第4話 人間の帝国
くすんだ色の部屋の中のソファに白髪のお年寄りが座っていた。
するすると部屋のドアが開き、
「こんにちは、宮廷魔法使いヘロン卿」
という言葉と共に「貴族」という単語がぴったり合いそうな男が入ってきた。
「呼んでないけど」
「知り合った年数が三桁なのに···いつも相変わらずですね。」
ヘロンはため息をつくように笑った。
「そう、どうしたんだ。 校長先生」
その男、ルオンは有名なイスリオン王立魔法大学の校長を務めていた。
イスリオン王国が覇権から押し出されてから数百年が経った。
その昔の栄光はすでに忘れて久しいし、次第に自分たちの国が最初から都市三つの弱小国だったと考える者が生まれ始めた。
だが、覇権競争から押し出された国に未来がないわけではなかった。
王国はお互いを噛み合うためにお金をつぎ込む二つの巨人とは違い、
魔法技術をはじめとする学問の発展に投資することができた。
そしてその一環として建てられた場所の一つが、イスリオン王立魔法大学。
魔法を研究しようとする若者なら誰でも、経済的な負担を考えずに学問に集中することができた。
在学期間中に身分が隠蔽され、有名な魔法使いないしは魔導学者に成長すれば、平民であっても少なくとも下級貴族と比肩されるほどの地位を得ることができた。
特に、ルオンが校長を務めた100年余りの間、世界の多くの錚々たる学校を抜いて輝く研究結果を多数作り出すことができた。
「前のその最大の魔力源についてですが、」
「おお、何かわかったのか!」
その瞬間、ヘロンの老いた瞳が輝いた。
先日、北の高原から最大の馬力が放出されたというニュースが伝えられた。
しかし、すぐに消えた。
魔法に対する好奇心なら、まだ数百年前の子供のままだったヘロンは、老いてしまった肉体と宮廷魔法士の地位によって、自分がそこに直接行ったことがないのが残念だった。
「まだです。」
ヘロンの目がまた老けた。
「がっかりしないでください。 今度うちの学校から魔法使い団を送ることにしました。」
「君の学校の魔法使いなら幼い生徒ではないか。 最大の馬力源だって? きっと危険なものがあるはずだ。」
これはヘロンの慈悲からくる発言ではなかった。 むしろその反対。
そこに行って皆が死ぬことにでもなれば、誰が結果を知らせるのかという意味が込められたのだった。
「特別な人材を集めて送ります。 その魔力源は、しばらく観測されて消えたので、単純な異常現象である可能性が高いです。 将来の王国のために、人材にさまざまな経験をさせてあげたいです。」
実はその高原では強い魔力が放出されることが多かった。
最初はルオンも調査団を派遣したりしたが、大半は気象現象による一時的なものだった。
今回の魔力源が特に強く検出されたのは事実だが、その他の魔力源のようにすぐに消えて、ただ突風が強く吹いただろうと思うだけだった。
ただ、彼の長年の知人であり宮廷魔法士であるヘロンがあれほど気になっているので、彼をなだめるのを兼ねて一度調査団を派遣してみるようにしたのだった。
そのため、幼い学生たちに、高原に向かう途中にユーシリア帝国の姿も見せながら、様々な経験を積ませようとしたのだ。
強い国の発展した文明は、確かに見るだけでも意味がある。 井戸の中に閉じ込められて視野が狭くなった状態では発展を追求できない。 もっと大きな世界があることを見て、その後を追うことができれば、自分が閉じ込められたその古くて狭い井戸を壊してしまうことができるだろう。
「…逆に人材になる者たちを初期除去することかもしれないし。」
「そんなことしないでください。 信じられるボディーガードをつけてくれるでしょう。」
「ボディーガード。」
「お入りなさい。」
ルオンは入ってきたドアに向かって叫んだ。
よろいの音がした。
「木で造った家に 傷を 出そうと 来たんだね...」
ルオンはヘロンの長年の知り合いであるため,自分の家のようにこの家を頻繁に出入りしていた。
そして、自分勝手に人を呼ぶことも多かった。
それにしても、木で造った家に金属を纏った者たちをしきりに呼び寄せるのは、この家に対する破壊性向があるのだとヘロンは思った。
三桁の年を過ぎながら積もってきたヘロンの不満を後にしたまま、やがてドアが開き···
