第43話 ダンジョン作り

準備が終わっていたので、早速ダンジョンに潜ることに。


ムーザランはまあ、その辺にクソエネミーが転がっているダンジョン世界のようなものだったが、そんなムーザランにもしっかりとダンジョンと呼ばれる空間はあった。


それは、洞窟や遺跡などのステージを指す言葉ではなく、儀式場にて贄とホーンを捧げることで開く、暗黒世界のことだ。


音韻(ホーン)を産み出す女神の写身たる『音具』に、様々な贄を捧げると、ダンジョンが開き……。


ダンジョンを攻略すると、貴重なアイテムや、武具を強化する『律珠』などが手に入る。


特に、最高位たる金色の律珠を求めて何度もダンジョンを周回することを、我々廃人プレイヤー達は「金玉マラソン」と言って、揶揄というか自虐していた。


そんな俺も何度も金玉マラソンをして、貴重なアイテムを何百万個も揃えている。


下品?


残念ながら、レジェンズアニマ民は品性も人格もカスゴミだぞ。


こんなクソゲーやってて人格が歪まない訳ないだろ。


いや、人格が歪んだ奴がやるからクソゲーになっているのか?多分そっちだろうな。


さて、俺としては、狂える深淵の大喇叭ダンジョンの周回を提案したいのだが……。


あそこの敵はうま味が高いからな。


一周するだけで百万ホーンは固いし。


儀式素材も慣れたもの。


『喇叭の音具』に、『不死者の髄液』『龍の心臓』『結晶蝸牛』『震える交接腕』『処女の鮮血+15』だな。


《喇叭の音具》

《『原初の女神』の抜け殻たる遺骸から作られた神器。

喇叭は、特に子宮を使って作られた。

儀式素材を捧げることにより、ダンジョンを開く。》


通称、狂深大ラ。


捧げる贄の俗称は、精子、心臓、キンキラ、チンポ、15血と呼ばれている。真に最悪である。


俺は儀式素材を油紙に包んで、ギルドのテーブルの上に置いた。


「じゃあ早速、ダンジョンを開くための儀式を……」


「おげええっ!!」


「う、うわあああっ?!!」


「あ、頭が、痛いぃ……?!!」


ん?


どうしたんだ、騒がしい。


ギルドの連中は突然、泡を吹いて倒れ出した。苦悶の表情を浮かべながら、嘔吐したり、悲鳴を上げたりと大忙しだ。


全く、今度は何のイベントだ?


急にランダムイベントを起こされて、行動を中断されるのは面倒極まりないな。


顔を真っ青にしたクララが、過呼吸になりながらこちらを睨んでくる。


「し、しまって、しまって!!!その、呪物を、しまって、くださいっ!!!」


は?


何を言ってるんだ、こいつは?


「ダンジョンを開くんだろ?」


ダンジョンを開くのに、何故儀式をしないんだ?


「あ、ぇあ、え……」


デカ帽子の囮一号(シーリス)は、股から暖かい液体を……、あー、これってあれか、尿か。


『聾の者』である俺は排泄をしないから、久々にこう言うのを見るな。いや、汚濁は嫌ってほど眺めたが。


へえ、失禁。


面白いな、人間の機構ってやつか。


「おぼろろろろろ……」


薄汚い盗人である、囮二号(アニス)は、全自動吐瀉物吐きマシーンと化している。


面白いな、女が吐瀉物を吐くシーンを見るのはいつぶりだろう?


他の面々も……、いや、立っているのがやっとと言う様子だが、爺さんは立っているな。流石は肉盾、他の囮とは格が違う。


「我が剣よ、一旦、儀式素材を仕舞え」


ああ、ララシャ様。


いと尊き御方が、愛しき我が姫がそう仰られるなら、そうするが。


「……この世界の存在の魂の質を見た。どれも、酷く脆い。この粗製な魂では、ダンジョンの儀式に耐えられまい」


んー……?


ダンジョンの儀式に耐えられない?


つまり、ダンジョンは存在しない?


なら、何故、ダンジョン攻略などという言葉が……。


「どうやら、この世界では、ダンジョンの発生も原理も異なるらしい。周囲から話を聞くがいい」


なるほど……。


ララシャ様は間違えないし、間違えたとしても俺が武力で無理矢理正解にするので、ララシャ様の言葉は絶対に正しい。


では、聞いてみるか。


「ダンジョンを開くための儀式はしなくてもいいのか?」


「ぎ、しき?何のこと、ですか?」


「ダンジョンとは、『原初の女神』が産み損ねた世界の水子であり、無限の暗黒に流された虚数軸の世界だ。故に、世界を超えるための儀式を必要とする……。違うか?」


「違います!ダンジョンとは、世界から溢れた魔力が固まって、モンスターを産む異空間になったもののことですよ?!」


ああ、なるほど。


流石はララシャ様、御慧眼をお持ちでいらっしゃる。


つまりは、この世界のダンジョンと、ムーザランのダンジョンは、呼び名は同じでも実態は異なる訳だ。


ムーザランの豚は全長4mくらいあって人のことを丸呑みする。だが、この世界の豚は人間に食われる家畜だ。


ダイアモンドと炭のような、同名の同素体ということ。


そういうことだ。


ここはムーザランではない。


全く、それならそうとあらかじめ言っておいてもらえないものか?


お手数をかけてくるなよ……、カスタマーセンターに鬼電するぞ?


その辺は良いとしよう。


何故か、今回の事でギルドから再び損害賠償に100000Gほど賠償金を請求されるというちょっとしたハプニングもありつつも、早速ダンジョン攻略だ……。

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