第2話
見知らぬ眼鏡女子に突然抱きつかれた桜は戸惑い頭が真っ白になった。
『え、えっえーーーーーーー』
心の中で叫んだ後、我に返った桜は女の子を引き離した。
「ちょ、ちょっといきなり何ー!!びっくりーしたー」
女の子は薄く微笑みながら
「ごめんね、柔らかそうだったからつい抱きついちゃった」
「ついって」
普通初対面で抱きつく??と呆れた顔をする桜だったが、それよりも気になることがあった
「あの、あなたは何でこの街にいるんですか、私がこの一ヶ月過ごした中で両親以外人間の形をした人はいなかったのですが。」
「わたしの名前は
「えっと春奈さん」
「なーに?」
「えーっと、私に用があってきたのですか?よければ
春奈は初対面だし、いったい誰で何を考えてるのか分からなかったけど、悪い人じゃなさそうだったので家に誘ってみることにした。それに同い年っぽい人間の女の子だったから仲良くなりたい欲があったのかもしれない。
春奈は一瞬驚いた表情をして
「今日は挨拶ぐらいしか無理かと思ったけど、桜ちゃんが招いてくれるならお言葉に甘えちゃおうかな。あと敬語じゃなくていいよ、わたしもタメ口で話すから。」
「あ、名前、何で私の名前知ってるの?」
チャイムを鳴らした時にも気づいたがなんで名前を知ってる?もしかして私のファン?いやストーカー、あ小学校の時会ったことあるのかもと思考を回転させていたが
桜の問いかけに春奈は少し悩んで指を口に当て
「うーん、秘密」
「こわっ」
春奈の返事に桜はとっさに反応してしまう。「大丈夫、大丈夫」と春奈は笑顔で返してきたが、いったい何が大丈夫なのだろうと疑問に思った。
階段を上がり、自室に招いて春奈をベッドに腰掛けさせる。私はもちろん勉強椅子だ。
春奈を家に入れた時、ママは「桜のお友達だったのね、どうぞゆっくりしていってね」と快く春奈を受け入れていた。
ちなみにパパはその後すぐに帰ってきてママと一緒に夕食を食べている
「それで春奈はどうして私の家に来たの、この街は何?」
桜の疑問は真正面の春奈へ向けられてる。春奈は桜の部屋を眺めながら桜の目に視線を移す
「わたしは桜ちゃんをこの街から出すためにこの街にやってきたの、だからこの街のことはよく分からない」
という春奈はピンクで装飾の可愛いミサンガを渡してきた。
「かわいい」
「でしょ、桜ちゃんにあげるから付けてほしい」
とほぼ初対面んの春奈に言われたが、久しぶりの人間に会えたし少し興奮気味だったので可愛いから左手につけた。
春奈は満面の笑みで「私とおそろー!」と言って右手につけてるミサンガを見せてきた。かわいい。
「そういえばこの街を出るって?引っ越したばっかだし考えたことも無かったなー。でもなんでわざわざ私をつれだすの?」
「それはわたしが桜ちゃんの親友だから」
「私と親友?あ、でも私の名前知ってるから、もしかして私が小学生だった頃親友だった?ごめん私忘ちゃったのかな」
もしかして私が春奈のことを忘れてるだけかもと思い聞いてみた。
「いや多分私が一方的に親友って思ってるだけだから、桜ちゃんは悪くないよ」
沈黙が流れて少し気まずい
すると春奈が沈黙を埋めるように
「この部屋ってぬいぐるみ沢山あるんだね」と聞いてきた。
この部屋にはぬいぐるみや絵本などたくさん飾ってある。ほとんど小学校でもらったものでいつの間にかこんなに沢山集まってた
「うん、小さい頃からなんかいつの間にか集まってた。私はこのペンちゃんが一番のお気に入りなんだ」
桜ばベッドの上に倒れてる大きなペンギンを抱き抱えて話した
「ぺんちゃん?」
「ぺんぎんの抱き枕だから、ぺんちゃん」
「なんかかわいいね、もしかしてこれはごりちゃんで、あれはイルちゃん?」
「えー!よく分かったね!ちなみにこの子はモンキーラッパくんだよ」
「さるくんじゃなの!?」
談笑を続けていると、あたりは少し暗くなってきた
春奈は同い年らしいが、どこか大人びていた。
これがミステリアスな女なのだろうか、違うか。