白い女戦士が入ってきた。 顔の口元を中心に、少し薄いピンク色の肌と唇を除けば、体全体を真っ白な鎧で包んでいた。
目さえも白地に、金色の十字架が描かれたバイザーを着用していた。
唇の周りの肌色がなかったら鎧が動き回っていると思うかもしれない彼女は···
「騎士レシリス·アルテミル。 雇い主にあいさつします。」
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ボルト族のテント。
「それで······急に連れて行ったって?」
ネミルが聞いた。
「竜人商人が妙な反応をした…」
ネバーが口の中で言葉を転がすと、皆が同じ結論に達した。
アイルは商人と解語直後から気付いていたが。
竜人の商人が交易品を投げ捨てながら連れて行った人外の少年。
「竜族…だったんだ。」
「送ってくれたのが幸いだったかな。」
竜人たちとは異なり、「龍の子孫」は名前だけが雄大で事実上人間と変わらない。
龍に帰属した存在でもなく、龍族を相手にするほどの力を持ったわけでもなかった。
どれだけ強い力を持った龍族かは分からない。
しかし、竜族の力の差とは、人間としては計り知れないものだった。
蟻としては、靴と核爆弾の威力の差に気づかないだろう。
ネミルでさえこの程度になると、部族がその子を抱いてくれるとは考えられなくなった。
ただ
「とにかく短かったけど縁があった存在だからただ幸せになることを願うしかない…」
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レストリア帝国の傭兵ギルド全てに公告が出た。 アペリウス山脈を通じてユーシリア帝国を攻撃するから、命を捨てて名誉と金を持って行けという意味の公告だった。
レストリア帝国はユーシリア帝国とともに西北大陸の勢力を二分する強国だった。二つの帝国はもともと一つから分かれた二つ、いや三つだった。
伝説的な暴君ルイ·フェルスの治下を経て暗くなったイスリオン帝国が彼の死後分裂期を迎える時、最も強かった二つの勢力が北側のユーシロン·デマで、南側のレストリー·レフェウスの反乱軍だった。
ルイ·ペルスの暴政で財政が揺れる状態で、同時に疑心病末期患者だった彼が人材を着実に粛清したせいで、虫たちだけが残った状態で二つを同時に相手にしなければならなかったイスリオン帝国は山と渓谷に囲まれた都市「リーフス」に入って凄絶な最後の抗戦を繰り広げた末に姫たちを捧げてやっと滅亡を免れることができ、同時に帝国の名称を放棄してイスリオン王国と改名した後、「主君への最後の礼儀」という名目の平和を維持することができた。
その後、ユーシロン·デマロとレストリー·レフェウスは皇帝を称してユーシリア帝国とレストリア帝国をそれぞれ開創し、いずれもルイ·ペルスに対する悪感情で反乱を起こした者たちであったため、平和協定を締結してしばらく仲良く過ごすことにした。
残念ながら、協定はそれほど長くは続かなかった。
ユーシリア帝国が北に進出して遊牧民勢力を制圧し、そこから随時出没する怪物軍団を相手にする過程で、
レストリア帝国が西と南にそれぞれ進出し、憎しみに満ちた毛むくじゃらの野蛮族、ビスティアンと魚怪物、魚人族を相手にする過程で、国力の強化に対する必要性を切実に悟るようになった。 講和に対する最も簡単な答えは、人間国家を攻撃すること。 人間の国家を攻撃して領土を獲得すれば、資源も軍事で徴発する人口も増えるからだ。 そして占領地を搾取して税金をおさめることができたから、色々と良いことだろう。
しかし、最初から両帝国が対決したわけではなかった。 人間の国家が二つの国だけではないし、何よりも最も簡単な獲物であり、かつての主君の国家であるイスリオン王国がある。
「主君に対する最後の礼儀」が次第に意味が色あせた頃であるレストリア帝国3代皇帝レシラが兄たちを抜いて即位した直後、その帝位に対する正当性を実力で証明するためにイスリオン王国に対する侵攻を開始した。
だが、当時のイスリオン王国は数百年前滅亡直前に追い込まれていたその頃とは違った。
既存の王家の命脈が絶たれた後、即位した最初の王レミダス·セルスが即位した後、強力な統治力を基に内政を安定させ、都市に入る入口である渓谷3ヵ所に要塞を建て、両帝国の侵攻に備えた。
