第54話 重力波と神
カトレナーサの〈治療〉に5人が志願し、負傷個所を見せてくる。
それを計測するMIAが経過を報告する。
「通常の魔力とは異なる波状が計測されています。重力波だと推察します」
重力波――とてつもなく重い物質が高速回転する際に発生する歪みのことで、現実で観測されたのは2015年のことだった。まだまだ検出することが難しく解析が待たれているが、このゲームの中では一般相対性理論の定義のままに研究が進み、テクノロジーにまで組み込まれている。
「ええ? 重力波って……まさか〈
「カトレナーサが〈
〈
とてつもない生命力と能力を有する高次元生物という設定で、月に1回ほどの頻度で出現している。
重力波を使うことで時空を曲げて移動したり、攻撃してくるので大勢で宇宙船で追い回すことがイベントの定石となっていた。
ただレイドボス討伐イベントは基本不評で、九十九も2回しか参加したことがない。
なぜ重力波を操れるのか、フギンはカトレナーサに疑問を向ける。
「カトレナーサ、それは普通の魔法とは違うようだが、何なんだ?」
「これは聖霊術なのです。神の力を借りる術なのです」
その言葉に、一同は感嘆のような言葉を漏らす。
フギンは思わずつぶやく。
「神……神なんてものがおるのか……」
「はい、フギン殿の国には神はおらっしゃらないのですか?」
「あ、いや、いるはいるぞ? アハハハ」
フギンが否定的な反応をしたのはこの星にいる神が〈
MIAが再び口をはさむ。
「〈
「おおっ、それは朗報」
とフギン=九十九はMIAと話しているが根本的なことはわかっていない。重力波などチンプンカンプンだ。〈テラープラネット〉は世界中の物理・科学・化学・医学・機械工学などのあらゆるマニアが集まって作っただけに全てを把握するのは不可能である。
MIAの連絡がここではいる。
「とても速い速度で急接近するモンスターが4匹います。イタチのような形状をしています」
九十九の視界にインサートされた映像には確かにイタチやテンに近い細長い体をした動物が映されていた。頭から尻尾まで4メートルを超えている。
毛並みは美しく、ブラウンから褐色にグラデーションになった彩りから素材が高額で取引されるのではないかと想像できる。
〈
「次の怪物が来る。大型のイタチが4匹だから心して備えよ!」
そう言ってからフギンは
ヘッドショットを4匹に決めたが、4匹の移動速度が落ちない。
「あちゃ、寒さに強いタイプか。しかも素早そうだ。サーベルウルフ、2匹ほど引き受けてくれないか?」
「え~っ、あいつ、クルクルうごくからめんどうだな~。かみつかれるといたいし!」
仏頂面をするサーベルウルフに九十九はむかっ腹が立つ。
「つべこべ言うな! また殴られたいか!」
拳を振り上げるとサーベルウルフは尻尾を下げて困った顔をする。
すると日立中、万代、目黒が不満顔でフギンの前に立つ。
「フギンさん~! ロボちゃんを虐めないで! 暴力はダメで~す!」
「『また殴られたいか!』って要するに前に殴ったってことですよね? 良くないですよ」
「ロボちゃんにも意志があるじゃないですか? それは尊重すべきじゃないですか?」
三人の抗議に怯みながらもフギンは疑問を口にする。
「聞きたいのだが、『ロボ』とは何だ? まさかこの狼の名前か?」
三人の女子はロボを撫でながら「はい!」と答えた。
九十九はサーベルウルフがどれほど危険な存在であるか教えたかったが、今はそんな時間はない。
仕方なしにカトレナーサに声をかける。
「13名を守るのが面倒だ。カトレナーサ、助力を頼めるか?」
「はい! 承知したのです!」
カトレナーサは勇ましく頷くと、詠唱を始める。すると全身から青い清らかな光を発し始める。
更にカトレナーサの甲冑の背中の御椀型の突起が上にスライドし、兜に変改して頭部を覆う。
美しい〈
「うっ! あれはガランティスではないですか……」
「強いのか?」
フギンの問いにカトレナーサは強く頷く。
「強敵なのです! 一匹で熊4匹に相当しますです!」
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