第81話 捨て犬系ヒロイン

はい、どうも!


栄光の勇者パーティの美少女魔術師、シーリスです!


今回は、修行の為に王都の学園に来ています!


王都の学園は、建国王ヨシュア様の意思で、「遍く民に知る権利を!」と、広く開かれた知識の殿堂ってやつなのですよ。


つまり、私みたいな貧農の出でも、お金さえ払えば入学できて、魔法を教わることができるんです!


建国王様の頃の時代では、人種による差別とか、奴隷とか、身分格差によって学校に行けなかったりしたそうですよ。怖いことですよね。


まあそんな訳で、私は学園で、魔法を中心に色々学ぼうと思っています!


どれもこれも、エドを助けるため!


もう囮一号だなんて言わせませんよー!




王立学園。


王都の一角、ちょっとした男爵領並みの広さを持つ、学園都市です!


ここでは、学問を研究する「学院」を中心に、王都中の子供達に初等教育を施す「学校」など、様々な学問に関する機関があってですね……。


……その中でも、「魔法学校」という、魔法について研究するところに、私は足を運びました。


因みに、クララも一緒に来てますよ!


アニスとナンシェは「冒険者学校」に行きました。そこで、斥候や狩人としての技術を磨き直すそうです。


ランファは「武道学校」に、センジュは「工業学校」行って、鍛え直す!とか言ってましたね。


私も同じ気持ちです!


……と言っても、私、魔法は独学でやってきたんですけどね!人に習うほどお金がなかったんで!!!


「では、行きましょうか、シーリスさん」


「ええ!行きますよー!新しい呪文をたーくさん覚えて、エドをびっくりさせちゃいましょう!」




で……、学園なんですけど、授業料を払えば基本的には誰でも授業に出れますね。


入学試験とか、そういうのはないらしいです。


何でも、建国王ヨシュア様が、「受験はもう嫌だ!」とか言ってたらしいですよ?よく分かりませんけど……。


そうして、私とクララは、攻撃魔法の授業を受けに来ました!


クララは神官なので、攻撃タイプの魔法は苦手なんですけど、ある程度使えて損はないですし……、相手が使ってくる攻撃魔法の予習にもなりますから!


もちろん、後で私も、クララと一緒に回復魔法の授業を受けますよ!


「ほう、君は……、あの勇者パーティの魔術師なのかね?よろしい、ではまず、的に向かって得意な攻撃魔法を使ってみたまえ」


白い髭を生やした魔導師のおじいさん先生に言われたので、私は早速、呪文を唱えました!


「あかいろ!まわって、ねじって、すすめ!『ファイアボルト』っ!」


すると、私の自作の杖から、赤い灼熱の光線が出て、木製の的を焼き尽くしました!


ふふーん!ばっちりです!


杖は子供の頃から愛用している相棒!


夜なべしながら、山で拾った良い感じの木の棒を、村の工房のおじちゃんから借りた刃物で削って、丹精込めて仕上げた一品です!


装備すると、気のせいか、魔法が使いやすくなっている気がしないでもないですね!


詠唱も本を読んで頑張って覚えたオリジナルですよ!


魔法の詠唱には決まった形がないですからね!


イメージ力によって、術の威力や規模が制御されるので、その為に言葉の持つイメージの力……「言霊」を口から放って、術を操るのが魔法なんです!


本当なら、魔法の言葉である「言霊」には、それぞれに深い意味があって、使い方が難しいらしいんですけど……。


お金がないので詳しい意味は調べられなかったので、私のイメージが乗ったオリジナルの言霊を使ってます!


そうしたら、色々と上手く行ってるので、多分これで合ってますね!


それにほら!また新しい呪文を覚えたんですよ私!すごくないですか?!


「な、なんたる……っ!」


「え?」


「き、君は何をやっているのか、自覚しているのかね?!」


「ひっごめんなさい」


え?これ、怒られる感じですか?


エドを怒らせたら殺されるので、私の腰は異様に低くなってますからね?


怒られるとすぐ謝っちゃうんでやめてくださいよ……。




「謝る必要はない!君は天才だ!」




……はえ?


え?


何、何で?


……わ、私の時代が来ましたかこれ?!


私ツエー展開ですかっ?!!


エドにも褒められますか!!!


「そんな、信じられないほどいい加減な詠唱と、単なる木の棒から、ここまでの威力の魔法を完璧に制御できるとは!まさしく、勇者パーティの一員として相応しい!!!」


ぁえあ?


「完全に意味のない、口語制御ができていない術であるからして、無詠唱だ!無詠唱を、魔杖を使わずに精神イメージのみでここまで制御するとは……!杖も凄まじい!単なる木の棒で、魔力の焦点器たる魔力結晶も、魔力加速を行う魔紋も刻まれていない!これでは持たない方がマシといった代物で、よくもまあここまで……!」


あ、だめです。


ちょっと泣きます。


泣きますね、うん。


「うえーん!」


「えっ何でいきなり泣いてるのかね……?」




……先生に事情を話したところ、無事にドン引きされて、魔法の基礎から教えてもらえることになりました。


曰く、「才能のゴリ押しで無理やり魔法をひり出している」「普通なら発動するはずがない」「頭がおかしい」と……。


私は泣きながら、基礎の勉強を頑張りました……。




こ、これだけじゃ終わりませんよ!


もう一つ、「切り札」を用意します!


私は、エドが神殿関係の仕事でいない隙に、エドの部屋に潜り込みました……。


そして!


「あ、あのー、すみませーん……?」


「……犬の仔か。どうした?」


「わ、私に、魔法を……、『ルーン術』を教えてくださいっ!!!」


「……ふむ、良いだろう。我が剣に、今後とも忠義を尽くせ。さすれば、私としても、多少の助力はしよう」


「あ、ありがとうございますっ!」




……こうして、無事に「切り札」も用意した私は、いつでも次の冒険に旅立てるようにして、エドの仕事の終わりを待ちつつ、まだまだ学園で勉強を頑張るのであった!


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