エピソード10「生き残るために今すべきこと」

第104話 物騒なデート

 再開します。弱り目に祟り目な状況が続いていますが、これからしばらく間、連続投稿します。

 でも「間が空きすぎて色々忘れてしまった」でしょうから、以下をお読みください。


《これまでの粗筋》

悪魔ジェスガインにクラスメイト全員ごとファンタジーゲーム世界に送り込まれた三田九十九。しかし九十九だけは海賊版をやっていたお陰でSF系装備であった。

悪魔ジェスガインは九十九たちを壊滅させるためにいくつもの策謀を練っていたが、九十九が装備を生かしてそれを粉砕していく。

王女にしてワ―ライオンのゲオゾルドの猛攻も九十九は難なく撃退、捕獲に至る。

学校一の才女・仙川と合流すると、仙川はすぐに非凡な能力を発揮する。まずは九十九が捕えたり保護した者たちの仮住まい先をささっと決める。次に九十九の所属する銀河第三連合に加入し、九十九が困っていたドローンの扱いを代行することを宣言した。



――――――――――――――――――――――――――


 日が暮れたので仙川と九十九はブロズローンの町に戻ることにした。

 仙川がすでに慣れた様子で〈移動板ボード〉に腰掛ける。


「話もあるからゆっくり飛んでくれるかしら?」


「了解――でも話ならドローンを通じていくらでもできるよ?」


「もう! デートしましょうってことがわからないかしら?」


「ああ、そうか。なるほど、ごめん」


 そういって九十九は高度5メートルで、ドローンを7機併走させながら時速25キロで飛んだ。


「今日は仙川さんありがとう。合流してくれたばかりなのに色々やってもらって! こういうのって八面六臂の大活躍っていうのかな」


「リエエミカさん達があそこまで協力してくれるのはわたしも意外だったかしら。とにかくわたしも感謝しています」


「これも全部、仙川さんのお陰です。どうやってリエエミカ達を説得したの?」


「いいえ、説得ではなくリエエミカさんが自発的に呪印を使ってくれるといい、アンライトさんが〈アウクシリア〉になりたいと言い出したの」


「そ、そうなの?」


「もしかして三田くん、3人が三田くんに凄く協力的な理由がわからないのかしら?」


「えっ……うん。正直――心当たりはないかな」


 そう恐る恐る答えると、仙川は九十九の背中で大きく深いため息をついた。


「鈍――可哀そうなアンライトさん達……」


「ええっ……なんかすいません」


「まあ今はいいです。それよりも三田くん、明日からのことなんだけど、何か考えているかしら?」


「えっ? いや、とくには考えていないけど?」


「では悪魔ジェスガインの罠のあぶり出しに集中するのでいかがかしら? わたし達を殺す仕掛けがどれほどあるのか早急に知っておかないと」


「いいけど――そんなことできるの?」


「確実性のある策はないけどしらみつぶしに情報を漁っていくしかないと思うの」


「というと……オシロス老人を締め上げるとか?」


「もちろんそれは明日にでもしましょう。また帝国軍人であったスプライスとソクソーンからも、エバグル王国侵攻の指揮をとりそうなセクション・人物を教えてもらい、拉致しましょう」


「ええ? 拉致? 捕らえて拷問にかけるっていうの?」


「リエエミカさんは記憶をのぞくこともできるそうなの。また記憶を消すことも簡単だから誘拐して情報を引き出すことに大きなリスクはないかしら。三田くんなら簡単に誘拐できるでしょう?」


「ええっと……まあ」


 九十九は仙川の剛胆さに舌を巻く。平然と見ず知らずの者を誘拐しようという発想には恐怖すら覚える。

 だがすぐに自分の暢気さにも気づく。悪魔ジェスガインは確実に2年A組を抹殺しようとしているのに受け身になっている暇はないのだ。

 九十九は気持ちを引き締め、仙川とリエエミカに甘えることにした。


「うん。情報を持っている人は〈催眠ヒプノシス〉や〈麻痺パラライズ〉で動けなくして捕まえてみせるよ。でも移動するコストは無限じゃないのでそこは理解しておいてください」


「確かにコストをしっかり考えないといけないね。あっと、云い忘れていたけど〈英王〉というエルフはリエエミカさんが遥か東北にある、ザンザリオンという国のエルフではないかと言っていたの」


 これに九十九は仰天する。


「ええっ? あの水晶に少し映った映像だけでそこまでわかるの?」


「まだ確証があるわけではないけど、首元の刺繍がザンザリオン調とリエエミカさんは言っていたの。ザンザリオンはリエエミカさんの先祖が対立の末に捨てた国らしくて、ここホス大陸のエルフのほとんどがザンザリオン出身だとも言っていたかしら」


「ザンザリオンは一枚だけ記された地図があります。衛星の映像と照らし合わせ位置が確認できます」


 そういってMIAが表示した地図には千葉県のような形の大陸が描かれていた。そのほぼ中央にある一区画が点滅し、そこがザンザリオンなのだろうとわかる。

 

「ちなみに今いるエバグル王国はここです」


 点滅した地区は千葉県で言うところの埼玉寄りの場所にあった。

 エバグル王国とザンザリオンの間には6つの国があり、決して近くはない。

 なぜそんな遠方の国がエバグル王国にちょっかいをかけるのかがわからない。

 それをいうとゲオゾルドのガチカミ国も離れており国交がないのだ。


「あんまり広範囲を調べるのは無理かな~。エネルギーの残量も無視できないし」


「それはその通りなの。あまりに広範囲を詳細に調べるのは難しいからやはりピンポイントで拉致して情報を聞き出すしかないかしら」


 九十九は仙川を味方にしたことで明るい展望が開けた気になっていたが、そうではないのだと考えを修正する。

 仙川が加わっても悪魔ジェスガインの魔の手から逃れるのは簡単ではないであろう。生き残るという細い線を懸命にたぐらないといけない現実は変わらないのだ。

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