第5話 ダンジョンを造る?

「どう、驚いためっきゅ? すごいでしょめっきゅ?」


「驚きはしたが、意味が分からないぞ! 魔導木簡まどうもっかんと迷宮一丁って、なんなんだ!?」


「迷宮一丁じゃなくて『メイキュ・ウイッチョー』めっきゅ! そして、それは私の名前よめっきゅ! メイキュと呼んで良いわよめっきゅ!!」


「名前だったのかよ。なら、俺たちも名乗っておくのが礼儀だな」


「そうでげすね」


 俺たちも自己紹介をした。



魔導木簡まどうもっかんというのは、なんなんだ?」


「魔法が書かれた木の札のことよめっきゅ!」


 魔法があるのか。

 さすがはバカエロゲーの世界だな。


 それと、紙があるのに、なんでわざわざ木の札に書くんだ?


 まあ、そこはどうでもいいか。

 バカエロゲーだしな。



「魔法って、どんなことができるんだ?」


「ダンジョンを造れるのよめっきゅ!」


「ダンジョンって、なんでげすか?」


「迷路があったり、襲ってくる怪物がいたり、宝があったり、わながあったりする場所よめっきゅ!」


「なんでそんなの造るんでげすか?」


「そこは、人それぞれよめっきゅ」


「メイキュに目的はないのか?」


「ないわよめっきゅ」


「そうなのか」



「アニキ、その魔法は使えるかもしれないでげすよ」


「そうだな。メイキュ、その魔法、俺たちも使えるようになるのか?」


「やってみないと分からないわめっきゅ」


「じゃあ、やり方を教えてくれないか?」


「良いわよめっきゅ」


「知り合って間もない我輩たちに教えて良いのでげすか?」


「構わないわよめっきゅ。魔法を伝えるための魔導木簡まどうもっかんなんだしねめっきゅ」


 正しく使ってくれるか審査するわけではないのか。



「それじゃあ、やるわよめっきゅ。ヴェーケスードは立って、後ろを向いてねめっきゅ」


「えっ? なんでだ?」


「その方が良いからよめっきゅ」


「分かったよ」


 言う通りにした。



「では、いくわよめっきゅ!」


「痛っ!?」


 突然、尻をぶったたかれた。


「痛いでげすぜ!? 何をするでげすぜ!?」


「私の魔法を教えるには、教える相手を私自身でたたかなければならないのめっきゅ」


「なんでそんな訳の分からないことになっているんだよ!?」


「そんなの知らないわよめっきゅ! なんかそういうものなのよめっきゅ!!」


「そ、そうなのか……」


 意味が分からないなぁ。


 これもバカエロゲーだからなのだろうか?



「それじゃあ、まずはお手本を見せるわねめっきゅ」


 メイキュから、青い半透明で筋肉ムキムキの人間の手が生えた。


 なぜか青い半透明のつるはしのようなものを持っている。


「なんだそれは!? どんな魔法なんだ!?」


「これは穴を掘る魔法よめっきゅ。この手と道具を使って掘るのめっきゅ」


「ええ~、魔法ではあるんだろうけど、魔法って感じがしないな」


「そうでげすね。自動的に掘ってくれるようなのはないんでげすか?」


「ないわよめっきゅ! ゼイタク言わないのめっきゅ!!」



「はい、それじゃあ、実践してみましょうめっきゅ。あっ、その前に、ひとつ注意事項があったわめっきゅ。このあたりを掘っちゃダメよめっきゅ」


「なんでだ?」


「適当に掘ったら、落盤事故などが起きるかもしれないからよめっきゅ」


「ええ~、そこをどうにかする魔法はないのか?」


「あるわよめっきゅ。それもあとで教えるから、まずは穴を掘る魔法を使ってみてめっきゅ」


「どうやって使うんでげすか?」


「私が出しているものを、出したいと思えば出て来るはずよめっきゅ」


「そんなんで良いのか!?」


「良いのよめっきゅ。さあ、やってみてめっきゅ」


「あ、ああ、分かったよ」


 メイキュのような腕よ、出て来い!

 と思ってみた。


 すると、俺の両肩あたりから、メイキュと同じ腕が出現した。

 つるはしも持っている。


「ヴェーケスードは使えるようねめっきゅ」


「我輩にも出たでげすぜ!」


 ウィンドウさだからも同じ腕が出ている。


「どうやらふたりとも、私の魔法を使えるようねめっきゅ」


「そのようだな」


「動けと思うと動くから、やってみてめっきゅ」


「分かったよ。 ……ああ、確かに動くな」


「そうでげすね。これは穴を掘る以外にも、いろいろと使えそうでげすぜ」


「そうだな」



「ん? なんか疲れてきたな」


「我輩も疲れてきたでげすぜ」


「魔法を使うと、そうなるのよめっきゅ。疲れたなら、魔法を消すと良いわよめっきゅ」


「どうやって消すんだ?」


「消えろと思うと消えるわよめっきゅ」


「分かったよ」


 腕よ、消えろ!

 と思ってみた。


 すると、腕が消えた。


「おっ、消えた。それに、なんだか体が楽になったな」


「そうでげすね」



「ああ、なんか腹が減ったな。それに、喉も渇いてきたぞ」


「そこに水が湧いているわよめっきゅ」


「それ、飲めるのか?」


「あの水に向かって、飲めるか知りたいと思ってみてめっきゅ。食べられるか調べる魔法が発動するはずよめっきゅ」


「そんな魔法まであるのか!?」


「ダンジョン造りに関係ないんじゃないでげすか?」


「無関係じゃないわよめっきゅ。ダンジョンを造る前に、体が動かなくなったら意味ないでしょめっきゅ」


「まあ、確かにそうだけど」


「細かいことは気にしなくて良いと思うわよめっきゅ。ほら、使ってみなさいよめっきゅ」


「ああ、そうだな」


 やってみた。


「飲めるような気がするぞ」


「じゃあ、飲めるわねめっきゅ」


「本当に飲めるのか?」


「私の魔法を信じなさいめっきゅ!」


「分かったよ!」


 飲んでみた。


 結構美味しい湧き水だな。

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