「…そして…」
一瞬、事故が停止し、肉体が言うことを聞かなかった。
ファンを落とした。
「あっ、小女が拾ってあげる···陛下?」
アマテリンヌがファンを拾って渡す瞬間、ぶるぶる震えている彼の姿が見えた。
「どうしたんですか, 陛下」
エイヘリアも彼の異常に気づき、あわてて近づいてきた。
周りの侍女と護衛兵たちも皆当惑し、途方に暮れた。
「陛下を寝室に立たせて医療大臣を呼びなさい、早く!」
宮中の機関を改編する過程で皇帝の医療を担当する医療大臣もまずは任命されたが、ほとんどすることがない職責だった。 龍族に「治療」なんて必要なかった。
職務に疲れた人間ならば「ホワイト企業」と言いながら羨ましがるだろうが、竜人の医療大臣にはただ自分が世の中に役に立たない存在だという考えしかなかった。
自分を探すことがないのが良いことなので、皇帝の病気を待つことではないが、自分がすることがないということだけが悲しかっただけだ。
エイヘリアに侍中を禁止したように、各官僚にも命令した職責以外の仕事ができないように厳禁した皇帝だったからだ。
それで、彼は皇帝が訪れるという言葉に心配とともに、自分が生きていることを感じながら、矢のように駆けつけた。
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意識が遠ざかっていった。 自分を切なく呼ぶ臣民の声がかすかに、遠くから聞こえるようだった。
目は開けていたが、雪原のように白い光以外には何も見えなかった。
そして
「クアアッ!」
自分の体が爆発するような苦痛が襲ってきた。
背中が、手が、足が、腰が。 それぞれ何かが皮膚を裂くような激痛。 人間だったら気絶しただろうが、アウグストゥスの肉体は気絶を許さず、すべての苦痛を完全に感じさせた。
気絶はしなかったが、波になって押し寄せる苦痛に何も考えられなかった。
苦痛を完全に感じながらも考えが薄れ、ここがどこなのかさえ、自分が誰なのかさえ分からなくなった。
自分が次第に自分ではない他の何かになっていく感じがした。
目の前にあった雪原が次第に血に濡れていくように赤に、深紅に、茶色に、黒に変わっていった···
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ヘパイストスルームが載せている空が急に夕方になったように赤い光に染まっていった。
場所を移しても、ベッドをすぐ目の前に見ても横になれない皇帝の安危を医療大臣に全て任せた後、この異常現象に対処するためにすべての龍族と竜人が戦闘態勢を整えた。
やがて空が赤黒の暴力に染まった。
その後、雨が降るように黒くもあり、黒緑色でもあり、赤黒色でもある何かがたくさん降り注いだ。
「ベルゼブプ…あえて皇帝陛下の聖域を侵そうとするとは…」
火山を背中と肩に担ぎ、すべての手足と翼が怒りと火炎で覆われた美しい火山龍王は静かにささやいた。
「神官長、君は皇帝陛下の居場所を守れ!」
「かしこまりました、龍王殿下」
エイヘリアは龍神教を祀る神官長が使える最も強力な範囲防御魔法、「ダイヤモンドフィールド(Diamond Field)」を展開した。
ヘパイストスルーム全体を包み込むことはできない。
皇帝がいる部屋のドアのすぐ前でフィールを展開すると、フィールドが触れる部分は既存にあった物質が壊れた。
加えて火山龍王の魔力を利用した「クリムゾン·リング(Crimson Ring)」と「クリムクリシニウム·バリア(Crisinium Barrier)」を同時に発動し、3重の防御魔法陣を展開した。
小さくて嫌悪な、生命体と呼ぶのも嫌な何かがこの神聖な土地をたくさん汚していた。
竜人たちはためらうことなく剣を抜いて彼らに駆けつけた。
彼らは竜人の剣に何の抵抗もできず、生きているより気持ち悪い姿に分かれた。
そして、その中から嫌な液体が流れ出て皇帝の領域を汚した。
その周囲にたった今切られた者のような姿ではないが、気持ち悪さだけは完全に同レベルの奴らが集まってきて、戦場の真ん中で口を当てていた。
彼らの正体を、彼らがすることの意味を知りたくもなかった。
ただ、斬って、斬って、踏んで、また斬った。 火炎魔法、電撃魔法、ビジョン魔法···あらゆる魔法を総動員して彼らを潰して割った。
しかし...斬る譲歩だ、踏む譲歩だ、潰す譲歩だ、むしろもっと多くの汚物が飛び出して再び飛びかかるのだった···