しかし、イスリオン王国に対する帝国の視線は「それでも弱小国」。
ユーシリア帝国も侵攻を準備していたが、レストリア帝国が先手を打っただけだった。
レストリア帝国は大軍を起こしてイスリオン王国を攻撃した。 その地域を占領するだけでなく、占領した軍隊を直ちに駐留させ、ユーシリア帝国との戦争に備えた前進基地にするという野心に満ちた計画だったのだ。 だから長靴でありを刺して殺す気持ちで攻め入ったのだが···
イスリオン王国を最も暗い時期に最も強盛な敵を相手に守ってくれた谷は、もう一度王国を守ってくれた。 そこに以前にはなかった鉄翁のような要塞が建てられ、到底開けることができなかった。 消耗戦を繰り返した末、撤退する帝国軍を後尾から攻撃し、数多くの戦死者を出した。
一方、両国の戦争を見守っていたユーシリア帝国は「主君に対する最後の礼儀」を名分に、イスリオン王国侵攻のために準備しておいた軍隊を回し、レストリア帝国を攻撃した。
レストリア帝国は急いで南から軍隊を徴兵したが、ユーシリア軍の大規模騎兵を前面に押し出した暴風のような進撃に対応できず、レシラに皇位を奪われた王兄の一派が皇城の門を開けてくれた。
悠々と入城したユーシリア軍は「主君に対する最後の礼儀」を守るという名目でレシラを「反逆罪」で火刑に処した後、レシラの最初の兄であるレシロンを擁立した後、レストリア帝国が南側で徴兵した軍隊が到達する前に撤収した。
戦後の交渉で、ユーシリア帝国は、レストリア帝国の都市2つをイスリオン王国に与え、両帝国間の国境近くの都市7つを自国に割譲することを要求し、ユーシリア帝国によって擁立された皇帝はこれを受け入れるしかなかった。 また、イスリオン王国にも「保護」した対価として金貨と宝物を渡すことを要求し、消耗戦の後遺症から回復しようとしたイスリオン王国もまた別の帝国との戦争を行うことができず、その要求を受け入れた。
その後、他国によってカカシとして立てられ、振り回される皇帝に対する不満を持っていた貴族たちによってレシロンが暗殺された後、ユーシリアとレストリア両帝国はほぼ毎年絶え間ない戦争を行うことになったのだ。
そのような悠久な葛藤構造は今年も相変わらず続き、いつものように傭兵団を雇用するために公告を出したのだった。
「金貨50枚······死亡時、50枚追加···家族に伝える…」
レウグートが公告の内容をつぶやくと、傭兵団のもう一人の一員シフルが近づいてきた。
「君は初めて見るの?」
「そう。傭兵になって間もないので、あちこちを見て回って。」
レウグートは本来遊牧民出身、そのうち「龍の子孫」という名前の種族で構成された遊牧民の一員だった。
彼の部族で族長が急死した後、二人の息子が族長位をめぐって各自の勢力を率いて戦闘を行い、レウグートも長男の味方としてその戦闘に参加したが敗北し、長男は馬蹄に踏まれて処刑され、残りの部族民は処刑を免れる代わりに部族から追放されバラバラになった。
もともと屈強で遊牧民として騎馬術に恵まれていたレウグートは、盗賊行為をして傭兵団と戦い、十数人を殴り殺した後に捕まり、生まれつきの闘い手であるレウグートを殺したくなかった傭兵団長によって傭兵として活動することになったのだ。
「それで、参加するのかい?」
傭兵団という集団は、人生の底辺を生きる者たちが強力なリーダーシップによって動く武力集団であり、戦争などに個人の資格で参加することは自由だった。
ただし、この場合、公告に書かれた「死亡時に家族に伝達」という約束は守られず、金貨は傭兵団が持っていくことになるだろう。
公告は帝国が出すものだが、給料を分けるのは傭兵団の役割だからだ。
だからといって、個人の犠牲に背を向けるのではなく、金貨100枚が入ってくると、遺族たちにばらまきのように5枚ほど投げてあげるのだ。
この世界では金貨というもの自体が大きな価値を持つ物なので、5金貨程度なら相当な大金であることは事実だが、命を捨てて持ってくるお金にしては小銭に他ならない。
しかし、何とも訴えるところもなかった。 最初から傭兵活動をする時点で国家行政体系のにらまれるのが確定であり、国家権力に頼ることもできず、傭兵団に何か抗議すれば帰ってくるのは脅迫と蔑視だけだった。 傭兵団の立場では、自分の足で死にに行くことを防ぐ理由がなかったのだ。
