第99話 残りのエネルギーはまあそこそこあるよな……
「どうしてこうなった?」
九十九は気づくと東方八聖のゲオゾルドとヘオリオス、そして〈紅の暴勇〉スプライスとファンタレを、リエエミカ達が棲む巨樹に連れて行くために奔走していた。
さらにその30分前には仙川をリエエミカ達がいる巨樹に運んでいたのだ。
仙川はリエエミカ達との挨拶もそこそこに、リエエミカと深刻な話を始める。現在九十九が抱えている奴隷の話などであった。
しかも九十九に続きを聞くなと仙川は断りをいれてきた。
「三田くんは、わたしがリエエミカさん達とお話をしている間にゲオゾルド、ヘオリオス、更に〈紅の暴勇〉のスプライス、ファンタレを個々に運んでください」
そういわれて九十九はそれに従う。この間も仙川たちの会話をドローン越しにでも聞くことを禁じられた。
九十九は戸惑ったが「聞くな」と言われてむしろホッとした。聞くことで対策を考えなくてはならなくなり、無駄に責任を感じる事態から解放されたからだ。
事件が起こるたびに自分の信念が揺らぎ、苦悩することは九十九にとっては非常に重荷となっていた。
仙川が全てを見越して提言しているのはわかるが、正直甘えたかった。
彼女のその人間力の高さにただただ圧倒され、少しばかり畏怖すらしてきている。生まれながらにして初期スペックが常人とは大きく違うのだろうと確信できる。
初対面の、しかも人種も、生まれてきた環境も違うリエエミカと短時間で打ち合わせができる能力はあまりにも特別だ。
なまじの魔法よりもアメージングだった。
仙川がドローンが撮影した情報の全てを閲覧・他人と鑑賞する許可が欲しいというのも了承している。悪い結果にならないだろうと確信できたからだ。
ゲオゾルド4人は逆らうと眠らせてしまうという〈隷属の首輪〉の効果で運ぶのは簡単だった。「お前たちの国の秘密を全部吐け」と命じただけで4人は見事に眠り込んだのだ。同時にゲオゾルド達が抱えている秘密が重大なのだともわかった。
残った〈紅の暴勇〉には引き続き獣人の警備をするようにきつく言いつける。
回収し、リエエミカの元に運ぶと仙川は九十九にまた別のお願いをしてきた。
「獣人の皆さんに食糧を運んで食事を終えたら、〈紅の暴勇〉の人たちと一緒にこちらに来るよう促していただけるかしら。あと、貧民街の悪党の方々も!」
元々奴隷や獣人を一か所に集めることは九十九の考案だが、移動と合流する行程も仙川がいつの間にか考えてくれるようになっていた。
心の中で少しモヤっとしたものを覚えたが、九十九は仙川が責任を負ってくれるという誘惑に抗えない。もう何でも丸投げしたい心境だ。
仙川派は移動の道筋を第三騎士団・団長マースクに相談するのはどうかと提案してきて、九十九はそれに素直に従った。
マースクは相談に気さくに応じてくれた。
「まあ、他の騎士団や警備兵に捕まったら自分の名前を出してくれて構わない。何とかしてみせるさ」
こちらの事情も聴かずにマースクはそこまで言ってくれた。〈夜の鉤〉捕獲の例なのだろうが正直ありがたかった。奴隷と獣人とゴロツキ達を運ぶと聞けばいい顔はしないであろうが――。
マースク団長のアドバイスを聞き、意見を参考にすると人目のつきにくいルートを移動する目途がたつ。
今日の俺はまるで配送業者のようだな。
だが別にこき使われているという感じはない。
それよりも〈
現在の〈
それをいうと〈
〈
とはいえ〈
余裕はあるがこれからは計画的に使わなくてはならないだろう。この消費ペースからいうと間もなく節制生活に突入することは目に見えている。おまけにジェスガインがリヴァイアサンクラスの化け物をこちらに向かわせているとなると〈
ピピンは間もなくカルデェン粒子の供給環境が整うというがまだ目途はたっていない。さりとてまた起動して8日ほどだから成果を出せというのも酷な話であろう。
「うん、こうしてみると結構使ったな。でも遊んでいるわけじゃないんだよな~」
まったく無駄がないとは言わないが九十九的にはかなりベストな使い方をしていると思いたかった。
九十九もお年頃なので〈
無駄遣いはしてないと思いつつも〈
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます