第10話 とエモン

「それで、これからどうするのおみぃ?」


「強くなって、ミステリアスホワイトライト教のアジトに乗り込むぞ!」


「分かったよおみぃ」


「アニキはその前に、腹ごしらえをすべきでげすぜ」


「ああ、そうだな」


「人間は大変だねおみぃ」


「まったくだな。では、食べ物を探しに行こうか」



「おっ、昨日の木の実が、ここにもなってるでげすぜ」


「仕方ない、あれを食うか」


 黄色いアワビの中身のような実を焼いて食べた。



「みんな、あそこの岩に、何か刺さってるよおみぃ」


「えっ?」


 上部が黒、下部が白の板状の何かが岩に刺さっていた。


 なんだあれは?


 ゲームなどに出て来る伝説の剣っぽく見えなくもないな。


「どうするでげすか、アニキ?」


「とりあえず、調べてみようか」


「そうねめっきゅ」



 板状のものに近付き、指で突いてみた。


 厚紙みたいな感触だな。


「ピィィイィィィイイィィイィィイィィィイィィイィィイィィッ!!!!」


 いきなり板状のものが、鳴きながら宙に浮いた。


「な、なんだこいつは!?」


「こいつも襲ってくるのおみぃ!?」


「その可能性はあるわねめっきゅ!」


「アニキ、離れるでげすぜ!」


「ああ!」



「ピーッ! ピーピーッ! ピーッ! ピーピーピーッ! ピーピーッ!!」


「襲ってこないな」


「なら、あれは単にピーと鳴いてるだけなのおみぃ?」


「そうかもしれないわねめっきゅ」


「不健全なことを言っているのかもしれないぞ」


「その可能性もあるでげすね」



「ちょっと君たち、なんで質問に答えないのもん?」


 板状のものが、そう言った。


「あっ、普通にしゃべり出したおみぃ」


「なら、さっきまでは不健全な発言をしていたのか?」


「どうなんでげすかね?」


「不健全な発言もん? どういうことなのもん?」


「不健全な発言をすると、ピーという音になるんだよ」


「気付かなかったのめっきゅ?」


「そんなことには、なってなかったよもん」


「自分の発言はピー音にならないのか?」


「そうみたいでげすね」


「なんか妙なことになっているんだねもん」


「そうでげすね」



「仕方ない、もう一度言うもん」


「ああ、頼むよ」


「不健全にならないようにねめっきゅ」


「分かったよもん。ええと、君たちは『とエモン』に興味ありそうだねもん」


「とエモン? なんだそれは?」


「ピーピーピー、ピーピーピーピーピー、ピーピーピーピーピーピー」


「またピーになってるぞ!」


「えっ、またなのもん?」


「ああ、いまの発言は全部なってたぞ」


「じゃあ、また言い直すよもん。面倒だなぁもん」


「まったくねめっきゅ」


「ええと、とエモンというのは、とてつもなく不健全なモンスターみたいな感じなんだよもん。いまのはピーになってたもん?」


「いいえ、普通に聞こえたわよめっきゅ」


「それは良かったもん」



「とてつもなく不健全なモンスター!? 興味深いぞ! そいつが世界のどこかにいて、捕まえてペットにすることができるってことか!?」


「いいや、違うよもん。そんなのいないからねもん」


「えっ? いないの?」


「うん、いないよもん」


「なら、どうしろと言うんだよ?」


「『とエモンエボエヴォリューションション』という魔法で作り出すんだよもん!」


「その魔法、どうすれば使えるようになるんだっ!?」


「私が教えてあげるよもん」


「なら、教えてくれっ!!」


「分かったよもん。他のみんなはどうするもん?」


「せっかくだから、教えてもらうでげすぜ」

「じゃあ、私もそうするわめっきゅ」

「なら、私もおみぃ」


「分かったよもん」



「それじゃあ、いくよもん!!」


 突然、板状のものが開いた。


 あいつ、ハリセンだったのかよ!?


「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、くらいやがれもんっ!!!!!」


「「「「あああああああああああああああああっ!!!」」」」


 俺たちはハリセンにぶったたかれた。



「なんで叩くんだよ!?」


「こうすると、魔法を使えるようになるんだよもん」


 またそれかよ!?


「なんでそんなので使えるようになるのよめっきゅ!?」


「訳が分からないよおみぃっ!!」


 お前らが言うなっての!?


「そんなの知らないよもん! なぜかこうなんだよもん!!」


「そうなんでげすか」



「さあ、とエモンを作ってみよう!」


「どうすれば良いんでげすか?」


「じゃあ、まずは私がお手本を見せるねもん」


 ハリセンから、白いビームが出て来た。


 そのビームが地面に生えていた短い草に命中した。


 その後、草は白い光の球体に包まれた。


「いまのが『とエモンエボエヴォリューションション』なのか?」


「そうだよもん」


「このあと、どうなるんでげすか?」


「光に包まれた草が進化して、とエモンになるんだよもん」


「進化!? そんなことができる魔法なのか!?」


「そうだよもん」


 とんでもないな!?



「ピイィィィイィィイィィイイィィィィイィィィィイィィィッ!!!!!」


 突然、白い光の球体から声が聞こえてきた。


「えっ、進化中のとエモンが鳴いたのもん? こんなこと初めてだよもん」


「アニキ、なんか嫌な予感がするでげすぜ」


「ああ、俺もだ」


「これってやっぱりアレなのかなおみぃ?」


「その可能性が高そうだな」


「じゃあ、戦闘準備をしておきましょうかめっきゅ」


「ああ、その方が良さそうだな」

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