「参加しない理由がないね。 俺は無知なので、けんか以外にできることは何もないのだから。」
「生きて帰ってくる者が珍しいって?」
攻撃するというアペリウス山脈を通る道は事実上ユーシリア帝国ではなく怪物と戦いに行くところだった。 聞いたこともない怪物たちが登山人たちを食べて強くなり、普通の強者でない以上生きて通ること自体が奇跡のところだった。
しかし、それだけに、ユーシリア帝国側の警戒もずさんなため、その道に愚かな傭兵たちを押し入れれば、平地を通じて攻撃する帝国の主力軍が到達するまで、時間を稼ぐには十分だろうというのが、レストリア帝国政府の考えだった。
これを傭兵たちも知らないはずがなかった。 この公告を通じて、行った者の中で生きてきた者が指で数えるほどだから。
それでどん底の中でも一番どん底の者だけが行く、「歩いて地獄の中へ」だった。
弱り目にたたり目で、そのような者だけが行くだけに戦闘が始まる前に傭兵同士が喧嘩をして山脈は見ることもできずに互いに戦って全滅し、残った者たちは逃げて行方不明になることも日常茶飯事だった。
そのため、シフルはこの乞食のような人間群像の中で最も人らしい性格を備えた若い友人の参戦を止めたいと思ったが、これに対してレウグートはただ笑うだけだった。 レウグートがまさにその「底の中の底」だったためだ。
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ヘピアストスルームの最下層、火山鍛冶屋。
多くの鍛冶屋が火山の高熱に耐えて作業をしていた。
ここのドラゴンズネストの金属は、その品質が非常に優れていた。
火山龍王の強力な魔力に長時間露出していた鉄を正しくした鉱物は、この惑星のあちこちから流れてくるありふれた金属とは比較にもならないほど高純度の魔力を含み、この金属で鍛えた鎧は特別な魔法を与えなくても、かなりの魔法攻撃を防ぐことができ、刀や槍は使用者の魔力闘士を助けてくれた。
何よりもこの金属で作られた物は貴族の目を幸せにするほど輝いた。
武具と贅沢品の材料として完璧なこれらの金属には致命的な短所があったが、裁練が難しかったのだ。
よほどの熱にも溶けないし、いくら叩いても広げられず、多くの鍛冶屋と数多くの職人がこの金属の裁練を試みたが、あきらめてしまった。
しかし、ここ、火山鍛冶屋では可能だった。
惑星で一番熱い火山から噴き出す熱気をそのまま使い、超越的な力を持つハーフドラゴン職人が簡単に叩くことができた。 そこに···何よりも火山龍王の加護と魔力が共にした。 ここで作られた数多くの金属材はドラゴンズネストの最も高価な贅沢品の一つであり、数多くの竜人鍛冶屋が火山龍王の贅沢と贅沢のためのお金のために毎日同じように金属を叩いた。
ここで叩くのは金銀と鉄だけではなかった。 最も重要な金属、クリシニウムがあった。
火山龍王に似た美しい真紅の光を放つこの魅惑的な金属は、ここ以外には惑星のどこにも出ない貴重なものだった。
「火山龍王のスカート」であるこの中央火山の下でのみ採取できる「隠密で大切なもの」だった。
そのため、寛大な火山龍王もこの金属の輸出だけは厳禁だった。
ただ自分だけが持つことができ、ひたすら自分の贅沢品のための材料として使用することを命令し、これはすべての竜人が当然と考えることだった。
いくら財貨を稼ぐためとはいえ、火山龍王の宝物を売るとは、誰もそのようなことは考えられなかった。
「クリシニウム?」
「はい、陛下。 世界中でここドラゴンズネストの中央火山でのみ発見される非常に貴重な金属です。」
エイヘリアはアマテリンヌの指輪を一つ持ってきた。
指輪から噴き出す美しい赤い光はアマテリンヌの贅沢を非難したアウグストゥスさえ魅了されるようなものだった。
指輪をつまんで魔力を流し込んだ。 指輪にひびが入った。 この地域で生産された鉄剣を破壊できる量の魔力だった。
そばで見ていたアマテリンヌの笑顔にもひびが入るようだったが、すぐに指輪にあったひびが消えた。
「再生性物質?」
驚くべきことだった。
アウグストゥスの考えでも、この金属の輸出統制は当然のものだった。
この金属はぜいたく品などに使えるものではなかった。
厳然たる戦略物資だったのだ。
