砂漠の国サンドランド編

第97話 砂糖を求めて

パーティーとやらが終わり、俺はララシャ様とお茶を嗜んでいた。


ララシャ様は、海外の国から運ばれてくる茶葉に、サンドランドの一級品である高級砂糖を、角砂糖二つ分入れて楽しむのが、最近のマイブームでいらっしゃるらしい。


それに、季節の果物を使ったタルトや、濃厚なクリーム系のケーキをお好みになられる。


単純な甘味よりも、風味や舌触りを重視していられるそうだ。


「あ、あの」


「ララシャ様は、今、お茶をお飲みでいらっしゃる」


「はい……」


さて、一時間後。


「も、もう大丈夫?」


「言え」


「あのね……」


アニスが言った。


何でも、サンドランドの移動要塞が暴走して、大暴れしているらしい。


「それで、あの男……、テオドアも死んだんだって」


「誰だ?」


「あ、うん。サンドランドの王だよね。殺した相手だけど覚えてないの?」


「何故俺がサンドランドの王を殺すんだ?最近知った話だが、サンドランドからはララシャ様のお好みの砂糖が輸入されているらしいからな、敵対するのは良くないだろう」


アニスは、メチャクチャに顔を歪めた。


「……あ、えっと、うん。殺したのは衝動的なもので、殺した相手が誰なのかは興味がないし覚えてもいないってことだよね」


「何の話だ?」


「ううん、何でもない!あー、その……、サンドランドなんだけど、今は移動要塞が暴れてて……、そう!お砂糖の輸出ができないよ!」


なるほど。


「それは問題だな。よし、移動要塞を殺そう」


「あ、えと、私がその……、管理者権限があるから、止められるかも!だ、だからその……、て、手伝って、くださいっ!」


ふむ。


なんかそんな話を聞いたような気がしないでもないな。


ううむ……、移動要塞が何なのかは知らないが、ホーンは持ってそうな雰囲気があるんだよな。


こいつが動きを止められたなら、その瞬間に攻撃。


止められなかったら、普通に戦闘。


これで良いだろう。


いや待てよ?下手にアイテムを使って動きを止めると、発狂モード突入が早まる可能性が……?


オルゴールとか下手に鳴らすと獣になるしな。どこもかしこも獣ばかりだな。


……いや、その時はその時だ。


要塞ともなれば大きそうだから、畳み掛けられるタイミングが大きい方が、発狂モードの早期発動より得難いだろう。


最終的に殺せれば良いのだ。


「良いだろう、手伝ってやる」


「ほ、本当に?!あ、ありがとう、エド!」


そんな訳で、俺達は、砂漠の国サンドランドを救出するために、サーライア王国の「特戦騎士団」と共に進軍を開始した……。




「お、おはようございます、勇者様!私は、特戦騎士団の団長、サイゴン・ドーバーです!」


フルプレートアーマーを着込み、赤いマントを纏った、カイゼル髭の中年が言う。


こいつは、緊張した面持ちで、目力の強い目を見開いて、俺に敬礼をした。


「で?」


「今回は、サンドランドの動乱とのことで、宗主国であるサーライア王国から治安維持部隊の投入が決定されました!その部隊が、我々、三大特務騎士団の一つ、『特戦騎士団』ということになっております!」


ふーん。


「現在、サンドランドで暴れている移動要塞は、小型の機械兵器を吐き出しながら街を破壊しつつ、こちらに向かっているのだとか……。勇者様のお力は我々も知るところですが、現地での救助活動や、小型機の相手は我々が!勇者様には、移動要塞本体を叩いていただきたい!」


ふむ。


「妥当な判断だな」


「ありがとうございます!では、これより進軍を開始いたします故、どうか女神様……?と後方の司令部と共に移動をお願いします!決して、決して前線には……!兵士を巻き込むので……!」


まあ、雑魚散らししてくれて、ホーンをばら撒いてくれるなら、その方が都合がいい。


別に百万のエネミーが湧いても殺しきることは可能だが、面倒なのは面倒。


俺は面倒が嫌いなんだ。


「じゃあ、とっとと進め」


「は、はいーーーっ!!!」


そんな訳で俺は、ララシャ様と一緒に、サンドランドを地図から消しに……いや違うな、あれだ、移動要塞を殺しに行くのだった。




「世界を守る戦いですよ!頑張りましょうね、エド!」


んー……?


「シーリスか。何でここにいる?」


「……いや、私、パーティメンバーなんですけど?!」


あー……。


「そんなのもあったな。最近は見てないから忘れていたぞ」


「酷いっ?!」


そういや、最近は肉盾と、ちょっとした固定砲台くらいにはなるんだったか?


しかし……。


「今回は移動要塞なんだろう?つまりはギミックボスで、お前らにできることはないんじゃないか?」


そう、ギミックボス。


異様に硬かったり、速かったり、飛んでたりして、通常手段では中々倒せないボスエネミー。


楽に倒すには、特定の行動やアイテムが必要という、古今東西のアクションゲームでよく見る存在……。


ムーザランでは、一つのコンテンツというかやり込み要素というかで、ギミックボスのギミックを使わずに無理矢理倒す耐久プレイなんてのも良くある話だし、俺も死ぬほどやったが……。


今回はまあ、恐らくはギミックのキーアイテムらしいアニスがいるから、このアイテムを使えばいいんだと思われる。


移動要塞だか何だか知らないが、大物は足先から刻んでだるま落とししなきゃらならないから本当にダルいのだ。楽できるなら楽したいものだ……。


「あ、私達は露払いと、遠距離攻撃での援護に徹しますから」


「そうですか」


……まあ、良いんじゃないのか?


とにかく、ララシャ様の高級砂糖を守るため、戦わなくてはならない……。

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