第一章

第2話


 鬱蒼とした森の奥、木漏れ日すらも当たらないような暗闇を、彼らは走っていた。


「はぁ、はぁ…」


「おい、遅れてるぞ!」


「きゅ、休憩…」


「さっきしたばっかりだろうが。」


 この兄妹は、キョンシーである。

 現在、とある組織から逃げ出しているところだ。


「ご、5分だけ…」


「無理だ。今は、とにかく時間がない。とりあえず、できるだけ進んでおきたい。」


 彼らは、脱走している。いつ捕まってもおかしくない。

 故に、この兄はできるだけ距離をとっておきたかった。


「えぇ、いいじゃん。疲れて倒れちゃうよ。」(うるうる)


「うっ、じゃあ1分だけな。」


「5分は欲しいよぉ。」(うるうる)


「無理だ。」


「お願い…」(上目遣い)


「わかったよ、5分な。」


 しかし、兄は妹に非常に弱かった。





キョンシー豆知識 No.1


 飛びながら移動するのは、死んだ後の死後硬直で体が固まっているからで、しばらくすると、ほぐれてきて素早く動ける。

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