第112話 耐性チェック
『知恵の勇者もそうだったな。人間は……、愚かだ。弱く、脆く、そして醜い……。貴様らのようなダニ共が、この我の為の星を汚すなど、あってはなら———』
武技発動。
———『雷霆脚』
万物の根源であるホーン、そこから事象の一つである雷撃を引き出して、脚部に纏わせ、叩きつける。ただそれだけの単純な技。属性格闘のうち一つ。
『は、な、しを……、最後まで聞けェ!!!!』
殺戮要塞を名乗る何かは、肉に覆われた要塞の前足を振り抜き、俺の蹴りを弾いた。
流石に質量差があるか。
ここまで巨大な相手に、単なる武技が刺さる訳はない。
とは言え、電撃属性による追加ダメージは通ったな。
このまま効きそうな属性攻撃を放っていこう。
初見の敵にはこうやって、精神力消費の少ない属性武技でちょいちょい刺して、相手の耐性を割り出すのは基本だ。
『この《簒奪の魔王》こと、ジャバヴォックを!!!下等な人間風情が!!!舐めるなァ!!!』
……ん?
これ、肉に覆われると砲塔が動かなくなるのか?
艦載機らしき機械兵も動かんな。
……駄目じゃないか、これ?
それじゃあ移動要塞の強みを殺している。絶え間ない弾幕と艦載機による波状攻撃こそが、この兵器の一番強いところだったのに……。
これでは、多少堅牢性とフィジカルが増したとしても、弱体化にしかならない。
……まあブラフで本当は使える線もあるし、対応できるようにはしておくか。
よし、次は炎熱。
武技発動、『火砕流』……。
抜刀と共に、ホーンから火の力を引き出して、切りつける……。
『ぬうっ……!』
……まあまあか。
次、凍結……。
武技発動、『氷牙の剣』……。
剣に氷を纏わせて、斬る。
『効かぬ!』
次、出血。
『ぬおっ?!』
え?大型エネミーなのに出血ダメージ入るんだ……。
これはアレだな、最初から機械の単タイプなら、弱点は雷撃属性のみだったはずなのに、下手に肉で覆って肉体タイプも追加したから、出血も通るようになったんだ。
バカだなー……。
複合タイプの肉体を持ったエネミーは、確かに攻撃手段が多くて攻め手の時は強力だが、受けに回ると弱点が多くて、押し込まれると弱いんだ。
まあ、弱点を増やしてくれるのはありがたいので、特ににも言わんが。
では次は……。
ん?
おっと、なんかやるみたいだな。
『下等な人間め、この我が引導を渡してくれようぞ!』
うわ、対空機銃の代わりに、肉に埋まった口みたいなところから、肉の芽が飛んできた。
グロテスク……と言って良いんだよな?
ムーザランでは逆にグロテスクではないところを探す方が難しい有様だったので、基準がよく分からない。
製作陣はエネミーにクソみたいなAIを搭載しそして、プレイヤーに対して徹底的に不快感を与えるデザインをしてくれているのが常だからな。物理的にボコってくるだけではなく精神的にもチクチク刺してくる訳だ。
奴らはいつだって、プレイヤー達が泣き喚いて死ぬところをニヤニヤしながら眺めているんだよ。
ムーザランのクズ共は何度も殺したのでもう良いとして、製作陣はマジで一度は殺しておきたかったな。
いや、もうムーザランには関わりたくないから、今度ゲームを作る時はクソ殺伐暗鬱世界ではなく、恋愛ゲームにしておいてくれ。
……恋愛ゲームのタグを付けながら中身はハイスピードメカアクションとか作ってきそうな感じがするな。やめておこう。
さて、肉の芽。
射出速度は機銃より遅いが、飛来してくる最中に肥大化して、攻撃範囲が広がっているな。
それと、当たれば虫のように食いついてきて、皮膚を食い破り内部に入ってくるようなタイプだろう。ムーザランでよく見たから知っている、俺は詳しいんだ。
この物量、面攻撃は避けきれん。
『月龍の咆哮』
なのでこれで凌ぐ。
大きく吠え、ホーンを乗せた音と冷気の波動で、飛来する肉の芽を弾いて凍らせる……。
『ほう、それは既に見たぞ?貴様らの王都のパーティー会場でな!』
あ、そう。
じゃあ別の手段も用意しておくか。
……にしてもこいつ、よく喋るな?
なんで自分から手札晒して喜んでいるんだろうか?
舐めプできるほど強いとは思えないんだが……。
まあこちらが死んだ後に「知り得たか?」とか言って謎俳句詠まれるよりはムカつかないから良いんじゃないかね。
『分かるか、人間?この我の力は、純粋な暴力だけでなく、貴様らから《簒奪》した知識もあるのだ!我が洗脳した、サンドランド真の王を名乗るクズは実に使えなかったが、今代勇者の秘技を引き出して死んだのは褒めてやろうではないか!』
秘技?
いやこれ、ムーザランではほぼ必須の「弾消し系」だけど……。
ムーザランの対人では、「防御」「攻撃」「移動」の武技は常に発動できる状態にしておくのが普通だ。剣士でも術師でも、なんでも。
その中でも、近接では『パリィ系』が鉄板だが、面制圧には『弾消し系』を持っておくと良いと言われている。
使える武技は多ければ多い方がよろしくはあるのだが、対人戦では中々使いにくい武技も多く、特にタイマンとなると基本的に『パリィ』が中心になる為、実は使えない奴らも多い『弾消し系』……。
しかし、上位層では実は必須だ。
アマチュア達はパリィで防げる程度の戦いしかしていない、択が少ないのだろうが、俺のような年中ムーザランに篭ってた気狂いは違う。
『それの弱点は既に見抜いているぞ!それは、連撃に弱いことだ!!!』
……は?
何言ってるんだ?
そんな程度のこと、我々プレイヤーが気付かないとでも?
「その点はver1.02で解決済みだ」
wikiを見ろよ。因みに、このゲームのwikiの運営をしているのは俺だ。
俺は話しつつも、指先にホーンを灯し、ルーンを描いていた。
———盾とは、今も昔も守り人の手の内にあり。ならば、盾の覚えさまを描かば、そは守り人となる。盾を並ぶる陣は、柱に例へらる。
『理力の盾陣』
浮遊する盾が、自動的に遠距離攻撃を防ぐ。
この盾は、相手のだけではなく自分の射線も通らなくするので、こちら側から遠距離攻撃はできないのだが……、自分の近距離攻撃武器には引っかからない理力の盾故に、武器を振ることだけは自由にできる。
機械弓で遠距離からFPSやってくるバカ戦法……、連弩マンを陳腐化させた防御戦法。
吠える→盾張る→吠えるを繰り返し、盾陣が残っている最中にランスを構えて一人突撃するファランクス(一人)。
この戦法は、こう名付けられた。
「『わんわん盾』だ……!」
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