第23話 期待に応えてくれる孝行息子?

 上空に、金色を基調としたデザインの両刃の剣が浮いていた。


 つばの両端に金の球体が付いている。


 なんかアニメやゲームに出て来る聖剣みたいだな。

 なかなかカッコイイぞ。


「ふはーっはははははははははははははははははははははははははぁっ!!!!! 俺ちゃん誕生だぜぇっ!!!!!」


 突然、剣の方から声が聞こえてきた。


「剣がしゃべったでげすぜ!?」

「なんで剣がしゃべるのよめっきゅ!?」

「訳が分からないよおみぃ!?」

「まったくだねもん!」

「そうですねきゅひゃ!」


 ウィンドウに、魔導木簡もっかんに、魔導トイレットペーパーに、魔導ハリセンに、ピンクの草が何を言っているんだ!?


 それはギャグなのか!?



「なんなんだ、お前は!?」


「何言ってんだぜぇ、親父ぃ? 俺ちゃんだぜぇ、俺ちゃん!!」


「お、親父!? 俺に子供はいないぞ!?」


「股のところにいただろぉ!?」


「えっ!? ええええええええええっ!? それだったのか!?」


「そうだぜぇ!」


 はっ!?

 いま、股の息子さんはどうなっているんだ!?


 な、何ぃぃぃぃぃっ!?

 いなくなっているだとっ!?


 なら、あいつは本当に俺の息子さんなのか!?


「親父の期待に応えて、活躍しまくってやるぜぇっ!」


「えっ? いきなり何言ってんだ?」


「前に活躍を期待すると思っただろぉ!?」


「ああ、そういえば、思ったことがあるな。ところで、活躍って、何をするつもりなんだ?」


「ケンゼンジュウとかいうのを倒しまくってやるぜぇっ!!」


「違うっ!? そうじゃないっ!?」


 女性相手に活躍してくれよっ!?



「そういえば、名乗ってなかったぜぇ! 俺ちゃんは『シンヴォルオースノ』だぜぇ!」


 シンボル雄ノ?

 雄のシンボル?


「よろしくだぜぇ!」


「ああ、よろしくな」


 俺たちも自己紹介をした。



「シンヴォルオースノ、お前、元に戻れるんだよな!?」


「戻れるぜぇ!」


「ちょっとやってみてくれっ!!!!!」


「分かったぜぇ!」


 シンヴォルオースノが金色の光の球体になった。


 そして、俺の股のところに来た。


「戻ったぜぇ!」


「おおおおおっ!!! 本当にあるぞ! 良かった!!」


 これなら世界を不健全にしても、なんの問題もないな!!



 シンヴォルオースノが、また剣になった。


「あれ? いつの間にか、圧迫感みたいなものが消えているよおみぃ」


「確かに、そうねめっきゅ」


「それに、体のモザイクが所々消えていますよきゅひゃ」


「なんでだろうもん?」


「シンヴォルオースノのおかげなんでげすか?」


「そこはよく分からねぇぜぇ!」


「そうなのか」


 まあ、多分こいつのせいではあるんだろうな。



「ん? 日が暮れてきたな」


「そうねめっきゅ」


「ここにも夕方があるんですねきゅひゃ」


「仕方ない、今日はどこかで野宿するか」


「そうだねおみぃ」



 次の日。


「おはよう」


「おはようございますきゅひゃ」

「おはようだぜぇ、親父ぃ!」


「あいつ、まだ詰まってるな」


「そうねめっきゅ」


「アニキ、今日はどうするでげすか?」


「今日も周辺探索をするか」


「了解でげすぜ」


 支度を済ませ、ウィンドウさだに乗って、飛び立った。



「また廃墟みたいなところがあるよおみぃ」


「本当だねもん」


「アニキ、どうするでげすか?」


「ちょっと寄ってみるか」


「了解でげすぜ」



 地上に下りた。


「アニキ、ここには何かないでげすか?」


「ここには何も感じないな」


「そうなのめっきゅ」


「まあ、とりあえず、探索してみようよおみぃ」


「そうですねきゅひゃ」



 ガレキの陰から、体高一メートルくらいの茶色いモザイクが出て来た。


「ピイイイィィイイィィィイィィィィィイイイィィィッ!!!!!」


 モザイクが俺たちに向かって鳴いた。


「これは襲ってきそうだな!」


「ええ、そうねめっきゅ!」


「親父ぃ、あいつは俺ちゃんがやるぜぇ!!」


「そうか? なら、頼むぞ!」


「任せておきなぁ!! くらいやがれぇ、ゲキリュウショウぅっ!!!」


 シンヴォルオースノの刀身の先端から、黄色い水が噴き出した。


 ゲキリュウショウ?

 黄色い水が出る魔法なのか?


 ん?

 あいつは息子さんで、黄色い水が出ているから……


 まさかあれはアレなのか!?


 ゲキリュウショウのショウは、そういう意味なのか!?



「ピイィイィィイィィッ!?」


 ゲキリュウショウがモザイクを押し流した。


「とどめだぜぇっ!!」


 シンヴォルオースノが矢のように飛んで行き、モザイクに突き刺さった。


「ピイイイイイィィィィィ……」


 モザイクが消えた。



「どうやら倒したみたいねめっきゅ」


「そうみたいですねきゅひゃ」


「なんで消えたんだ?」


「そこはよく分からないねおみぃ」



「どうだぁ、親父ぃ! 俺ちゃんの実力はぁ!?」


「あ、ああ、すごかったよ」


「そうだろぉ! 期待以上の活躍だったろぉ!!」


「ああ、そうだな」


 実戦に関しては、全然期待してなかったからな。



「シンヴォルオースノ、あの水はなんなんだ?」


「あれは『聖水魔法』だぜぇ!」


 聖水魔法!?


「それはどんな魔法なんだ?」


「見ての通り、水を操るんだぜぇ! 攻撃、防御、回復ができるぜぇ!!」


「そうなのか。すごい魔法だな」


「そうだろぉ!」



「みんな、これを見ておみぃ!」


 ケーエがそう言って、白い半透明の石を差し出してきた。


「それは不石か?」


「いままでで一番大きいですねきゅひゃ」


「そうだな」


 白いカタツムリよりも、ひと回りくらい大きい。


「そうがどうしたんでげすか?」


「さっきのモザイクが消えたところに落ちていたんだよおみぃ」


「えっ? じゃあ、あいつもケンゼンジュウなのか?」


「そうなるんじゃないのめっきゅ?」


 モザイクのケンゼンジュウもいるのかぁ。


 白いのと何が違うのだろう?


 まあ、いいか。

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