第72話 彼方からの呼び声
今日も今日とて、ダンジョン攻略。
五十階層に到達し、歩くのは終わりだ。
今までは、雑魚エネミーしか出なくて稼げなかったから、ボスだけ倒してショートカットの開通のみをしてずっと真っ直ぐに進んでいたのだ。
だが、そろそろエネミーもホーンをそれなりに落とす奴が増えてきたし、気遣わなきゃならないらしい初心者やらも見えなくなってきたので、良い加減に戦うこととした。
そう思ったんだが……、おや?
「くっ?!ここにもスケルトンが?!」
「うわっ!こいつ、強いぞ?!」
「か、数が多くて……ぐわあああっ!!!」
雑魚NPCがやられてるな。
「た、大変ですエド!助けないと!」
シーリスがなんか言ってるが……。
「いや、あいつらが死ねばあいつらのホーンが手に入る。その後にエネミーを倒せば一石二鳥だ」
と返す。
「何言ってるんですか?!……もうっ!そこの人達!助けは必要ですかっ?!」
しかしシーリスはそう言って、火の魔法をぴょいぴょい撃って、やられていた雑魚共を助けに行った……。
「助かったよ、お嬢ちゃん……。俺はケリー・マンダム。Bランク冒険者で、このパーティ『夕焼け蜻蛉』のリーダーだ」
雑魚……、ケリーと名乗ったそいつは、スタデッドレザー(鋲付き革)の鎧に、ショートソードとラウンドシールドを持った、二十代半ばくらいの男だった。
丸い鼻をかきながら、頭を下げて礼を言ってくる。
「ケリーさん、ですか。あの、Bランクなんですよね?どうして、その……」
「こんな中盤の階層でやられてたか、って?」
「す、すみません……」
「良いさ、言いたいことは分かる。それなんだが……」
ケリーは語った。
「まず、この五十階層。ここはご覧の通り、森のフィールドが広がるエリアだ。出現するモンスターも獣系と亜人系が基本だな。これは知ってるよな?」
「は、はい」
「だが……、最近はどうも様子がおかしくてな。これを見ろ」
ケリーが指差した先には、そう、スケルトン。
人骨のアンデッドの燃え滓があった……。
「スケルトン……、ですね。確かに、この環境でスケルトンが出るのはおかしいです。で、でも、スケルトンってそんなに強くないですよね?」
「そのはずなんだが……、このスケルトンは、倒しても倒しても復活するんだよ。唯一、火の魔法で倒した時には、骨が焼かれて無力化するみたいだが……」
は?
「む、無限に復活するスケルトン……ってことですか?!」
え?
……そんなもんなんじゃないのか?
スケルトンは、神聖属性か光熱属性で焼かないと、無限に復活するだろうそりゃ。
ムーザランでは少なくともそうだったぞ。
「その上で、スケルトンなのに強くてな。剣が殆ど通用しないんだ」
そりゃそうだろ、物理でスケルトンを倒すなら打撃一択だ。
「おまけに、動きが素早くて、こう……、剣を構えて転がる動きが厄介でな」
回転骸骨だろ?そんなの、ムーザラン名物で……。
俺ははっとして、倒れた骨を見る。
このホーンの残滓……、間違いない。
「ムーザランのアンデッドだ」
「「「「ええっ?!」」」」
囮共が声を上げる。
「そ、それって……、どういうことですか?!」
「知らん。事実を言ったまでだ」
「エドワード様、お教えください。このスケルトンの弱点は?」
クララが聞いてきた。
「打撃。完全に黙らせるには光熱属性か神聖属性で焼く」
なので、簡潔に答える。
「……聞きましたね、ケリーさん。こちら、勇者パーティです。そちらのパーティは速やかにギルドに帰還して、この情報を届けてください」
そう言って、勇者パーティであることを表す『特別執行員印章』を見せつけるクララ。
「マ、マジかよ?!あんたら、勇者パーティだったのか……?!い、いや、分かった!すぐに帰還して、ギルドに報告する!」
ケリー達は帰った。
で、俺達は……。
「エドワード様、ダンジョン攻略のついででよろしいので、このことについて調査をしてください。これは、特別執行員としての要請です」
なるほど、勇者パーティは有事の際には市民全てに命令権を持つ……って話だったか。
俺が勇者なのでは?俺に権限はないのか?とは思うが、それは置いておいて。
調査……ねえ?
まあ別に良いか。
「攻略のついでに階層を調べるくらいは構わない。だが、何を調べるかなど俺は知らん。明らかな異常がない限りは気付かないだろうから、後で文句を言われても責任は取れんぞ?」
「それで結構です。異常がこの辺りにないのであれば、それはもっと深いところにあるということになるでしょうから」
なるほど、どの道奥へ潜るのには変わりないってことか。
「よし、では攻めるぞ」
出現するモンスターは、ケリーとかいう冒険者が言い残していった通りに、獣や亜人が多い。
例えば、ふわふわマン……。
「ワーウルフです」
二首子犬……。
「オルトロスです」
一つ目小僧。
「サイクロプスです」
……とにかく、脅威になるようなのはいなかった。
「はあっ……、はあっ……!い、いや、結構キツイんだけど?!」
「き、貴様!モンスターの群れに平然と無策で突っ込むな!貴様は良くても我々は死ぬぞ?!」
「あ、妾の腕前じゃこの辺りでもう無理じゃぞ。後はサポート役として逃げ隠れすることしかできんからよろしくのう」
囮共が使えないのはいつものことなので、とりあえずスルーして、と……。
「そろそろ八十階層だ、一旦戻るぞ」
「え?戻るんですか?エドのことだから、ずっと稼ぐのかと……」
「ララシャ様のお弁当が無くなったんでな。補給しにいく」
「アッハイ……」
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