第9話 従業員を出す?

「それじゃあ、さっそく特殊能力を使ってみようおみぃ。まずはお手本を見せるねおみぃ」


 ケーエがそう言った直後、ケーエの側にウェイターのような格好をした中肉中背の渋いおじさんが現れた。


「な、なんだその人は!?」


「いきなり現れたでげすぜ!?」


「この人は『従業員を出す能力』で出した従業員だよおみぃ」


「ええっ!? そんなことができるのかよ!?」


「すごすぎるでげすぜ!」


「そうでしょうおみぃ! あとは、この従業員に働かせて、能力の使用者はのんびりしていれば良いんだよおみぃ!」


「すごい能力だけど、使い手はひどいな!」

「まったくでげすぜ!」


「これならダンジョンの守護者もやれるかもしれないわめっきゅ!」


「もっとひどいこと言ってる!」

「ひどすぎでげすぜ!」



「なんでこんなすごい能力を使えるようにしてくれたんだ?」


「特殊能力を伝えるのが、魔導トイレットペーパーの使命だからおみぃ」


「そういうものなのか」


「なんでそんな使命があるのに、こんな人気のないところにいるんでげすか?」


「えっ、うーん、特に理由はないよおみぃ。なんとなくかなおみぃ」


「私もなんとなくあの洞窟にいたのよめっきゅ」


「そうでげすか」


 ゲームでそう設定されているからなのだろうか?



「ピイィィイィィイイィィイィィイイィィィィイィィィィィッ!!!!!」


 突然、従業員のおじさんが叫び出した。


 そして、体が白一色になった。


「ケーエ、あれはどういうことだ!?」


「分からないおみぃ! あんなの見たことないおみぃ!」


「なら、あれはメイキュの時と同じなのか!?」


「ということは、襲ってくるかもしれないでげすぜ!」


「えっ!? そうなのおみぃ!?」


「そうよめっきゅ!」


「なら、すぐに消すおみぃ!」


 そんなこともできるのか。


「……えっ、消えないおみぃ!?」


「なんでだよ!?」


「分からないおみぃ!」


「なら、倒すしかないわねめっきゅ! ケーエは戦えるのめっきゅ!?」


「私は経営者だよおみぃ! 戦いなんて無理だよおみぃ!」


「なら、下がってなさいめっきゅ!」


「分かったよおみぃ! 小屋から出てるよおみぃ!」


「ここは狭すぎるでげすぜ! 我輩たちも出るでげすぜ!!」


「そうだな!」


 俺たちは小屋の外に出た。



「ピィィイィィイィィィイィィイィィッ!!!!!」


 従業員のおじさんが叫びながら小屋から出て来た。


「ピィッ!?」


 そして、盛大に転んだ。


「やったわめっきゅ!」


 入り口の近くにいたメイキュが、出て来たおじさんの足を、穴を掘る魔法の腕で引っかけたのだ。


「隙ありでげすぜ!!」


 ウィンドウさだが穴を掘る魔法のつるはしで、従業員のおじさんの腹部を攻撃した。


「ピイイイイイィィィィィィィィィィ……」


 従業員のおじさんは、跡形もなく消えてなくなった。



「お見事、メイキュ、ウィンドウ貞!」


「このくらいどうってことないわよめっきゅ! あいつ、あんまり強くなかったしねめっきゅ!!」


「そうでげすね」


「あいつは戦闘用じゃないからねおみぃ」



「なんで従業員は暴走したのおみぃ? ヴェーケスードたちは何か知っているのおみぃ?」


「いや、原因は分かってないでげすぜ」


「私が従業員を出す能力と似たような魔法を使ったら、同じように暴走したのよめっきゅ」


「そうだったんだおみぃ。なら、原因を調べて解消しないと、お店を経営できないねおみぃ」


「私たちも、それを調べているのよめっきゅ」


「なら、手を組まないおみぃ? 人手はあった方が良いでしょおみぃ?」


 ケーエに手はないし、人でもないと思うけど、確かにその通りだな。


「よし、では、手を組もう!」


「分かったよおみぃ。よろしくねおみぃ」


「ああ、よろしくな!」



「それで、調査はどのくらい進んでいるのおみぃ?」


「ミステリアスホワイトライト教という集団が怪しいってことくらいしか分かってないわよめっきゅ」


「まったく調査は進んでないとも言えるでげすぜ」


「そうなんだおみぃ」



「ところで、ケーエ、他の特殊能力はないのか?」


「ないよおみぃ」


「そうなのか」


「少ないでげすね」


「ゼイタクだなぁおみぃ。従業員を出す能力だけで十分でしょおみぃ」


 まあ、確かにそうかもしれないな。

 そんな能力がなくても、経営している人は大勢いるだろうし。



「我輩たちと一緒に来るなら、ケーエにもメイキュの魔法を教えた方が良いんじゃないでげすか?」


「そうだな。戦うことになるかもしれないしな」


「えっ、そうなのおみぃ!?」


「そうよめっきゅ。というわけで、そこでじっとしててねめっきゅ」


「なんでおみぃ?」


「あなたと同じ理由よめっきゅ!」


 メイキュがケーエをぶったたいた。


「痛いおみぃっ!? なんで叩くのおみぃっ!?」


「あなたと同じ理由だって、言ったでしょめっきゅ!」


「ああ、メイキュも叩いて覚えさせるんだおみぃ」


「そういうことよめっきゅ」



「それで、どんなことができるようになったのおみぃ?」


 ケーエにメイキュの魔法を説明した。


 そのあと、魔法を使ってもらった。


 ダンジョンの守護者を出す魔法以外は、問題なく使えるようだ。


 これでまた戦力がアップするな!


 待ってろよ、ミステリアスホワイトライト教!


 必ずぶっ倒して、世界を不健全にしてやるからな!!

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