第10話


「お父さん。恭子さん連れてきたよ。」


「分かった。」


 安っぽさを隠しきれない会議室は、滅多にない緊張感に包まれる。


 あたりまえだ、今日で生きるか死ぬかが決まってしまうのだから。


「それでは、ただ今より作戦会議を始める。」


「おい、待てや村長。」


 いきなり、会議には横やりが入る。


「いきなりで悪いが、そこのキョンシーが見方であることを前提にして話を進めないでもらっていい?」


「ああ。すまなかった。この人は見ての通りキョンシーだ。自己紹介できそうか?」


「はい。」


 とっさに答える。

 この大事な会議までうじうじしてはいられない。


「私は、キョンシーの佐藤恭子と言います。元人間で、キョンシーの研究施設に実験体として捕まえられました。」


 会議室にざわめきが起こる。

 たった今、人間がキョンシーに変わることが証明されてしまった。


「キョンシーというのは、伝染病のように見られがちですが、実は死んだ後にしか起きません。降霊術の一種だからです。」


 また、会議室は大きく揺れ始めた。


「皆さんが全員生きることが、キョンシーとの勝負の鍵を握ります。」


 会場のざわめきは、徐々につぶやきに変わる。

 もう、頭の中が混乱してよく理解できてないのだろう。


「よろしくお願いします。」


 私はその一言で、ゆっくりと席に着いた。



 会議は非常に難航した。


 私のことを信じるべきかどうかで、大きく分断されたためだ。

 それでも、結果は一つに固まった。



 極力、私を信じるが、人間に危害を加えないように拘束する。



 概ね、そんな感じだ。できることは変わらない。


 私は拘束され、拘置所に置かれた。

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