第6話 エンカウント
「クズが!ゴミがぁ!ララシャ様をォ!死ね死ね死ね死ねェ!あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
「これこれ、そこまでにしておけ」
怒りのあまり死体を斬り刻んでいたところ、ララシャ様からストップが入った。
「はい」
はい、緊急停止。
だってララシャ様がやめろって言うんだもん。
「もう死んでおるぞ」
「ああ、そうですね。ですが、ララシャ様に手出しをした奴は、死後の安寧すら赦しません。もっと刻み、焼き払おうかと」
「よい、捨て置け」
「はっ、御意に」
ララシャ様がそう言うなら仕方がない。
ああと五千回くらいは斬っておくべきだと思ったが……、慈悲深いララシャ様に感謝するべきだな、奴らは。
俺は、ショートソードを鞘に納めて、盗賊のドロップアイテムを……って、何だこりゃあ?
《粗製な武具塊》
《「終わりゆくムーザラン」から遥か遠き世界、「剣と魔法の世界ファンタジアス」で一般的に流通している武具。
人の領域を逸脱せし「聾の者」が振り回せば、細枝のようにへし折れるだろう。
即ち、ただのゴミクズに過ぎない。》
ハズレアイテムかよ。
いや、他にもあるな。
《王顔の金貨》
《サーライア王国にて一般的に流通している貨幣。
サーライア王国においては、ムーザランとは異なり、貨幣が価値を持つ。
刻まれているのは建国の王の肖像であるが、その顔は東方人のそれである。》
《粗製な革袋》
《ファンタジアスで一般的に流通している雑貨。
獣の革を加工した、丈夫な袋。》
《粗製な干し肉》
《ファンタジアスで一般的に流通している食料。
うまくはないが、生きる為の糧である。
「聾の者」は、口にしたとて何の効果もない。》
ゴミだな。
まあ、貨幣は貰っておくか……。
貨幣は合計で、3000ゴールド程になった。
どうやら、通貨の単位はゴールドと言うらしい。
銀貨でも銅貨でもゴールドと数えるようだな。
3000ゴールドがどれほどの価値があるかは不明だが、どうやら、この中くらいの金のコイン一枚が100ゴールドという訳らしい。
俺が、死体漁りを慣れた手つきで終えると……。
「き、貴様!」
先程の、金髪ポニテの態度が悪い女が話しかけてきた。
ムカつくな、おい。
殺しちまうか?
こんなNPCなんて、いてもいなくても変わらんだろ。
俺が剣に手をかける……、その時。
「やめよ」
「はい」
ララシャ様の制止が入った。
んー!
ララシャ様がダメだよって言うならダメだよなあ?!
俺は剣から手を離す。
「何者だ!いきなり人を殺すなど!」
剣を向けてくる金ポニテ。
はあ?
何だこいつ、やる気かよ。
剣に手をかける俺。
「やめよと言った!」
「はい」
てへっ!反省反省!
人殺しはダメだよねえ!
平和が一番!
さて……。
「何だお前は?」
結局、なんなんだ?
喋るエネミーを倒しただけで、なんで呼び止められなきゃならない?
意味不明だろ。
「こちらのセリフだが?!」
はぁ?
何驚いてんの?
って言うか態度デカくないこいつ?ララシャ様の御前なんだけど?
「いきなり出てきて、こ、こんな……、酷いことを!」
酷い?
周りを見る。
赤い……、臓物の……、現代アートだな。
死臭が漂うが、ムーザランはいつもこんな感じなので慣れている。
血、内臓、死骸……。全て、比喩とかではなくマジで物理的に親の顔より見た物だ。
おっと、そんなことよりホーンは……、うげえ!たったの500?!!!
これっぽっちじゃ何にもできんぞ?!
精々、安物の矢を50本買えるくらいか。
効率わっるぅ……。
ゲンナリしながら俺は、前に進もうとするのだが……。
「ま、待てっ!まだ話は終わっていないぞ!」
金ポニテに呼び止められる。
うっぜぇな、良い加減にしろよ。
……いや、いいや。
無視無視。
「どこへ行く?!」
無視だ。
「あ、あのっ!お待ちになって!」
あ?
「お嬢様?!いけません!このような下賎なものと言葉を交わすなど!」
金ポは無視だが……、こっちの金髪イギリス巻きのガキはなんだ?
ああ、貴族ってやつ、か。
服で分かる。
ムーザラン貴族のそれと比べれば、やたらと現代地球ファッションに近いファッショナブルな白ドレスを着ているが……。
その他にも、黄金細工のアクセサリーをいくつも身につけているからな。
それも、見せつけるような感じではなく、あくまでも品よく清楚に纏めている。
一目で貴人と分かる出立ちだ。
「お前は誰だ?」
「き、貴様ぁ!こちらの御方をどなただと心得る?!無礼だぞ!!!」
はぁ。
「知らんな」
「何だと?!サニー様を知らないだと?!!貴様、もしや……、バルゴーン帝国の間者か?!いや、それどころかその力……、魔族でもおかしくはない!」
興味のない情報をワッと浴びせてくるのは勘弁してほしいな……。
「お退がり下さい、サニー様!この男は危険ですっ!」
はあ……。
このイベント、強制なのかよ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます