第3話


 鬱蒼と茂った林の根には、小さな扉があった。彼ら、組織の本拠地だ。


 石造の部屋は薄暗く、日光を通さない。

 木漏れ日も許さない厳格な気配があった。


「あの、キョンシーの兄妹が逃げました。」


 部下の1人が報告した。少し、俯いてゆっくりと跪いて。


「そうか…」


「はい。キョンシーの兄妹です。」


「あぁ。」


「キョンシーの兄妹です。」


「わかっている。」


「キョンシーの兄妹です。」


「何回言うつもりだ。」


「キョンシーの兄妹です!」


「この、能無しが!」


 一つ、閃光が走る。


 部下の体は、蒸発した。

 今にも、再生しようと細胞分裂を繰り返し、ボコボコと膨らんでいる。

 その光景は、目を瞑りたくなる。


 埃を被った玉座のようなものに小さく腰を預けた謎の男は、小さく頷いた。


「まぁ、よい。どうせすぐに見つかる。予定の兵はどうした。」


「滞りなく進んでおります。」


「わかった。」


「進んでおります。」


「あぁ。」


「進んでおります。」


「お前は学習しろ。」



 空が少し暗くなり、日差しも遮られている。彼らは、ゆっくりと立ち上がった。


 後には、ボコボコと不気味な音が残った。






キョンシー豆知識 No.2


キョンシー兄妹の兄はすごく妹に甘い。

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