第88話 歴史の授業
えー、席について。予鈴はもう鳴りましたよ。席についてー。
はい、シーリスさん、アニスさん、クララさん。三人とも熱心ですね、流石は勇者パーティです。
ランファさんとナンシェさんも、よく顔を出してくださってますね。良いことです。
学ぶことは大切ですよ、それはきっと、勇者様の助けにもなりましょう。
さ、授業を始めますよ。
今回は、この国の歴史と偉人について。
本日教鞭を執らせていただきますのは、この私、王立学園史学部のステラ・ロングビル教授です。よろしくお願いしますね。
……この国、サーライア王国は、建国王と謳われるヨシュア・スカイ様によって作られた、大陸一の国家です。
大陸……。
まず、他の大陸間とのやりとりがほぼない為、便宜上この大陸は「中央大陸」と呼ばれていますね。
最近は、西方大陸の「帝国」が、こちらの大陸に入り込んでいますが……、それについてはまた今度の機会に。
はい、そして……、この大陸のほぼ中心部にあるのが、サーライア王国。
その周辺に、ドワーフの都市である「鉱山都市ウェルハース」、エルフの土地「エルフの森」、ビーストマンの国「ビーストランド」、砂漠の国「サンドランド」、聖なる都「フィンドルニエ」……。
様々な国がありますが、これらの国は、我が国と同じ文化圏で、同じ言語と同じ通貨を扱います。
何故だか分かりますか?
……はい、シーリスさん。
そう、そうですね。
これらの国は、元々一つの大きな国だったからです。
建国王ヨシュア・スカイ様……。
元は、「ニホン」という異世界からいらした方でした。
その妻達がそれぞれ子供を産み、それぞれが国の支配者になり、分裂した。
分裂前の国名は、「ヤマト国」……。
この国立ヤマト学園も、そのヤマト国のある頃から存在していたので、かつての国と同じ名前なんですね。
ヤマト国は、建国王ヨシュア・スカイ様の統治の元、三百年間続きました。
ヨシュア様はレベル300にも達していて、とても長い寿命があったんですね。
ビーストマンなどは、種族として短命なので、長寿を得るために修行してレベルを上げる……、なんて話は皆さんご存知ですよね?有名ですからね。
ビーストマンはそうやって、レベルを上げて不老化した存在を「神仙」や「仙人」と呼んで尊びますね。豆知識程度に覚えておくと良いでしょう。
話を戻しますが、種族としてはヒューマンのヨシュア様は、レベル300なので、三百年もの時を生きました。
実のところ、三百歳頃のヨシュア様は、まだ見た目は四十歳程度だったそうですが……。
しかし、愛する妻達に先立たれ、耐えきれなくなったヨシュア様は、四十歳ほどの身体機能のままでもすっかり老け込んでしまい……。
ある日、眠るように息を引き取ったそうなのです。
やはり、愛のない世界に耐えきれなかったのでしょうね。
身体的な老いよりも、心の衰弱の方が良くないんです。
その辺りは、医学部の方でお話が聞けるので、興味がある方はそちらも受講してくださいね。
そうして、ヨシュア様亡きヤマト国は、ヨシュア様の子孫達の手によって分割されたのです。
ヤマト国のような巨大過ぎる帝国が一つにまとまっていたのは、ひとえに、ヨシュア様の圧倒的なカリスマと力のおかげでしたからね。
一国としてまとまるには巨大過ぎるため、順当に分裂し……、その中でも、勇者のヨシュア様と聖女様の長子が、この国……、サーライア王国を作り、ヨシュア様の権威を引き継いだのです。
残念ながら、分裂した国々は、ヤマト国時代と比べると治安などが低下してしまっている地域もありますが、それでも、言語や貨幣が統一されているのはとても大きな利点で、史学者の中には建国王最大の功績とまで言う人もいるんですよ。
次に、魔族について。
魔族とは、人類に敵対的な、知能のあるモンスターのことを指します。
ゴブリンやオークも、広義では魔族なんですよ。まあ、モンスター扱いが普通ですが……。
この、魔族は、モンスターを指揮して、人間の領域に侵略してきます。
大陸の北の方から現れますね。
最前線のアジンバリーなどでは、日夜凄まじい戦いが、今この瞬間にも行われています。兵隊の皆さんには感謝しましょうね。
それでこの、魔族という存在ですが……、倒しても倒しても、定期的に復活する存在なのです。
三代目勇者『カジュート・カワード』の倒した魔王が、「この世に邪悪がある限り、私は何度でも蘇る!」と言い残し斃れたという伝説は有名ですよね。皆も、娯楽小説などで何度も見たはずです。ベストセラーでしたし……。
この言葉を元に研究すると、どうやら邪神という悪しき神が存在するらしく、その邪神が魔王を異世界から召喚しているらしいのです。
勇者召喚と同じようなシステムですね。
ああ、魔王が召喚されると言っても、「ニホン」とは違うまた別の世界から来るそうですよ。「魔界」という世界らしいですが、詳しくは分かっていません。
とにかく、魔王は倒しても何度も蘇り、人類に牙を剥くのです。
もちろん、かつては、魔族と和平しようとしたり、封印しようとした勇者もいらっしゃいました。
残念ながら、どれも失敗に終わっていますが。
魔族は、人を食べたり、人の身体を苗床にして繁殖したりと、どうやっても人とは分かり合えない存在ですから……。
封印も、結局はいずれ解かれてしまいますし……。
魔王の襲来は、大凡百年おきに起きる『災厄』で、避けようのないものなのですね。
今回も、十年ほど前に魔王軍が現れて、現在は魔王軍との戦争状態にあります。
今回は、実に二百年ぶりの魔王襲来で、普通は幹部として現れるはずの『四天王』が倍に増えて『八魔将』となっているのが特徴ですね。
専門家の見解によると、百年間かけて力を蓄えていたという説が有力です。
まあそれでも、今回の勇者様は既に、八魔将を二体も討伐なさっているそうですよ!
きっと、大丈夫です。
我々人類は負けません。
私達はここで、知恵や知識を身につけて、国を助けることができる人材になりましょうね。そう言った小さな国民一人一人の働きが集まって、魔王を倒す大きな力になるのですから。
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