皇帝から直接クリシニウムの武具と斧、そして剣を授けられた栄光の戦士ネストテリオンは、無言で怒りを燃やし、いくら押し寄せても振り回し、また振り回していた。
もともと火山竜王の侍従の一人だった彼は、エイヘリアに押されて仕えることも奪われ、ただ閑静な歳月を送るだけだった。
龍族皇帝の目にとまり、栄光の武具を授けられた。
皇帝は自分が作った最初の作品を誰でもない自分に下賜した。
ネストテリオンは考えた。竜人はみな罪人だ。 竜人が怠慢だった罪で、最も安らかな人生を享受しなければならなかった皇帝陛下は、誰よりも重い荷物を背負った。
その重い罪悪感を斧に乗せて、その方の土地であり、その方が発展させようとする神聖な土地を汚すゴミたちを次々と打った。
「そう。いくらでも来い。 貴様たちが這い出た所にすべて返してやる。」
ネストテリオンは今、自分が撒き散らすこの汚い存在たちの体液と死体が、その方が建設しようとする偉大な帝国が咲く肥やしになることを願うだけだった。
皇帝が「持ってこよう」とした未知の武器体系はまだ研究中だった。
「皇帝のおもちゃ」一つがあることはあるが、この狂ったように接近してくる嫌な奴らを相手にそれを使うことは難しいだろう。
ただ、それとこの世界の兵器体系を結合しようとする試みがあった。
クリムシニウムと「黒鉄」の結合で作り出した厚い盾の上に丸い溝を掘り、その上に魔力球を撃つ大砲を乗せて作り出した大砲盾。
それこそ龍族の覇気がにじみ出る、人間は使えない重さの鉄の塊だった。
少なくとも単一の個体ではこの物を持ち上げることさえ不可能であり、車に乗せて馬や牛を使って引っ張らなければならないだろう。
「ククク。それが人間の限界」と嘲笑うアキルートは、その重い物をまるで綿でいっぱいのカバンを運ぶように軽く持った。
そして、同時に巨大なランスを授けられた。
普通の騎兵が使うランスは、未開の人間が本来のように薄くて比較的軽く作った、重さよりは長さに集中した物だった。
だが、このランスはこの物の製作者が偉大な「龍族皇帝」であることを示すかのように、大きく、巨大で、龍族の覇気がたくさん流れ出る物だった。
アキルートは皇帝が直接構想した栄光の武器を直接下賜された。 涙が出るほどうれしかった。 彼が思いっきり騒いで町中を歩き回ったせいで、その町の行政を担当した新官に苦情が殺到するほどだった。 皇帝に物を下賜された時点で嬉しいことも理解し、騒々しいことも理解するだろうが、その姿がみっともないという理由だった。
そしてついに、皇帝陛下からいただいたことで皇帝陛下の沃土を守る機会がやってきた。
汚い者たちがこの神聖な地を踏んだのは不快極まりないことだが、皇帝陛下の敵を裂いて殺す機会が来たということだけは笑いが出るほどだった。
無知な怪物たちが何も知らずに駆けつけると、盾の大砲が火を放った。
接近する大量の敵を殺傷するのに最適な弾、「焼夷散弾」だった。
この武器に入る「弾」が別にあるわけではなかった。
聡明な皇帝陛下は、使用者が大砲に魔力を与えると、大砲に付いた魔法が自動的に希望する魔力弾に変換してくれる装置を考案した。
もちろん、これを具現するために数多くの鍛冶屋と魔導学者が駆けつけて研究しなければならなかったが、彼らが研究して作るのは本来彼らの役割に過ぎず、皇帝が直接武器を構想するのは当然のことではなかった。 少なくともアキルートの考えではそうだった。
ランスも普通の鉄の塊ではなかった。
ランスを振り回す度に周辺部に「ダウンスピード(Down Speed)」魔法が発動し、敵が遅くなった。
皇帝陛下は、このランスにもう少し多様なものを追加したいとおっしゃった。
その方がやりたければ当然しなければならない。 そのためには、この無駄な邪魔者など、すぐに消えなければならない。
「陛下の作品を、小臣は常に期待しております」
と思い、盾で撮り、ランスで突き刺し、砲を放ち、目の前に見える全てのものを切り裂くアキルートだった。
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時間を少し戻して、アペリウス山脈。
「ご先祖様」の背中に乗った子孫とその友人。
龍仁ならば自身などがあえて龍に乗っているという事実自体に耐えられないだろうが、「龍の子孫」の意識はただ人間に過ぎないので、今から「飛んでいく」という事実だけが恐ろしかった。
