第30話 まずは最寄りの町へ

 イセンジ・イテシにやって来た。


 白い城壁に囲まれた、結構大きい町だな。


 あの城壁にも、不健全なものが描かれているのだろうか?


 見てみたいなぁ。


 早く健全神を倒さなくては!!



 教会の前にやって来た。


 西洋の神殿みたいな建物だな。


 では、入ろうか。



 中に入った。


 礼拝堂みたいな場所だな。


「ごめんくださ~い」


 返事がないな。


「近くには誰もいないみたいでげすね」


「奥にいるのかな? 行ってみよう」



「アニキ、祭壇のところに我輩たち宛の手紙が置いてあるでげすぜ」


「えっ? どれ?」


 ああ、確かに『ジハジハールマから派遣された方へ』と書いてあるな。


「読んでみましょうめっきゅ」


「そうだな」



「ええと『血気盛んなロォエ・ンーホの方々が【健全獣けんぜんじゅうなんて、ぶっ殺してやらぁ!】と言って、ロォエ・ンーホに向かってしまいました。仕方ないので、私たちも向かうことにします。あなた方もなるべく早く来てください。イセンジ・イテシ支部、司祭メビルケルム・エレネカバ』だと!?」


 なんじゃそりゃぁっ!?


「その人たちって、ここに避難して来たんだよねおみぃ?」


「そうでしょうねめっきゅ。せっかく避難したというのに、何やってんのよめっきゅ」


「訳が分からないねもん」


「そうですねきゅひゃ」


 避難して、落ち着いたら、腹が立ってきたのだろうか?


 本当に訳の分からん行動だな。


 これもバカエロゲーのせいなのか?



「じゃあ、ロォエ・ンーホに行こうか」


「そうでげすね」


 イセンジ・イテシを出て、飛び立った。



 前方にガレキの山のようなものが見えてきた。


「あれがロォエ・ンーホなんでげすかね?」


「近くに山があるし、そうなんじゃないのめっきゅ?」


「壊されまくってるねおみぃ」


「あんな壊滅した町に、健全獣はとどまっているのかなもん?」


「もうどこかに行ってしまった可能性もありますねきゅひゃ」


「まあ、とりあえず、行ってみよう」


「そうでげすね」


「警戒を忘れないようにねめっきゅ」


「分かっているよ」



 ロォエ・ンーホの上空にやって来た。


 ここもかなり大きな町なんだな。


 町の中には、白いイノシシ、ウマ、カタツムリ、オオカミ、ゾウ、キリンのような獣がいる。


「うわぁ、大量にいるな」


「そうねめっきゅ」


「あれ? イセンジ・イテシの人たちはいないのもん?」


「それっぽい人は見えないな」


「まさかもうやられちゃったのおみぃ!?」


「その可能性もありますねきゅひゃ」


「アニキ、どうするでげすか?」


「とりあえず、健全獣どもを倒そう!」


「了解だぜぇ、親父ぃ! ここは俺ちゃんに任せておきなぁ!!」


「ああ、やれ、シンヴォルオースノ!」


「くらいやがれぇっ! カイテンショウぅっ!!!」


「「「ピィッ!?」」」


 回転している円盤状の黄色いノコギリのようなものが、地上にいる健全獣たちを切り裂いた。


 健全獣たちは消えた。


「このあたりにいたのは、全部倒したみたいだな」


「他の場所にも行ってみましょうめっきゅ」


「ああ、そうしよう」


「ピイイイィィィィイィィイイィィイイイィイィィイィィィッ!!!!!」


「どうやら移動する必要はなさそうでげすね」


「そうだねおみぃ。向こうからやって来てくれたねおみぃ」


「しかも、うじゃうじゃといるねもん」


「探す手間が省けて好都合だぜぇ! 親父ぃ、いくぜぇ!!」


「ああ、そうだな!」



「ピイイイイイィィィィィ……」


「いまので最後かな?」


「そのようでげすね」


「親父ぃ、エネルギー切れだぜぇ!」


「そうか。なら、戻ってくれ」


「分かったぜぇ」


 シンヴォルオースノが定位置に戻った。



「アニキ、これからどうするでげすか?」


「イセンジ・イテシに戻るおみぃ?」


「それは早計じゃないめっきゅ? まだ倒してない健全獣がいるかもしれないわよめっきゅ」


「確かにそうだな。では、町をひと回りしてみようか」


「了解でげすぜ」



「あそこに誰かいますよきゅひゃ」


 遠くにあるガレキの上に、白い人がいる。


「なんだあの人は? あんなところで何をやっているんだ?」 


「行ってみようでげすぜ」


「ああ、そうだな」



 白い人に近付いた。


 どうやらガレキの上に座っているようだ。


「あれ? なんかあの人、デカくないか?」


 座高が二メートルくらいあるように見える。


「うん、すごく大柄だねおみぃ」


「あんな大きな人、見たことないわよめっきゅ」


「あれは人間なのかなもん?」


「どうなんだろう? とりあえず、話しかけてみるか」


「戦闘準備はしておきましょうめっきゅ」


「そうでげすね」



「すみません、そこで何をやっているのですか?」


「ん? 不健全生物ピィ?」


 大柄の白い人が振り返って、そう言った。


 えっ!?

 あの人、額に長さ三〇センチくらいの、モノクロのモザイクがかかった角があるぞ!?


「な、なんですか、その角は!?」


「それに不健全生物って、なんでげすか!?」


「何かと言われても角は角だピィ。不健全生物というのは、不健全力を出している生物のことだピィ」


「あなた、もしかして、健全獣なのめっきゅ!?」


「不健全生物どもは、そう呼んでいるみたいだなピィ」


 ええっ!?

 対話できる健全獣だと!?


 そんなのいるのかよ!?

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