第74話 最深部到達

『カタカタ……!』


「で、出ましたよ!多くの冒険者を葬った最悪のアンデッド……、『回転骸骨』です!」


それは、大型の曲刀……半円状の、人が乗れるほどの刃を二本持ち、それを上下に構えて。


その湾曲した刃を、手だけではなく足指でも支えて、刃に乗り。


そのまま回転しつつ突っ込んでくる、スケルトンのアンデッドだ。


ムーザランでも、初心者殺しと名高いクソエネミー……。いやムーザランにクソではないエネミーはいないんだけど、クソエネミー……。


こいつの何がウザいのか?と言うと、この回転突撃攻撃だろう。


超リアルなVRゲームであるレジェンズアニマでは、多段ヒットだのなんだのの所謂「ゲーム的処理」はあまりされないのだが……。


だが、「攻撃の当たり判定が長々存在する」「質量が大きい突進攻撃」「ついでにガード削り性能抜群」というのは、VRゲーム以前のテレビゲームでも嫌われる害悪だった。


しかも一体や二体ではなく……。


『カタカタ!』『カタカタ!』『カタカタ!』


群れで出る。


「んぎゃー!死ぬー!」


汚い悲鳴を上げるシーリスを蹴って横に退けて、俺は……。


グレートメイスをインベントリから取り出して。


『カタカタ?!』


骸骨の突進に、被せるように叩きつけた。


「所詮は骨だからな、重さがないから、こうしてもっと重いものを叩きつけると死ぬ。もしくは……」


俺は、打刀を取り出し……、居合一閃。


「隙間に斬撃を捩じ込んでも良い。なんでも良い、殺せれば」


大曲刀の隙間に捩じ込まれた剣閃が、骸骨の胴を割り、回転中の骸骨はその勢いのままバラバラに砕ける。


因みに、今回使用する武器は、神聖属性に変質してある装備を使うこととしているので、アンデッドの類は殺せるので安心してほしい。


「後は純粋に……」


歌唱術発動。


「A———、RA———、MAMA—MALCHE—、Shioz———fRA———!ktyN———sHiorA———!」

 

大いなる地母神マルシェよ、畏み申す。


死して尚歩む者達に再びの眠りを与え給え。


《死者退散》


……アンデッド退散の、神聖なる歌だ。


俺を中心に広がる神聖属性の波動が大きく広がり、触れた骸骨を吹き飛ばして灰にしてゆく。


「「「「きゃあああ!!!」」」」


……波動の余波で囮共が吹き飛ばされたが、ダメージはないので良しとしよう。




『ギッ』『ガッ』『ゲッ』


「うっわ……、見ました今の?一撃で三体まとめて粉砕しましたよ?」


「さっきなんて、カタナの切先で引っ掛けて転ばしたよね……?」


「あ、相変わらず、凄まじい戦闘能力ですね……!」


端の方でわちゃわちゃしつつも、俺を見てそう言ってくる囮共。


まあタゲが分散してるだけで助かるので、サボってても良しとする。戦力としては見てないしな。


「にしても、凄い数ですね……!」


「ええ、本当ですね」


「上層にも結構いましたけど、ここはかなり多いですよ……!これが全部地上に出れば、王都は……っ!」


「シーリスさん……、大丈夫です!私達で止めましょう!」


「クララ……!はいっ!アンデッド共を倒して、凱旋しましょう!散っていった冒険者達の為にも!」


俺の殺した冒険者の為にもなるのだろうか?


一瞬考えたが、どうでもいいのでスルーした。


「それより、妾としては、この骸骨共の動きが作為的なのが気になるのう」


「そうだよ!上の階層では、少なくともこの骸骨の存在を隠そうとしてたっぽいよね?」


……ふむ?


「そうですにゃあ。上の階層での骸骨は、何というか……、コソコソしてたにゃ」


「となると、上層にいたのは斥候、ここにいるのは本隊だと?」


「『侵略』ということかの?ダンジョンが?」


なるほど。


「ダンジョンのモンスターは、ダンジョンから出てこないのか?」


俺が口に出す。


「滅多にありませんね。あっても、斥候だとか本隊だとかではなく、増え過ぎた弱いモンスターが溢れる感じでしょうか?」


クララが答える。


「では、このムーザランの骸骨がダンジョンから湧き出しているのはおかしい、異常だと」


「はい、そうなんです」


ふーん。


ムーザランでは、ダンジョンなんてあってもなくてもモンスターに満ちていたから考えたことはなかったが、確かにダンジョンからモンスターが漏れているのは異常事態っぽいな。


ただこれは、見るからに戦略的な動きがある。


自然現象的に、余ったモンスターが溢れた!とかではなく、何者かが作為的に、ムーザランの骸骨を召喚して操っている感じが……。


俺は、ララシャ様の伴侶として相応しくなろうと、ムーザランで軍事や戦術について学んだから分かる。これは、何者かによるこの国への破壊工作だ。


……が、気付いてはいるが、別に言わなくてもいいだろう。


何故か?


「最終的に全て殺すので……」


「え?!いきなり何言ってんですか?!怖……」




で。


今現在、ダンジョンの最深部、百階層のボス部屋に来たのだが……。


「お、おかしいです!何もいません?!」


「この階層のボスは、Sランクモンスターのレッドドラゴンがいるはずなのに……!」


「ど、どういうことにゃあ?」


「分からん!だが、警戒しろ!」


囮共が武器を構えて……。


「「「「きゃああっ!!!」」」」


吹き飛ばされた。


謎の暗黒の波動……、その主とは……?










———————


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