第72話 鬼畜たちの真夜中の宴
32軒の民家が集う真夜中の集落――その入り口付近に覆面黒衣の者が14名いた。盗賊ギルド〈夜の鉤〉の構成員だ。
どの順番で村民を皆殺しにしていくか――その算段が間もなく整う時分に九十九は到着した。
盗賊達を〈
〈
また盗賊達を第三騎士団に渡すことで、第三騎士団の手柄になるのではないかと目論む。
九十九は村の中央で3メートルの高さに静止させた〈
次々と盗賊たちをロックオンしながらマースクに連絡をしておいた方がいいと考えつく。
マースクは夕暮れから4時間睡眠をとった後に、冒険者ギルド制圧の準備に取り掛かっており起きていた。
「マースク団長、フギンだ」
「ああ、フギン。緊急の用かな?」
「残念ながらな――取り合えずこれを聞いてくれ」
いうと九十九はマースクに先程の盗賊共の会話の音声を流す
「俺はあの屋根が緑の家を担当させてくれ。あそこの娘は絶対生娘だぜ。心臓を刺しながら股にも俺のを刺してやりてえ~!」
「ひひひ、久々に旦那の死に顔を見ながら発狂する女を抱けるぜ。もうギンギンだぜ」
「子供が8人もいるのかよ。売ろうぜ? 金貨3枚は硬い。ぜったい殺すなんてもったいねえよ。俺の馴染みの奴隷商なら絶対高く買ってくれるって」
これを聞いたマースクは殺気のこもった声を出す。
「なんだ、この鬼畜共は?」
「村を全滅させてそこに居座るつもりのようだぞ。どうも盗賊らしい」
「ふざけた連中だな。しかしどこの村を襲うつもりなんだ?」
「〈赤の曙〉の街道の近くの――え~と〈小池の村〉って処だ。わかるか? 本当に小さい池が近くに2つある」
「ああっ、わかる。とにかく急ぎ連絡してくれたのは納得だ。感謝する。しかし馬じゃ3時間は掛かっちまうな!」
「よくわからんけどワイバーンは出せないのか?」
「今ここの厩舎には夜間飛行訓練をした奴がいないんだ」
「じゃあ誰かを馬で送ってくれ。拙僧は現地にいるので無力化しておく」
「そ、そうか。助かるすまん。夜警の者をすぐに向かわせる」
九十九は連絡を終え、盗賊たちが実際に村の中に入り込むのをじっと待つ。
そうしているとまたも愚痴りたい気持ちがふつふつと湧いてくる。
それにしても面倒くさい。なんで俺がやらなきゃいけないんだよ!
自分がドローンを通じて気づいたからということは頭では理解できるが、いちいちトラブルの対処に直接動かなくてはいけないのが不満だった。
見ず知らずの人間たちの生き死なんかに責任もてるかよ――そう思った時に姉の三七三の言葉をふと思い出す。
「やっかいごとをたった一人で対処しなくてはいけなくなったら考えずにもくもくと動け。やっておけば最悪『取り合えずやっておいてよかった』って思えるから」
言われた時は理解していなかったが今ならばわかる。周りや不運を恨む時間があるならば粛々と作業を進める方が有効だという意味だろう。
九十九はこれ以上は考えずに姉の言うことに従うことにした。
盗賊たちは二人一組で村人を殺害して回ると決め、行動を開始する。
民家の戸口に立った者から九十九は撃つ。万が一に備えて〈
九十九は6人を撃ったところで気づく。
残りの8人がいきなり一斉に逃走に移ったのだ。
ん? 何だ。これは襲われていることに明らかに気づいたな。しかしそれぞれ離れているのにどうやって?
考え込む九十九だったが、逃げ出す盗賊の半数の肩に〈従魔〉がいるのに気づく。
「そうか、そういうことか。誰かの〈従魔〉が狙撃されていることを感知し、仲間にそれを知らせたのか。いや、この展開は予想できなかった!」
九十九は〈従魔〉を持つ者と戦うことをリアルには想定していない。〈ライト&ライオット〉のユーザーではないデメリットが露わになったようだった。
見るとモモンガ型の〈従魔〉を肩に乗せた盗賊はスライムのような不定形になって、林の中に入っていく。
また一人は熱帯魚型の〈従魔〉を出すと〈従魔〉ごと透明になっていく。
「へえこれは面白いな。まあ透明とか擬態・変身は〈
姿を変えても体温はそのままで〈
九十九は〈従魔〉のスキルに感心しながらも1分で8人を狙撃し無効化した。
14人の盗賊を集めると、逃走できないよう全員の肩甲骨と大腿骨を折ってからロープで一気にぐるぐる巻きにする。
村から500メートル離れた木に盗賊達を吊す。吊るした盗賊達を見上げると九十九はすっきりした気持ちとなる。
「うん。確かに『取り合えずやっておいてよかった』って気持ちにはなったな。村人を誰も起こさなかったのもポイント高いだろう。そんで後始末はマースク団長に丸投げだ」
密かにMIAも戦果に満足感を得ていたようだった。
「脳・脊髄の中枢神経の機能を低下させながら随意筋などは十分に機能しており、死ぬ可能性はありません。〈
と魔法を参考に新しく追加した〈
九十九は一人頷くと〈葡萄の木亭〉に帰った。
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