第29話 重要拠点奪還任務

 それからほぼ毎日、不健全瞑想めいそう、不健全なことを考えながらのランニング、不健全なことを考えながらの戦闘訓練をやりまくった。



 三年後。


「ヴェーケスード君たちは、ずいぶん強くなったようでごじゃじゃっすね」


「そうなんですかね?」


 不健全なことを素早く思い浮かべることができるようにはなったが、そこまで強くなったのだろうか?


「強くなったでごっすっすわよ。教団でも上位に入るかもしれない気がするくらいでごっすっすよ」


「そうなんですか」


 入るのか入らないのか、ハッキリしないなぁ。



「そんなヴェーケスード君たちに、ちょっと頼みたいことがあるのでごじゃじゃっすよ」


「なんですか?」


「実は重要な拠点が、ケンゼンジュウに攻め落とされちゃって困っているのでごじゃじゃっすよ。そこを奪還して欲しいのでごじゃじゃっすよ」


「重要な拠点でごっすっすか? どこなんでごっすっすか?」


「『ロォエ・ンーホ』でごじゃじゃっすよ」


「ええっ!? ロォエ・ンーホがでごっすっすか!? 本当なんですでごっすっすか!?」


「本当でごじゃじゃっすよ」


「そ、そんなでごっすっす……」


 カーセフユさんが、ひどく落胆しているようだ。


 白いせいで、表情は見えないけどな。


「そこって、そんなに重要な拠点なんですか!?」


「ええ、超重要でごじゃじゃっすよ。ここがなかったら、私たちはケンゼンジュウに負けていたでしょうでごじゃじゃっす」


「ええ、間違いないでごっすっすね」


 そこまで重要なのかよ!?



「いったいどんなところなのめっきゅ!?」


「そこは不健全な本を作っているところなのでごじゃじゃっすよ」


 不健全な本!?

 それってエロ本のことだよな!?


「なんでそんな場所が重要拠点になるのめっきゅ?」


「不健全な本があれば、みんなの不健全力が高まるのでごじゃじゃっすよ」


 さすがはバカエロゲーだな!!



「そんなの作っても読めないんじゃないでげすか?」


 確かにそうだな。

 白くなるだけだろう。


「分かってないでごっすっすね」


「どういうことなのおみぃ?」


「たとえ読めなくても、それが不健全な本であるという妄想だけで、不健全力を高められるのでごっすっすよっ!!!!!」


 なるほど!

 素晴らしいな!!



「そんなの白紙の本を、不健全な本だと言って渡しておけば良いんじゃないのおみぃ?」


「そういうウソは、なぜか見抜かれるのでごじゃじゃっすよ」


「ああ、すぐに分かるでごっすっすよ」


「そうなのもん」


 さすがはバカエロゲー世界の住人たちだな!!



「白くなるのに、どうやって作るのめっきゅ?」


「そこは職人の技で、どうにかするのでごじゃじゃっすよ」


「そうなんですかきゅひゃ」


 どうやっているのだろう?


 興味深いな!

 作っているところを見てみたいものだな!



「本を作るだけなら、どこでもできるんじゃないでげすか?」


「ロォエ・ンーホは、良い紙が作れる木の産地でもあるのでごじゃじゃっすよ」


「その木の紙じゃないとダメだと、職人たちが言っているらしいでごっすっすよ」


「そういうことなんでげすか」


 何が違うのだろうか?


 まあ、そんなのどうでもいいか。



「というわけで、引き受けてくれないでごじゃじゃっす?」


「良いですよ!」


「いや、ちょっと待つでごっすっすよ! いきなりそんな重要任務を与えるのは、早いのではでごっすっす! 他の方はいないんですでごっすっすか!?」


「最近ケンゼンジュウたちの攻勢が強くなってきていて、どこも余裕がないのでごじゃじゃっすよ。ヴェーケスード君ほどの人材を遊ばせておくことはできないでごじゃじゃっすわ」


「なら、せめて私も一緒にでごっすっす!」


「あなたは他の者たちの指導と、ここの防衛があるでしょうでごじゃじゃっす」


「確かにそうですけどでごっすっす……」


「大丈夫でごじゃじゃっすよ。『イセンジ・イテシ』からも人員を派遣するらしいからでごじゃじゃっす」


「イセンジ・イテシ? なんですか、それは?」


「ロォエ・ンーホの近くにある町でごじゃじゃっすよ」


「そういうことなら問題ないでごっすっす」


「では、決定でごじゃじゃっすね」


「はい、必ず奪還して来ますよ!!」


「期待しているでごじゃじゃっすわ」


「みんなのために、がんばってくれでごっすっすよ!」



「まずはイセンジ・イテシの教会に向かってでごじゃじゃっすね」


「それはどこにあるんでげすか?」


「地図を用意するでごじゃじゃっすわ。ちょっと待っててでごじゃじゃっすね」



 イミエマーウがテーブルに地図を広げた。


「ここがイセンジ・イテシで、ここがロォエ・ンーホ、ここがいまいる『ジハジハールマ』でごじゃじゃっすよ」


 この町って、そんな名前だったのか。


「ロォエ・ンーホの近くには山があるんだねおみぃ。そこが木の産地なのおみぃ?」


「ええ、そうでごじゃじゃっすよ」



「地図を見せられても、方向が分からないでげすぜ」


「方位磁石も用意するでごじゃじゃっすわ」


「ありがとうございます」



 支度を済ませた。


「よし、行くか!」


「了解でげすぜ!」


「気を付けてでごっすっすよ!」


「はい! では、行って来ます!」


 ウィンドウさだに乗って、飛び立った。

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