第3話


 突如、電話が鳴り響く。


「もしもし、コンサートのご予定ですか?すぐに参ります。」


「いえ、違います。」


「チッ」


 電話口の男と、一見親しげに話しているこのヴァイオリン奏者は、今非常に金欠である。


「じゃあ、何だよ。」


「まぁまぁ、金になるお誘いさ。」


「本当か?」


「あぁ、とりあえず今から言う住所に向かって欲しい。」






「それで、来たけど本当にここか?」


 気だるげに、電話で答えているのはいつぞやの金欠奏者だ。


「えぇ、間違いありません。」


「どう見ても屋敷にしか見えないんだが」


「えぇ、間違いありません。」


「はぁ、で何をすればいいんだ。」


「その屋敷の地下室にあるとあるヴァイオリンを持ってきて欲しいんです」


「わかった、地下室だな。」


「それと、くれぐれもお体に気をつけて。」


「はぁ?」


 通話の切れた音がした。

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