この糞みたいな世の中、私が幸せにさせません。

観葉植物

1人目 糞みたいな彼氏。

 まともな人生とは何か。まともな人間とは何か。

 私は、きっとまともではない。

 ルックスも頭脳も中の下、友達という存在も高校生なのに1人もいない。

 それに面白くも優しくもない、人が不幸になったらなったで特に何もしない。


「夜美、おはよう。」


 だが、こんな私でも彼氏がいる。

 

「おはよ、優。」


「ねぇ、なんか暗い顔してない?俺心配なんだけど……。」


 みんなからよく言われる。特に親から。

 暗い、何考えてるか分からない、気持ち悪いなど。

 貴様らが産んだお子様だぞ?嘘でもいいから少しくらい褒めてみろよ――なんて考えても意味無いんだけど。


「……大丈夫。昨日、徹夜しちゃって。」


「そっか……。」


         *

 

 学校終わった……、早く帰りたい。

 彼氏とはクラスが違うので、基本的私はひとりぼっちである。

 俯きながら校門を出ようとすると、前から男子達の笑い声が聞こえた。

 彼氏だ。


「この後どうする?」 


「うーん、カラオケ行く?」


 他愛もない会話。

 私も友達とかいたらこういう会話出来てたのかな。そう考えていると、別の話を話し始めた。


「てゆーかさ、お前彼女とどう?」


「どぉって、最悪だよ。根暗だし、スタイルも顔も良くないし。早く別れてえ。」


「そっか笑、そいえば罰ゲーム中だったか笑。あと少しだから頑張れよ。」


 ……まぁ、そんな気はしてた。どうせ別れて笑い者にさせられるのが私の運命だから。

 だけど、私が大人しく笑い者にさせてたまるか。

 こっちから振ってやる、一発殴ってやろうか。

 少しだけ楽しみだったので、いつもの帰り道は明るく見えた。


       *


 土曜日、彼氏をカラオケに呼び出した。

 さて、始めようか。


「急にどうしたの?珍しいね、カラオケに行こうだなんて。」


「そんな優しく話さなくていいよ。」


「……え?」


 バッグをソファに置きながら冷たい声で言う。案の定、彼氏は言葉を詰まらせた。


「え、俺何かした?」


「なんも、別れようと思ってるだけ。」


「は?」


 私を見つめる彼の目がとても怖く見えた。

 だが、私は止めない。


「別れましょ。もう、あなたにはうんざり。」


 少し間が空いた。ふと、気になって彼を見ると、下を向いて震えていた。


「……お前が別れようなんて言うなよ。根暗がよう。こっちはイヤイヤ付き合ってたんだぞ。」


「だから別れるの。あ、あと1曲歌っておけば?――さよなら。」


 部屋のドアを開けようとしたその時、彼の大きな手が、私の手首を掴んだ。

 そのまま、ソファに引き倒された。

 私の上に乗られ、抵抗出来ないようにされた。


「――痛ッ!離してよ。」


「黙れ。」


 私から振られる事が、大分彼のプライドを傷つけたらしい。

 何か嫌な予感がして、彼の手を見ると、拳を握っていた。


「……え。」


 バン!

 部屋に大きな音が鳴り響いた。

 殴られたのだ。必死に抵抗するも、力が足りなく、大人しく殴られるしか無かった。

 何発か殴られて彼の目を見ると、そこには真っ赤に腫れた私の顔が映っていた。


「……このままじゃ、殺される。」


 手が空いていたので、感覚がない手を伸ばして、テーブルの上に置いてあったガラスのコップを持ち、彼の頭に殴り返した。



 

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この糞みたいな世の中、私が幸せにさせません。 観葉植物 @papikoice

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