第108話 銀色スライム

「エドおおおっ!!!何してくれるんですかあああっ?!!!」


「ひ、酷いよ、エド……!」


なんか復活した囮がほざいているな。


「また小便を漏らしたことが問題なのか?」


「もっ……?!漏らしてない!漏らしてないですし!!!」


「安心しろ、爆撃でバラバラになった時はクソも漏らしていたぞ。小便なんて誤差みたいなものだろう」


「もーーーーーっ!!!!もーーーーーっ!!!!」


『『『『敵発見』』』』


「ウオオオオッ?!!!流石にその量は死ぬ死ぬ死ぬゥウ?!!!!」


シーリスは良いな。


定期的に大きな音を出すので、こうして上手く配置すれば、エネミーが勝手に集まってくる。


囮共の中で最も囮適性が高いのは、シーリスかもしれない。


最近は壊れにくくなったことだし、俺も愛着が湧いてきた。


今後も、囮として動かなくなるまでしっかり使ってやろう……。


「アッ、待って!死ぬゥウウウ!!!!」




顔面をベコベコにされたシーリスに歌唱術で回復をしてやる。


「あの、あの、あの……!私、女の子なんですけど……?!冒険小説だとヒロイン枠なんですけどぉ……?!!!」


は?


ヒロイン?


「……ハッ」


「鼻で笑われたーっ?!!!」


いや、自己評価高いんだなこいつ。


囮の癖に、自分のことをヒロインだと思っていたのか。


「ふ、ふふふ……!分かってます、ええ分かってますよ……!所詮は囮一号だと!ですが、私もこれからもっともっと強くなって、エドを支える美人巨乳賢者になります!見ていてください!!!」


「巨乳は無理じゃないのか?お前もう十代後半だろう?その歳でそのスタイルならもう一生そのままだぞ」


「うわあああん!!!」


さて、馬鹿は放っておくとして……。


「来たな」


『敵発見』『敵発見』『敵発見』『敵発見』『敵発見』


風の塔の番人……、機械兵(獣)だ。


四足歩行の狼や虎のような機械兵で、その背中にはガトリング砲とミサイルポッドがある。


また、尻尾は刃になっている。


数は十体で、大きさはまあ……、オルガンと同じくらいか。


ふむ……?


「そんな大したもんでもなさそうだが、なんでボスっぽい雰囲気を出しているんだ、このエネミーは?」


「ウオオオオッ?!!!いやこれ全然ボスだよぉ?!!めちゃくちゃ動き早いんだけどォ?!!!」


ブリッジしながら攻撃を回避し、そのまま更に回避を重ねたことでよく分からん体勢になって、砂まみれで転げ回るアニスが叫んだ。


「そんな大袈裟に避けることはないだろう。直線的で分かりやすいから、こうして軽く身体を逸らすだけで何とでもなる」


俺は首を少し傾げて、機械兵(獣)の尾による刺突を回避。飛びついてきた機械兵(獣)は、『蹴撃』で弾き飛ばした。


小型のエネミーだからフィジカルが弱いな。


「ほああああ?!!!それができるのはエドだけでほああああああ?!!!」


喋る余裕があるだけ、まだ全然追い詰められていないと思うんだが……。


まあ良いか。


「『拳打』!『蹴撃』!……な、なんか、倒しても倒しても減ってない気がするにゃ?!」


一方で、フィジカルが強いランファは順当に役に立ってくれる。


その辺に置いておけば、まあなんか適当に動くから、使いやすいのだ。


クセのないNPCは使い勝手がいい。


「はあーっ!『貫通射撃』!……見ろ、あれが原因だ!」


ナンシェが叫ぶ。


その視線の先には……。


『kvouillmthudmwqqp?!pgwmaguobjmgt!!!』


銀色の、スライムのようなものが蠢いていた。


それは、破壊された機械兵の残骸を包み込むと……、機械兵(獣)に作り直して、向かってきた。


なるほど、そういうタイプのエネミーか。


「どうする?!あいつを何とかしない限り、無限に戦う羽目になるぞっ?!」


ナンシェが叫び、矢を放つ。


しかし、銀色スライムは矢を受けても一時的には弾けるが……。


『pwmgtklmjgglcmd!!!』


すぐに一つに集まって、行動を再開してくる。


「にゃあー?!ダメにゃ!殴ってもすぐ元通りにゃあー!」


「そもそもあたしは機械兵みたいな硬い奴は苦手で……うっひゃああ?!!」


「こちらは回復で手一杯です!」


ふむ……。


「シーリス、あの銀色スライム……、術は効くかもしれん。やってみろ」


「え?!あ、はい!」


シーリスが魔法を唱えて当てると……。


『pppppgiiliiiiiiiiivlyyjvuvmv?!?!?!!』


銀色スライムはめちゃくちゃに動いて苦しみ、最終的には黒い金属の砂に成り果てた……。


なるほど、やはり術は効くのか。


「なら……、ランファ!」


「分かったにゃ!イヤーッ!!!」


ナンシェが指揮を執り、ランファが一気に機械兵(獣)を倒す。


そして、その内側から湧き出てきた銀色スライムを……。


「クララっ!」


「いきますよ、全力の……、『プロテクション』ッ!!!」


クララの光の壁が、押し出すようにして残骸の山から引き離す。


それを……。


「『かげぬい』!」


アニスが固定。


そこに、シーリスが。


「行きますよ……!炎魔イフリートよ!その滾る激炎、迸る烈火をもって!万魔蔓延る昏き夜を、焼き照らしたまえ!!!『プロミネンス・ブラスト』オオオ!!!!」


『『『『ppppgpgrigiiigililiiiiiljhwmdmjtga!!!!!』』』』


火炎放射のようなビームのようなものを放ち、一気に焼き払った……。


「や、やりましたよっ、エド!見ててくれましたか?!」


シーリスが満面の笑みを浮かべて振り返るが……。


まだ終わっていないな。


焼かれながらバラバラになった銀色スライムは、周辺に隠れている小さな個体も全て集まって巨大化し……。


武技発動。


———『紫電一閃』


『p———?』


……何かをやりそうだったので、やる前に、殺した。


第二形態に移行するのに、謎バリアとか力場フィールド攻撃とか、やってこない方が悪いので……。


「ま……」


「ま?」


「また良いとこだけ持っていきましたねえええ?!!!もーーーっ!!!」


そんなん言われましても……。

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