「龍の子孫」遊牧民たちもやはり自分たちの秘密兵器龍馬を他の勢力に見せることを極度に敬遠した。
アウグストゥスにはこのクリシニウムがそれに相当するだろう。
再び火山鍛冶屋。
クリシニウムを使った剣を生産するようにという注文、いや勅令が下された。
これまで指輪やネックレスを作っていた金属だったが、剣と盾をそれぞれ一つずつ生産してみろという新しい皇帝の命が落ちたのだった。
ここの鍛冶屋はすべて竜人だった。 多少珍しい注文とはいえ、龍族皇帝の命令に疑問を持つ者などいなかった。
皇帝の命令を受けることができるという事実に感激し、幸せそうだった。
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地球の基準なら、20歳前後に見える男女が20人、そして純白の鎧を着た戦士が1人。 計21人が凶暴な動物に乗った男たちに囲まれていた。
純白の騎士、レシリス·アルテミルは剣を地面に突き刺し、防御陣を発動させたまま彼らと対峙した。
王立大学の学生服を着た若者たちは皆、イスリオン王立魔法大学の魔導学の学士だった。
雇い主から彼らを率いて「極大魔力院」の正体について調べて来いという依頼を受け、該当地域、ユーシリア帝国の北側草原に向かった。
間もなく戦争をするといううわさがあって、できるだけ急いだ。 他国間の戦争に巻き込まれることは避けたかった。
その高いスレイプニールを借りて乗った。
スレイプニールはもともと足が8本で、神々の王が乗るという伝説の動物だった。
しかし、目の前にある動物がその伝説的な存在ではなく、この世界の魔導学者たちが伝説を模倣するために魔法的改造を通じて作り出した一種のキメラに過ぎなかった。
伝説のスレイプニールの性能がどうかは分からないが、この「模造品スレイプニール」はかなり優秀な言葉だった。 一般的な群馬の2倍のスピードを出す怪物だった。
その代わり、飼料も2倍、いや2倍なら少ない方で、たくさん食べる奴らは3~4倍を食べるという。
このスレイプニールを所有するということは、まさに帝国のような強大な国家でなければ不可能なことであり、この言葉を貸して貸与料を受け取る事業が各地で興行する方だった。
売れっ子のスレイフニール大商人は皆都市で有名な金持ちであり、下位貴族級権力を持つという。
スレイプニールに乗ったレシリス一行がユーシリア帝国の国境都市デラメールを越えて草原に進入し、凶暴な馬に乗った男たちに囲まれたのだ。
「定住民がついにここに拡張を試みるのか!」
「違います!」
おびえた生徒たちが叫んだ。
「私たちは軍隊ではなく調査団です! 刀を下ろしてください!」
いくら魔導学を専攻し、魔法に対する知識が優秀な魔法使いの学生たちだが、彼らはその知識を戦闘に応用する方法を知らなかった。
彼らは魔法を研究しながら魔法の深淵を覗き見ようとする者たちであって、魔法を利用して戦う方法を学ぶ者たちではなかった。
いわば、砲弾を作ることができる者が、大砲の撃ち方は知らないようなものだった。
殺伐とした勢いで突進する戦闘の専門家たちに向き合えば、怖がるのが当然だったのだ。
「調査団?」
「はい。この前、この地域で大魔力が放出されたと聞いて、調査のために来たんです。」
それを聞いた遊牧民隊長、アイルは先日見た人外の少年を思い出した。
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「戦争?」
「はい。ユーシリア帝国、レストリア帝国、イスリオン王国などに出掛けた竜人の商人たちから便りが届いています。」
両国間の仲はすでに知っている。 大陸の中央にある巨大図書館のイシュタルから、この世界の政治、社会、歴史、文化に関する本を借りてくるよう命じた。
「主な攻撃路は、両帝国が出会う大平原、リーフロック市の国境要塞になるとみられるということです。」
「あいつらの戦闘をひそかに監視したいものだ。 方法はあるのか?」
アウグストゥスの問いに
「竜族や竜人が参加する戦闘なら、陛下が儀式をつなげて感覚を共有することができますが…」
エイヘリアは困ったように答えたが、アマテリンヌは誇らしげな表情を見せた。
「私たちの龍族の宝物、『竜の目』を使ってください。」
アマテリンヌは淡いピンク色の宝箱を一つ持ってきた。 そしてその中にあるものは···