「本当に大丈夫ですか? 離れて死ぬのではないですか?」
「ああ、余を何だと思って。 君が乗っていた龍馬などよりはずっと早くて安定的だろう。 目を閉じて開けば到着だと!」
2人の人間を乗せたタリキロンは、滑稽そうに話した。
背中に火山ができた自分の母親のアマテリンヌなら、人間が乗れない。
だが、タリキロンの背中はただうろこが生えた平坦な背中なので、人間が乗るにはぴったりだった。
それに落ちるのを心配するなんて? 数千万年を生きてきた自分が、そんなミスをするだろうか。 人間を乗せてみなかったのは事実だが···
「…せめて捕まえるものでもないんですか?」
事実、レウグートの目にはご先祖様の頭に生えた2つの「取っ手」が見えた。
しかし、どうしても捕まることができなかった。 ご先祖様の頭をつかむ格好ではないか。
「俺は君を掴んでいるよ…」
まるでバイクに乗っている愛らしいカップルのように、レウグートの腰を握っているシフルだった。
シフルを尊敬するのは事実だが男性が、それも筋肉だらけのおじさんが自分にそんなことをするのが不便だったが···
「俺が君を助けてやったんじゃないか。」
という言葉には口をつぐむしかなかった。
「心配するなって! 忘れ物がないか確認してみろ。」
剣、斧、そして弓。
実は一度も言及しなかったが、レウグートは弓を持ってきた。
通常の遊牧民とは異なり、龍馬に乗っている「龍の子孫」騎兵隊は弓にそれほど熟練していない。
彼らが乗っている龍馬は普通の馬の何倍もの速さを持っていて、全速力で走る龍馬の上での射撃照準というほとんど不可能に近かった。
その上、必要性を感じられなかったりもした。 なぜ弓が必要なのか? 矢の速さを持った龍馬に乗るんだけど。
しかし、レウグートは違った。 龍馬に乗る実力も、龍馬に乗って弓を射る実力も「龍の子孫たち」騎兵隊の通常の実力をはるかに越える人材だった。
だから今回も自分の主武器を持ってきたんだけど···
出発する時からシフルは「使うことがないだろう。」と大言壮語した。
なるほど、山から出没する怪物の皆がレウグートの装填時間をはるかに上回るつらつとした速度を誇った。
それでもどうせ持って行ったから何回か使おうとしたが···その度に、シフルがあの世の入り口で支えてあげなければならなかった。
そして···残った食糧···とはいえ、レンガとして使えそうなビスケットの非常食が全部。
本来は水に溶いて食べなければならないが、怪物が住む山から流れ出る水を信頼できず、最後まで残った食糧だった。
この食品を装った投擲用武器を見るたびに、山での悪夢を思い出して投げてしまった。
山を汚したと言えるが、山に石がもう一つあるのはどうか。
人間が食べられなかったものを怪物とかアリとか食べればいいことじゃないかと思って投げたビスケットが石に当たってどうしても食べ物が出す音だとは思いもよらない打撃音が聞こえた瞬間···
風景が変わった。
「うわぁ、急に飛んだらどうするんですか!」
「大丈夫だってば!」
大丈夫じゃなかった。
この惑星が主管する重力、慣性力、空気抵抗などすべての種類の物理作用を全身で感じていた。
このままだと、ご先祖様が気づかない間などに消えて、名前も分からないある地域で変死体として発見されそうだった。
いや、遺体が見つかる地域ならむしろよかった。
ご先祖様に対する礼儀など、これ以上考えられなかった。
生きようとする意志が勝手に先祖の「取っ手」を握ってしまった。
しかし龍馬をご飯を食べるように乗って通ったおかげか···思ったより早く適応したし···後ろで死んだように見える者が本当に死んだのではないかと心配できる余力までできた。
「おじさん、大丈夫ですか?」
「俺...おじさん...じゃない!」
山での凛々しい姿とは違って、声を絞り出して自分の年齢に対するアイデンティティを否定するシフルだった。
立場が変わった。 山から飛び出る怪物なんて何でもなかったが、馬を使った速いスピードを楽しまなかったシフルは、全力で気を引き締めた。
アウグストゥスが気絶できない自分の肉体を恨む反面、人間に過ぎないシフルは全力を尽くして精神力を維持していた。
気絶すると思わずレウグートの腰を絞るように掴んでいる手に力が抜ける···落ちて······変死体で発見···同じ恐ろしいシナリオがシフルの頭の中で常時放映されていた。
