第33話 リベンジマッチ

 ロォエ・ンーホの上空にやって来た。


「おっ、あそこにいるぞ!」


 角巨人健全獣がガレキの中を歩いている。


「それじゃあ、リベンジマッチといくでげすぜ!」


「おっしゃぁっ! まずは俺ちゃんがやるぜぇっ!!」


 シンヴォルオースノが角巨人健全獣に向かって、弾丸のような速さで飛んで行った。


「ピィッ!?」


 シンヴォルオースノが角巨人健全獣の頭部を切断した。


 角巨人健全獣が消えた。



「……えっ? もしかして、倒したのか?」


「そうなんじゃないのめっきゅ」


「なんかあっけなかったねおみぃ」


「ああ、そうだな」


「これがあの本の力なんでげすかね?」


「そうなるんじゃないのもん?」


 不健全な本を見ただけで、こうも簡単に倒せるようになるとは……


 さすがはバカエロゲーだな。



 ロォエ・ンーホの中をひと回りした。


「もう健全獣はいないみたいねめっきゅ」


「そうだねもん」


「アニキ、これからどうするでげすか?」


「そうだなぁ。とりあえず、イセンジ・イテシに戻ろうか」


「そうだねおみぃ」


「じゃあ、出発するでげすぜ」


「待ってくださいきゅひゃ。何か来ましたよきゅひゃ」


「えっ?」


 白い人型の集団が、町に入って来た。


「また健全獣なのもん?」


「どうなんだろうねおみぃ?」


「健全獣ども、出て来やがれでぎゅぎゃぎゃっす!!」

「町と本のかたきでぎゅぎょっす! ぶっ殺してやるでぎゅぎょっす!!」


 白い人型の集団の方から、声が聞こえてきた。


「どうやらロォエ・ンーホの人たちみたいだねおみぃ」


「ああ、そのようだな」


「無事だったんだねもん」


「良かったですきゅひゃ」


「いままで、どこにいたのかしらめっきゅ?」


「まあ、とりあえず、声をかけてみようか」


「そうでげすね」



「ここにいた健全獣は、すべて我々が倒しましたよ」


「な、なんだとでぎゅぎゃぎゃっす!? あれだけいたヤツらを、すべてでぎゅぎゃぎゃっすか!?」


「し、信じられないでぎゅぎょっす!」


「実際、周りにいないでしょうめっきゅ?」


「叫んでも寄って来ないしねおみぃ」


「確かにでぎゅぎゃぎゃっす」


「あんたらは何者でぎゅぎょっすか?」


「ジハジハールマの教会から来た者です」


「えっ? あなた方がですでごびゃらっすか?」


「そうだよおみぃ。もしかして、手紙を書いた人なのおみぃ?」


「はい、そうですでごびゃらっす。私がメビルケルム・エレネカバですでごびゃらっす」


 俺たちも自己紹介をした。



「皆さん、どこにいたんですか?」


「ロォエ・ンーホの住民たちを途中で捕まえて、説得していましたでごびゃらっす」


「なるほど、そういうことだったんですか」


 飛んでいた俺たちは、それに気付かず追い抜いたのか。



「そういえば、なんでせっかく避難したのに、また戻ったのめっきゅ?」


「子供や老人を避難させたあとで、戦うつもりだっただけだでぎゅぎゃぎゃっす!」


「そういうことだったんでげすか」



「これで任務終了なんでげすかね?」


「帰っても良いのかなもん?」


「良いんじゃないのおみぃ? 帰ろうよおみぃ」


「ちょっと待つでぎゅぎゃぎゃっす!」


「何か用ですか?」


「助けてもらった以上、礼をしねぇとなでぎゅぎゃぎゃっす!」


「ああ、そうだなでぎゅぎょっす」


 律義な良い人たちだな。



「さて、何をしようでぎゅぎょっすか?」


「では、わしが最高の不健全本を描こうでふほんっす!」


 白い人が手を上げて、そう言った。


「あ、あんたは『グランド不健全本マスタースペシャル』でぎゅぎゃぎゃっす!」


 なんだそのすごそうな称号は!?


「それはなんなのですかきゅひゃ?」


「ペンネームでぎゅぎょっす」


「そうなんですか……」


 ただのペンネームなのかよ!?

 大げさな名前だな!


「もちろん、名前に負けない腕があるでぎゅぎょっすよ!」


「そうなんですか! なら、お願いしますよ!」



「待ちなさいでけほんじゃす! 不健全本は私が描きましょうでけほんじゃす!!」


「あ、あんたは『アルティメット不健全ダイナミック』でぎゅぎゃぎゃっす!」


「今度はなんですか!?」


「そういうペンネームの作家でぎゅぎょっす」


 またかよ!?


「腕の方はどうなのめっきゅ?」


「もちろん、名前に負けないでぎゅぎょっすよ!」


「そうなんですか」


 なら、どっちに描いてもらおうか?



「お待ちなさいでぜほんぎゃっす! わたくしも立候補しますでぜほんぎゃっすわ!!」


 また出た!?


「あんたは『ギャラクシー不健全プリンセス』でぎゅぎゃぎゃっすね!」


「あの人も、そういうペンネームなんですか?」


「そうでぎゅぎょっすよ! 当然、腕もあるでぎゅぎょっす!!」


「いっぱいいるんだねおみぃ」


「そういう町でぎゅぎょっすからね!」



「私も描きたいでふけふけほんぞ!」

「あたくしもですでもけふけほんよ!」

「あっしも描きたいでほんけふじゃっす!」

「僕も描いてみたいでけふほんぽっすな!」

「あーしも描きたいでほんほんけふっす!」


「な、なんと『ユニヴァース不健全マイスター』に『ディスティニーフォース不健全本』に『インフィニティスーパー不健全スーパーノヴァ本本』に『エターナル不健全ファンタズム』に『超ハイパー健全じゃなさすぎる本マスター』まででぎゅぎゃぎゃっすか!?」


「全部ペンネームなのもん?」


「そうでぎゅぎょっすよ! もちろん、みんな腕もあるでぎゅぎょっす!!」


「そ、そうですか……」


 立候補者、多すぎだろ!?


 誰に描いてもらえばいいんだよ!?

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