「桜ちゃん」
突然トーンを落とした声で春奈に呼ばれた
「ん、なに?」
「今から私についてきてくれない?」
真剣な表情をしている春奈
「今から?いいけど、どこに?」
「あの大きな芝生の公園」
「わかった。ママに言って準備してくるね」
部屋を出ようとする私の手を春奈が掴んだ。
「いかないで」
今日一番の表情をしている春奈だったの咄嗟に「はい」と返事をしてしまった。
そのまま私はベッドの上で正座をして待っていると
「ここから出よう」
春奈はロープが垂れ下がった窓を指さして言った
「え?窓から?危なくない?玄関から出ようよ。別にママに怒られたりはしないよ?」
春奈はそれでも表情を曇らせたまま
「お願い、わたしを信じて?」
正直状況がよく分からないけど、春奈の真剣な表情と、初めて2階の窓から外に出るワクワク感を感じてしまい、春奈と一緒に2階から降りることにした。
「ごめんね靴ないや」
「あ、たしかに!私の体育館シューズでも履く?」
「いやそれは桜が履いて!私は裸足で大丈夫だから」
自分だけなんて嫌だと思った桜は
「じゃあ私も裸足でいいや」と言って靴下も部屋に脱ぎ捨てた
二階の窓から一階へと降りるのは案外簡単だった。ちょっとスパイごっこしてるみたいで楽しい
「初めて食べる物ってさ、見た目で味を想像しちゃうけど食べてみると想像と違う事ってよくあるよね」
「どーいうこと?」
「街の人?達も言葉が通じないのは私が心のどこかで拒否しちゃってるからかな」
「そんな事ないよ。この街の事はよく分からないけど桜ちゃんはどんな相手でも受け入れようと努力する子だから」
「そうかな、そうだといいな」
すっかり日も落ちて街灯に照らされてる道を、二人は裸足のまま歩いた。時々小石を踏んで痛がってお互い笑いあいながら夜道を進んでいった。
いつの間にか裸足だったことも気にならなくなり、いつもの公園に着いたら街灯照らす夜のベンチの下に一人の男性が立っていた。
「春奈か結構早かったな。来ないかと思ったぜ」
「来るに決まってるじゃない、もう少し桜ちゃんと話しててもよかったけど」
というと
「それで遅れたら本末転倒だったぞ、ってまあいいや、桜さん俺は垣根海斗っていいます。よろしく」
海斗は桜の方に視線を移し、丁寧な口調で名前を言った
「えっと桜です。よろしくって、また人間!?」
「人間ですよろしく」
ふざけているのか真面目なのか分からない人だなと思った・
「にしても二人が来てくれたお陰で今日ここで野宿せずにすんだわ」
「ここで野宿する気だった?」
「気にすることはねーよ、男なら誰だって野宿ぐらいした事あるからさ、この前だって朝起きたらいつの間にか花壇の中で野良猫と寝てたくらいだし」
少しの沈黙の後、引き攣った顔で桜が口を出す
「そう、なんだ」
「桜ちゃん引いてるから、あんたもう一生喋らないほうがいいよ」
「ひでー」
周囲がざわめき出してきたと感じた時に海斗は口を開く
「じゃあ、そろそろ行きますか」
「行くってどこに?」
「現実世界」
海斗の言葉が理解できない、この場合言葉は理解できるけど意味がわからない、ここは現実で現に13年間も過ごしてきた
「現実世界?何言ってるの」
「桜ちゃんお願い、海斗はアホだけど話を聞いてほしい」
「おい」
海斗のツッコミを見て
「春奈が言うなら」
「じゃさっき春奈からもらったミサンガがあるだろ?」
「うん」
「これは夢だ!!って強く思いながらそのミサンガを引きちぎってほしい」
桜は驚いて
「え。さっきもらったばかりなのに!?」
「「お願い」」
二人に懇願に桜は思いっきり叫びながらミサンガを引きちぎる。
すると桜のからが粒子のように細かくなっていき、消えた
「これで大丈夫だよね?」
「多分な」
二人の目の前には桜の両親が立っており
「ありがとう」
そう二人にいうと
世界は闇に包まれた。
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