目玉は文字通り目玉だった。 毛細血管が目立ち,やや気味が悪く見えた。
「この品物に魔力を流してください。」
アウグストゥスが彼女の言うとおりにしたその瞬間、自分の姿が見えた。
「なるほど。視野を共有するのだな。」
それだけでなく、思い通りに動くこともできたし、空間停止魔法「スペースロック(Space Lock)」を使うこともできた。
隠蔽機能だけでなく攻撃を回避し、あらゆる種類の物理的、魔法的作用を無効化する魔法だった。
自分で使うものだが、ずるい魔法だと思った。
ただし、強力な魔法であるだけに、魔力使用量も多いうえ、適用対象の大きさが大きいほど莫大な魔力を使うことになる。
「ところで、、、未開の奴らの戦いなど、多少退屈な見世物になりそうですが···」
ゆっくり 泣くとき アマテリンヌは 大胆な 笑顔を しながら、
「余興が必要でしたら、むしろ小女の体を楽しんでみてはいかがでしょうか?」
とんでもないことを言うのだった。
「、、、」
実際、興味がないわけではなかった。
龍族の特性なのか、ここで過ごす間に食欲、性欲をはじめとする様々な欲求が満ちてきた。
それに権力もある。 自分は法律の上に存在する政治指導者、君主である。
君主は君主であるだけで罪人だとフランス革命期の誰かが言ったという。
それならどうせ罪人なのに、法律を守る理由があるだろうか。
ただ、好きなようにできるからといって好きなようにしてもいいわけではなかった。
アマテリーヌがお金を無限に使うことができて無限に使った結果が、他の人々は地球の現代以上の高文明国家だが、ここだけ中世期を過ごすのだ。
権力を利用して思い通りにしては、結局現実によって思い通りにできる範囲が減ってしまう。
正直、絶対権力というものを初めて手に入れたせいで、どこまで勝手にやってもいいのか分からなかった。
自分を望む女性を思い通りにすることぐらいは···やってもいいのかな?
考えたりするが、ここでやってもいいことではなかった。
ここは玉座の部屋。 皇帝の神聖な権力を象徴する場所として残らなければならない。
対話はたった3人でしたというが、数多くの侍中がこの3人の呼びを待っており、剣をつけた龍仁が皇帝を護衛するために玉座付近で待機していた。
下のものに「皇帝が性欲に狂った奴」という認識を与えてはならない。 ここの玉座の部屋ではなおさらいけない。
「、、、」
そんなくだらない考えを後にして、アマテリンヌの質問に答えた。
「この世界の文明水準をもう少し知りたい。 文明水準を最も明確に推し量ることができるのは戦争だろう。」
遊牧民部落での戦闘を見た。
熱心に戦闘を行った者たちに申し訳ないが、それはおそらくこの世界で最も小さな規模の戦闘に属している。
しかし、帝国単位の国家が衝突する「戦争」は次元が違うと考えた。 その以前に、現代地球から来た者の視線では「攻城戦」という単語自体が低くなったのだった。
そのうえ、今戦おうとしている両国は、ここドラゴンズネストから最も近い海岸に面した国々だ。
彼らがする戦闘を見て、その力を測っておかないと、いつかその槍刀がこちらに向かう瞬間に困ることもありうる。
アマテリンヌをはじめ、ここの龍族と竜人たちは人間などを警戒するという事実自体を滑稽に思うかも知れないが、過去の人間であり人間の発展のために工学を勉強し、今も依然として人間の魂を持っている転世者アウグストゥスは人間の底力に気づいていた。
彼らは数万年の時間を弱者として過ごしながらも、結局はマンモスの皮を着て地球の最上位種族になった者たちだった。
今の世の中にいる人間たちもきっと自分たちの空の上に浮かんでいる「マンモス」たちを倒す夢を見ているはずだ。
圧倒的な強者の存在は強くならないと生存しにくい理由になるのだ。
今も竜人商団の横暴に耐える人間たちは、いつか必ず火山龍王を破って龍仁たちに復讐する日だけを待っているだろう。
「魂の種族には悪いけれど······俺はこの席を君たちに譲ってあげたい気持ちがないのを...」
独り言に首をかしげる二人の執政官を知らないふりをしたまま、玉座の安らぎを思う存分感じているアウグストゥスだった。
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