一方…タリキロンは自分が行かなければならないところで何かが起きていることに直観的に気づいた。
「子孫よ、弓を握げるか?」
「今?なんでですか?」
「聞かないで答えなさい!」
「なんとかできますよ。」
「早く装填しろ!余の向かうところを狙え!」
考える間もなく従った。
「飛行」という新しい移動方式に適応するためにすべての意識を集中していたので判断力がぼやけて、ただ言う通りに従うしかなかった。
弓にデモをかけて引いた瞬間、目の前に天空島一つが現れるかと思ったら、その中央を赤い何かが覆い、多数の人々と龍が這い出る何かと戦っているのが見えた。
「撃て!」
どこを撃てばいいのか分かった。
ご先祖様が自分の種族を撃てと言うはずはなかった。 また、レウグートの種族を撃てと言う者でもないようだった。 実は今見える者たちは人間ではなく龍仁だが。
それで、すくすくと這って出てくるおぞましい何かに向かって弓を射た。
デュプリケートオブジェクトは使用していない。 乱戦が繰り広げられる中で、乱射を加えれば味方と判断される者たちが殴られる可能性もあった。
乗っているのが龍馬なら彼らに傷一つつけずに3発の矢を全て敵に命中させる自信があったが、今乗っているのはご先祖様だった。
徐々に適応しているとはいえ、単純に乗っていることに適応しただけで、乗って弓を射ることはまた別に適応しなければならない領域だった。
弓ではなく矢に魔法をかけた。
「エクスプロージョン(Explosion)」と「アヴォイド·フレンドリー·ユニット(Avoid Friendly Unit)」。
アボイド·フレンドリー·アタックは攻撃を避ける側で使う魔法だが、アボイド·フレンドリー·ユニットは攻撃を仕掛ける側で使う「エドオン·魔法(Add-on Magic)」だ。
一般的には避ける者それぞれが魔法を使う方が、攻撃する者が一人一つ一つ魔法を使うより効率的で負担も少ないのでよく使う魔法ではなかったが、今のように突然乱入して戦う場合、地上にいる味方全員にいちいち魔法を使ってもらうことはできないので、仕方なく使うのだ。
地面に落ちた矢は爆発し、虫のような形をしたやつをかなり処置した。
見たところ、敵は肉体の強さではなく、数字で押し通すタイプ。だとすれば、これはレウグートの専門分野だった。
シフルも助けたかったが、近距離の魔法しか使えないうえに、レウグートとは違って飛行に気を引き締められない状況でシフルができる攻撃とは、ただ乗り物酔いによる嘔吐爆撃だけだった。 しかし、虫のように見えるやつらにとって、それはかえってご褒美かも知れないと思い、渾身の力を尽くして我慢していた。
「火炎抵抗魔法を使うように!」
「レジストフレーム(Resist Flame)!」
「…もっと強い魔法はないのか?」
「もっと強い魔法がありますか?」
「…しょうがない。 行くぞ!」
ご先祖様は口を大きく開けて虫たちの上に火炎を吐き出した。
「これがまさに…···ブレス…」
ご先祖様の素敵な姿に感嘆したのは、レウグートだけではなかった。
地上で戦っていた者たちでさえ、何か感激したかのように剣を振り回す速度を出し始めた。
いや、むしろレウグートより彼らがもっと感動したように涙を流す者もいた。
そして...ブレスを直撃したのに虫たちとは違って何のダメージもないように見える「味方」たち。
さぞやすでにアボイド·フレンドリー·アタックのような魔法を使っていたのだろう。 それなら、レウグートももはやエドオン魔法を使う必要がなかった。
その代わり、デュプリケートオブジェクトを発動し、爆弾の矢じりを吐き出すだけだった。
一方、戦場の中心部中央火山ヨルムンド皇宮部。
アマテリンヌは憎しみに満ちた敵に対して思いきり怒りをぶちまけていた。
気持ちとしては、自分がドラゴンズネスト全体を守護したかった。
しかし、アマテリンヌはベルゼブブープが誰なのか知っている。 そして、彼が率いる軍隊の特性も知っている。
その恐ろしく憎らしい虫の怪物は、アマテリンヌがここで消えるその瞬間を狙っているだろう。
この周辺部で戦う龍人たちに「龍魔力」を与え、防御と魔法のダメージを増やしていた。
戦場全体にそのエネルギーを供給したいが、アマテリンヌはここの戦闘に魔力を最大限集中しなければならない。
もちろん、アマテリンヌとこのような些細な者の間の戦闘力の差は、それこそ天と地の差、いや天上と地獄の差だろう。
