第105話 残敵掃討の準備

「よし、と……」


一番結びやすいのは、クララだったな。


髪の長さ、質感共に、良い具合だった。


ナンシェは、長いがサラサラ過ぎて結ぶのに苦労した。


シーリス、アニス、ランファの三人は、髪が短めだったから、穴を開けてそこに縄を通した。


こんなものだろう。


「行きましょう、ララシャ様」


「うむ」


宙に浮かんで空を飛ぶララシャ様を伴って、俺は……。


五つの生首がぶら下がった、愛馬オルガンの手綱を手繰り寄せた……。


……にしてもこいつら、やっぱりダメだったな。


速攻で死んだから、首だけ切り取って運ぶ羽目になった。めんどくさい……。




「やっっっぱり死んだじゃないですかーーーっ!!!!」


うるさい顔で叫ぶシーリス。


ぎゃあぎゃあ騒ぐなよ、うるさいな……。


俺は軽くデコピンをした。


「ぎょへえええ?!!!!」


シーリスは、縦に三回転して砂漠に頭から突っ込んだ。が、瞬時に頭を砂の海から引っこ抜き、砂まみれの顔で俺に迫る。


「……んばっ!はぁ、はぁ……!また私、死んでましたよね?!」


「そうですね」


「しかも私達、何で全裸なんですか?!」


そう言ってシーリスは、申し訳程度に存在する薄い乳肉と、毛の生えていない陰部を手で隠した。


「ああ、お前らは爆撃タイプの機械兵に爆弾を喰らって、全身バラバラになっていたからな。とりあえず、頭だけ拾ってここまで運んできて、ここで蘇生させたんだよ」


って言うか、何だ?


一丁前に恥部を隠すなよ。


そもそも俺はララシャ様意外では大して性欲が湧かないのだが、お前の貧相な身体じゃマジでこれっぽっちも何もないぞ。


捨て犬の分際で色気付くなよ。


「……じゃあ、私の身体は?」


「その辺でバラバラになって焼けてるんじゃないか?」


それを聞いたシーリスは、自分の身体をペタペタと一通り触り……。


俺の言葉を理解した後、顔面を蒼白させて、言った。


「あ、ちょっと待ってください、吐く。うおおえええええっ!!!!」


うわ、吐いた。


「はあっ、はあっ、はーーーっ……。わっかりました。それで、何で全裸なんですか?装備は元通りにならない感じなんです?」


「ムーザラン製の装備なら元に戻るだろうが、この世界のものじゃあな……」


「あーはい、じゃあもうアレです。なんか服ください。流石に、敵陣を全裸で歩き回るのは嫌ですからっ!」


「気にすることはないと思うがな……」


ムーザランでは、全裸グレートソード二刀流仮面マンが転がりながら切り掛かってきたし。


正直、女の裸も見慣れてる。


全裸女ムーザラン民なんて割とよく見るし……。


それにさっきも思ったが、お前の身体じゃあな……。


「肉体は死んでも、尊厳までは死にたくないんですよォ!!!!良いから服ください服ゥ!!!!」


まあ良いや。


服をくれてやった。


ムーザラン製だし、頑丈で良いだろう。これで更に生存率が上がるってものだ。


爆撃にも一度は耐えられるんじゃないか?


一撃で痛みを感じる間もなくバラバラに破壊されて死ぬのと、地獄の苦痛を味わって立ち上がるの、どちらが良いのかと言えば、俺にはもう分からんが。


まあ本人達がそれで良いなら良いんじゃないのかね。


「あの……、髪が傷んでいるのですが、何かしましたか……?」


と、クララ。


「ああ、お前の髪はちょうど良い長さだったから、手綱に結んで運んだぞ」


「なんてことを……」


さめざめと泣き出す。髪は女の命?とか、訳の分からんことを言っているな。


「……あの、あたしって髪が短いと思うんだけど、どうやって運んだの?」


アニスが聞いてきた。


「ああ、側頭部に短剣で穴を開けて、そこに縄を捩じ込んだ」


「……ごめん、あたしもちょっと、吐く。おええええ!!!!」


何なんだこいつら……?


「戦場で、やれ服を着せろだ、やれ髪をキレイにしろだ、随分と余裕だな?雑魚の分際で……」


「うっ……。で、でも、建国王様は『毎日お風呂に入ろう!』『女の子はおしゃれしよう!』って言い残してましたし……」


またか、建国王。


こいつのせいで、人々は毎日風呂に入り、髪や服を気にするようになったのか。


良いことではあるのだろうが、こんな風にモンスターだの何だのと戦いが絶えない世界でそれは、ミスマッチではないだろうか?


……どうでもいいな。


それよりも……。


「とっとと服を着ろ。水の塔はすぐそこだぞ」


「あ、そういえば、ここってどこなんですか?」


「潰れた建物の地下室だ。たまたま無事だったようだから、『音溜まり』設置の為に確保しておいた」


ああ、そうだな。


ここは、どうやら酒場の地下室らしい。


たまたま、階段を見つけたんでな。周りの雑魚を蹴散らしてから、ここに入って、出入り口に石壁を設置して隠れておいた。


「え、じゃあここでたらすぐ、そのバリアを張っている塔の一つ……水の塔なんですか?」


「そうだな」


「……機械兵は?」


「いる」


「どれくらい?」


「あと二、三体だ」


「あらかじめ倒しておいてくれたんですね!流石エド!」


「ああ、早く行くぞ」




『『『『システム、起動。戦闘モード、起動。排除、開始』』』』


「「「「あれを二、三体とカウントすなーーーっ!!!!」」」」

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