第32話 白い本

「それはもしかして、不健全な本なのか!?」


「その通りでげすぜ! あいつが捨てたものを、こっそり拾っておいたでげすぜ!」


「よくやったぞ、ウィンドウさだ!!! さっそく見てみよう!!」



 本を開いてみた。


 見た目は、真っ白だ。


 だが、見ているだけで、熱いものが伝わってくる気がする。


 むっ、俺の脳内に映像が浮かんで来たぞ。


 これは……


 この小麦色でテカテカしたものは……


 筋肉ムキムキのおっさんじゃないかぁぁぁぁぁっ!?


「ぎゃああああああああっ!? なんだこれは!? 俺用ではないぞ!?」


「そうなのめっきゅ? 私は不健全力が高まっているような気がするけどねめっきゅ」


「私もだよおみぃ」

「私もだよもん」

「私もですねきゅひゃ」

「我輩もでげすぜ」


「そうなのか!?」


 こいつら、そういう趣味だったのかよ!?



「アニキ、他の本もあるでげすぜ。こっちも見てみるでげすぜ」


「おおっ、そうだったのか! ありがとう、ウィンドウ貞!!」


 ウィンドウ貞から、白い本を受け取った。



 本を開いてみた。


 また真っ白だな。


 だが、これも見ていると、熱いものが伝わってくる気がする。


 これは……


 おおっ!

 金髪碧眼へきがん、スタイル抜群のドレス姿の美女が出て来たぞ!!!


 素晴らしすぎるっ!!!!!



 おっ、美女が試着室のような場所に入って行ったぞ。


 脱ぐのか!?

 その中でドレスを脱いで出て来てくれるのか!?



 美女が試着室のような場所から出て来た。


 なぜか力士の着ぐるみのようなものを着ている。


 ……えっ?


 ナニソレ?

 どういうこと?


 あっ、終わった。


「なんじゃそりゃぁっ!? いまのはなんだったんだよ!?」


 あまりにもマニアックすぎるぞ!?

 どこに需要があるんだよ!?

 訳が分からんぞ!?


「アニキ、いまのもダメだったんでげすか?」


「ああ、ダメだった!」


「そうでげすか」



「なら、次はこれを見てみるでげすぜ」


「まだあるのか!?」


 まあ、いい、見てみよう。


 ウィンドウ貞から、白い本を受け取り、開いてみた。


 またまた真っ白だな。


 だが、またまた熱いものが伝わってくるぞ。


 これは……


 広い草原だな。

 実に美しいところだな。


 ん?

 今度は森に切り替わった。

 森林浴に良さそうな良いところだな。

 ああ、癒される。


 おっ、今度は海だな。

 白い砂浜、青い海、実に良いところだな。


 今度は山頂みたいだな。

 かなり標高の高い山みたいだな。

 雄大な景色だ。

 素晴らしすぎる。


 今度は町だな。

 西洋風の町並みで、美しいな。

 人通りも結構あるな。


 おっ、夜になった。

 人がいなくなったぞ。

 ちょっと寂しい気もするけど、これこれで美しい光景だな。


 あっ、終わった。


「あれはなんだったんだ?」


「どうかしたのめっきゅ?」


「本を見たら、草原、森、海、山頂、昼と夜の町が頭に浮かんだんだ」


「そうなのめっきゅ」


「なんでそんなものがおみぃ? もしかして、それは不健全力を出すためのものじゃないのかなおみぃ?」


「そうかもしれないな」


 なら、この本はなんなのだろうか?


 よく分からないな。


 まあ、どうでもいいか。


「肝心の不健全力の方は出たのもん?」


「サッパリ出てないな」


「そうなのもん」



「なら、次はこの本を見てみるでげすぜ」


「まだあるのかよ……」


 本を開いてみた。


 今度は二足歩行をしているオオカミみたいな生物が出て来たぞ。


 二足歩行のネコやクマのような生物も出て来た。


 なんだこれは?


 もしかして、こういう動物系のキャラクターが好きな人用のものなのか?


「これも俺用じゃないな」


「そうでげすか」



「なら、今度はこれでげすぜ」


「ああ」


 本を開いた。


 なんだこれは?


 くびれのあるガラスのコップみたいなものが出て来たぞ。


 これが人間だったら、すごく良いスタイルなんだろうなぁ。


 なんか残念だな。


「どうやらこれも俺用ではないみたいだ」


「そうでげすか」



「なら、今度はこれにするでげすぜ」


「まだあるのかぁ」


 たくさん持って来たんだな。


 本を開いてみた。


 ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!?


 なんだこのスリングショット水着の小太りおっさんは!?


「こ、これもダメだ…… 俺用じゃない……」


「そうでげすか」



「なら、これをどうぞでげすぜ」


「ああ、ありがとう」


 本を開いてみた。


 おっ、また映像が浮かんで来たぞ。


 こ、これは!?


 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!


 美女、美少女だらけじゃないかっ!!

 しかも、さまざまなタイプがいるぞっ!!!


 これぞ、これぞまさしくエロバカ変態セクシーバカエロティック変態スケベギャグえろゲーム不健全版の世界だぁぁぁぁぁっ!!!!!


 素晴らしすぎるぞぉぉぉぉぉっ!!!!!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!! 親父ぃ! 力がみなぎってくるぜぇ!!」


「ああ、俺もだ!!」


 全身から力が噴き出してくるぞ!!


「エネルギーも満タンになったぜぇ! これならいけるぜぇ!!」


「みんなはどうだ!?」


「我輩もいけるでげすぜ!」

「私も良いわよめっきゅ!」

「私もだよおみぃ!」

「私もいけるよもん!」

「私もですよきゅひゃ!」


「よし、では、行くぞ!!」


「了解でげすぜ!」


 角巨人健全獣め、今度こそぶっ倒してやるぜっ!!!


 首を洗って待ってろよっ!!

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