竜族の最上位強者「龍王」と人間が踏んでも死ぬ「虫」たちの戦いだ。
しかし、目で見るのも難しいほど小さな砂が、土が積もって火山を成すように、数字は一人一人がやり遂げられない多くのことを成し遂げる。
この火山を成す土の数だけ多くの虫が集まってくるならば、いくら火山龍王でも命がけで戦うしかなかった。
そしてベルゼブブの軍隊はそれが可能な軍隊だった。
自分のもう一つの肉体であり力の源泉である中央火山と共にする限り、火山龍王は無敵だ。逆に言えば、火山から遠ざかるほど、アマテリンヌは弱くなる。
もちろん、弱くなったアマテリンヌさえも他の龍なんて比べられないほど強い。
それが格の違いだということだ。
しかし、この地獄の軍団を相手に勝利を確信できるほどではない。
他の火山にその源泉を置いている他の龍がここに駆けつけることができない理由と同じだった。
「少なくとも…他の龍王がいたり······この物量に対応できるようなものがあったら…」
心の中で誰かを思い出すような彼女だった。
島の下の海が揺れた。
見たことのない高さの波が揺れ、暗くなった空から多数の雷が水面上に落ちた。
ドラゴンズネスト周辺部の海に海岸に接したすべての国家で「出港禁止令」が下された。
やがて渦が巻きついて··· 巨大な高さの波が起き、ドラゴンズネストの海岸が数百億年ぶりに海水を飲んだ。
そして波が再び元の位置に戻った後、姿を現したのは···
ネストテリオンも、アキルートも、そして他の竜人たちも怒りに身を任せたまま殺し、殺し、また殺した。
しかし、殺せば二つになり、踏めば吠えた液体から再び蘇る嫌悪感のある物量攻勢に少しずつ疲れていた。
その上、このようになると竜人の方からも死傷者が出始めた。
人間より強い肉体を持っていたとしても、武器が通じないわけではなかった。
厚くて丈夫な肌と火山龍王から受ける龍魔力が、彼らの永生と肉体の強さと速い再生を保障するだけだ。
それだけでも十分OPだったが、死んで、死んで、また死んで、ついに一発殴って死ぬ虫たち。 その3~5回に、いや300回500回のうち一度殴って死んだ後、二つに分かれて再び攻撃してきて、その300回、400回、500回のうち一度の攻撃が積もり続け、竜人の皮膚に傷をつけ、手足を切り、ついには命までも奪った。
火山龍王が戦闘に集中する状態では、遠くで戦っている竜人の命を世話することができなかった。
その上、地獄の軍団がまだ全員到着したわけではなかった。
疲れていった竜人の目の前に巨大な六形成魔法陣が展開され、巨大な奴らが体に鉄の塊をかけて現れ始めたのだった。
地獄では嫌悪な姿がすなわち戦闘力に該当するのか、小さな汚物が可愛く見えるほどのおぞましい姿だった。
巨大な鉄棒を持った肩の上に、他の人なら顔がついている位置に、元々はその顔の大きさのような体が生えていた。
その上、その小さな体の上にも同じ理屈で生まれた体がもう一つあり、「三層人塔」を成していた。
1階にあるメインの体は、人間の骸骨がいくつも絡むような形をした鉄の棒、あるいは名前の分からない怪物の頭がついた、本来のモチーフは、槌一法な武器のような多様な巨大でおぞましい武器を、2階にある小さな体は弓を持っていて、その上にある一番小さな体は何も持っていなかったのに、なぜか魔法を使いそうな気がした。
今、乗り物酔いに苦しんでいるシフルが嘔吐物を作っても、彼らよりは美しいものを作るだろう。
この凶物が飛び出して弓を射て武器を振り回し竜人を踏みつけ、魔法を落とすなど竜人が虫たちにしていたことをそのまましていた。
無敵ではなかった。 剣で切れば切られ、砲を撃てば胸が穴があいた。 再生をするわけでもなかった。
ただ、穴があいて切られた状態でただ歩いてきて、黙々とやっていたことを続けるだけだった。
「地獄」が何かを悟るようになった竜人が一つ一つ死んでいくその時、竜人の目の前に青い波が通り過ぎた。
その勢いで巨大な凶物と小さな汚物が流された。
急に意欲が燃え上がった。 心臓から今までとは違う色の炎が燃え上がった。
龍仁の傷が、四肢が再生して手の中から抜け出ていた剣をもう一度正した。
そして、いつものように、自分たちの後ろにいる方々と、今現れた方を思い浮かべながら、剣を振り回すのだった···
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