第66話 パーティメンバーとの雑談
「そう言えば、お前らも着いてきたのか?」
猫っぽい半獣のランファ、耳長のナンシェの二匹。
スワンケルドのダンジョンで会った、二人組の女冒険者……。
なんでこいつらが着いてきたんだ?
「こんな良い武器を貰っておいて、スワンケルドのダンジョンでたくさん助けてもらえたのに、何もなしなんて、ビーストマンの名折れにゃ!」
「一度殺された私達を蘇生してくれた恩義に報いたいんだ。それに、お前のような強い冒険者の仲間になりたいのは当然のことだと思うが?」
「本音は?」
「……んー、まあ、エドさんが勇者様だって聞いて、そのパーティメンバーになりたいって気持ちもあるにゃあ」
「私もだ。新たな英雄譚が生まれているところを傍で見たいと思うのはおかしいだろうか?」
ふーん。
「まあ好きにすれば良いんじゃないか?」
どうでもいい。
だが……、勇者?とやらをやっているつもりはないぞ。
しかし、どうやら巷ではそうなっているらしい。
クララにそのことを訊ねると……。
「その件ですが、勇者が魔族に『操られていた』領主を討ったという、ある種の美談に仕立て上げられました。これは、政治的な判断によるものです」
とのことだった。
要するに、自らの意思で悪政を敷いていた悪い貴族なんてこの国にはいないよ!ということらしい。
まあ確かに、国としてはその方が良いよな。
悪政をやっていた貴族がいるなんて、そいつを貴族に任命した王が馬鹿みたいだと思われるだろうし。
まんまと国に利用されたような形になっているが、まあ実害は出ていないので良いとしよう。
「へえ……、じゃあランファは、自分の家伝の『驚天流』の正統後継者になる為の旅の最中ってことなんですね」
「そうにゃ!一族が受け継ぐ『驚天流』を極めて後継者ににゃって、ビーストマンの国であるビーストランドの『武闘大会』で優勝するのにゃ!神仙になる為の第一歩にゃ!」
「ナンシェはどうなの?旅の目標とかある?」
「いや……、特にこれと言ったものはないな。だが、エルフの長い生の中で、永遠に色褪せない素晴らしい冒険をしたいとは思っている」
囮共が、囮同士で何やらイチャついている。
同性愛ってやつか?
この世界に人権団体がいるとは思えんが、まあ好きにすれば良いんじゃないかな。興味ないので……。
「ほらっ、エド!エドも、パーティメンバーとは仲良くしなきゃダメですよ!」
囮一号、シーリスが言う。
「何故だ?」
「これからずっと旅を共にする仲間なんですからね?コミュニケーションをとっておくのは当たり前です!」
えっ、なんかそんな仕事みたいな話なの?
……いや、冷静に考えると仕事でやってんのか、こいつらも。
プロジェクトチームが仲を深め合うのは当然だろ?と言われれば、うんまあそれはそう、となるのは確かに合っている。
が、しかし。
「お前らは所詮囮だからな……。いてもいなくても良い訳だし……」
「酷いっ?!も、もうちょっと私達のことを大切にしてくれてもバチは当たりませんよ?!」
「何かメリットがあるのか?」
「うーん……、私がエドのことを好きになります!」
そうですか……。
「そうですか」
「それやめてください?!露骨に興味ないやつでしょそれ?!」
いや……、女は、って言うか、世界にはララシャ様がいらしてくださればそれで良いみたいなところあるし……。
「なんだ?俺と恋愛がしたいとでも?」
「えっ?!そ、それは、そのぉ〜……?や、やっぱり、勇者パーティだしぃ……?」
勇者パーティだから何だ?
クララに再び訊ねる。
「勇者パーティは大抵、男性の勇者と女性の冒険者によるパーティになります。そしてそれは、まあその……」
「……全員、勇者と懇ろになる、と?」
「そうなります……」
えぇ……。
イカれているのか、この世界は?
「ここもまた、政治的な判断になるのですけれど……、勇者の稀血を外部に流出させるのは問題ですから、パーティメンバー内で留めておくという名目で、勇者の血の拡散を防いでいるのですよ」
ふーん……?
「よく言う。実際のところ、囲い込みなんだろう?」
「……そう言う面もあります」
やはりな。
「最初にして最大の勇者である、建国王ヨシュアのパーティも、『学院の天才女魔導師』に、『友好国の身分が高い女斥候』、『教会の聖女』、『獣人の女チャンピオン』、『狩人にしてエルフの姫』、『ドワーフの女鍛治師』というメンバーでした。それぞれが、建国王の子を産みましたが、建国王の子は素晴らしい才気と魔力を持っていまして……。この国では、その子供達の血統が貴族なのです」
「へえ、その貴族が今やアレか」
俺は、先日の白いブヨブヨ星海類になった領主を思い出す。
「……血が薄まったと言うことなのかもしれませんね」
あっそう、興味ないわ。
「……そんな訳ですから、エドワード様にはこれから、多くの誘惑があると思われます。決して、乗ることのないようにしてくださいね?」
……は?
侮辱か?
「俺がララシャ様以外に靡くとでも?」
「い、いえっ!そ、そうではありません!」
顔面を蒼白とさせて言い訳の言葉を口から漏らすクララ。
「そうではなく!寝所に潜り込まれたり、女性と二人きりになったりすると騒ぎ立てられたりと、そういう面倒が起きるかもしれないのです!そこを気を付けて欲しいのでして、貴方様のララシャ様に向ける愛にけちをつけるつもりは……!」
……あっそう。
まあ、それならとりあえず良いとしよう。
要するに、アレだ。
「『ハニートラップ』ってことか」
「そ、そうです……!実際に何があったかではなく、騒ぎが起きることそのものがよろしくないのです。分かってくださいませ、エドワード様……!」
はー、ハニートラップ。
ムーザランではそう言うのないから新鮮だなあ。
クソバカでかいスズメバチに追い回されるというハニートラップ(即死)とか、抱きつかれると発狂ゲージが溜まる膨れ女のハニートラップ(発狂死)とかはあったけど、純粋にエロいことをされるなんてまずなかった。
レーティングは一応、そのグロさからR18にはなってたが、アダルト面でのR18はなかったな……。
一応、性機能は死んでいないし、精液も出る。
確かに注意は必要……、ん?待てよ?
「俺の種で子供を作るとどうなるかは気になるな。誰か産むつもりはないか?」
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