〜第1章〜 第3話 猪突猛進

 まずはシヴァ民乃村へ足を運ぶ。

 失敗したのは、ロイスさんに村までどれぐらいで着くのか聞いていなかった。このまま七街道しちかいどうという道を真っ直ぐ進むと隣町だからわかるとしか教えられていなかった。

 また、見たことのない魔物が意外にも見つかる。カンガルー?に似てウサギのように小さい魔物や、ロイスさんからは赤い甲羅がある魔物には気をつけなさいとは言われたが、今は次の村へ行くのに必死だ。

 カルタ村を出た時、太陽は頭上にあったが今は太陽が沈みかかっている。おそらく3時間から4時間は歩いただろう。

 そんなことを考えていると目の前にひとつの街が見えてきた。

 シヴァ民乃村だ。

 私は疲れていたものの不思議と早歩きになった。

 

「ふぅ…やっと着いた」


 まずは宿屋探しをする。一応村中をまわったのだが、ここ一軒しか見当たらなかった。


「マニの宿屋、か…」


 名前から少し怪しさを感じつつ、中へ入った。


「あらいらっしゃい、若いぼうやじゃないっ」


 なぜだろう、不思議な人間に悪寒がする接客に汗が止まらなかった。


「部屋、空いていますか?」


 少し勇気を持って聞いてみた。


「ツイン1部屋しか空いていないわぁ…それでも宜しくて??」


「それでも大丈夫です。1泊いくらですか?」


「シングルだったら15ダルだったんだけどねぇ。1人でもツイン料かかるけど大丈夫かしら?それなら1泊30ダルよ〜。あ、それとも私が一緒のお部屋で寝るなら15ダルでいいわ…」


「3、30ダル払いますっ。1人で大丈夫です!」


 少し被せ気味に言ってしまった。1泊30ダル、高いのか安いのか今はわからないがロイスさんからいただいたお金を使う。感謝だ。


「朝ごはんは無料よ〜。あと朝は起こしに行こっか?」


「早起き得意なので遠慮します。すみません、鍵、貰いますね。ありがとうございます」


「もう!ウブねっ。ゆっくりおやすみなさい」


 異世界へ転生して2日目が経つ。小鳥たちの声と木窓から差し込む光で目が覚めた。もう、戻れないんだ、現実なんだと感じた。そして1階へ降り食堂へ寄った。


「おはよう〜。ゆうべはゆっくり眠れた?やっぱり寂しかった?」


「おはようございます。はい、ぐっすりすぐ眠れました。寂しくはなかったですよ」

 

 リップサービスで寂しいと言うべきか迷ったがここで勘違いされては困ると思い、胸に留めた。

 朝ごはんは角食にスクランブルエッグ、サラダにコーヒーとシンプルながら食べやすいごはんを用意してくれた。これはありがたい。


「そういえばこの村でローダさんがやっている鍛冶屋を知りませんか?」


 昨日他の宿屋があるか見て回ったがそれらしき鍛冶屋を見つけられなかった。


「あら、ローダの鍛冶屋ならこの宿屋の真裏よ?確かに看板がないからよその人にはわかりづらいわねぇ」


 それを聞いた私は角食を口にくわえ、急ぎマニの宿屋を後にした。


「また泊まりにきてねぇ」


 言葉を残しながら、私は左折左折で古びた建物の前へやってきた。


「ここか…」


「すみません〜」


 営業していないのか?2、3分待てど店主さんがやってこない。


「ごめんください〜、すみません」


「おっす、どちらさんでぃ?」


 なぜだろう。異世界で少し江戸っ子気質のある人に出会えた。


「こちらローダさんの鍛冶屋でお間違いないですよね?実はカルタ村のロイスさんからこちらの鍛冶屋を紹介されまして」


「なんと?ロイスから?」


「はい、こちらで武器を買うといいと教えてくれまして…」


 ふとローダは腰元の剣に視線をやる。


「こりゃロイスの剣じゃないか。覚えている、若い頃にロイスに作ったやつじゃな」


 ローダは昔を思い出すように語りかけた。


「あいつぁ、昔ギルドで仕事を請け負っていたんじゃ。当時俺も鍛冶屋の見習いだったけんど、見習いながらに作った剣でのぉ。この剣、貰ったのか?」


「ええ。いただきました」


 正直そこまで歴史のある剣だとは知らなかった。だが、今後の事もあるだろう。新しいものを買いたいところ。


「まあ、あれから時も流れたからその剣はもう使えんじゃろ。そこでじゃ。新しく作る、というよりその剣をリメイクしてはいかがかな?」


「いいんですか?ありがとうございます!」


 二つ返事で返してしまった。確かにリメイクという頭がなかった。買い換えるだけではなく、やりようは色々ある。


「お代は…」


「そうじゃなぁ。いくらロイスのお下がりの剣といえどタダではわしも食ってはいけん。ただ新しい剣よりかは格安で請け負おう。200ダルならどうじゃ?」


「はい!お願いします!」


 200ダル…差し引いてもまだ残りは270ダルあるから大丈夫だ。




 




 

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