第48話 はみ出し者のパーティ
北六条達はフギンの異様さに驚き、足を止める。
目黒が立ち上がり、北六条に語り掛ける。
「いま、私達は~そこにいる烏天狗っぽいフギンさんの引率で、森の中でモンスター達と戦う指南を受けることになっているの~。あなた達もレベルを上げたかったら、フギンさんにお願いして、参加させてもらったらいかが~?」
目黒の言葉にソフトモヒカンの北六条、長身の若松、おかっぱの万代、長髪の日立中が話し合う。
北六条らも目黒らと同様にパッとしない人材ばかりだった。
九十九が北六条に付けたあだ名は「残念」だ。資質的にも外見的にもクラスのリーダーになれる人材だったが、如何せん行動が遅く、発言力も今一つ。クラス内でも残念なことになることが多い。
若松につけたあだ名は「〈
万代は「ツイ廃」と名付けた。万代は良い意味で八方美人でクラス全員のSNSをフォロー&チェックして返信をしていたのだ。
日立中は「魔女」――腰まである黒髪と時々不思議な言動で周囲をぼんやりさせることが多かったからだ。
50秒話し合った北六条ら4人はそろって、フギンに頭を下げる。
「えっと、初対面で申し訳ないんですけど、モンスター討伐に参加させて欲しいです! てか、参加させてください」
「うむ、よかろう。ただし相当に苦しく厳しいぞ?」
フギンの言葉に北六条達は頷く。
「わかっています! てかやらないと明日はないですから」
「承知した。ご迷惑かと思うがよろしく」
「お願いします。要するにこれって自分の為なんですけど」
「冒険には危険しかないじゃないですか。だから自己責任で参加します」
4人の目は真剣そのもので、追い詰められているような覚悟を感じさせる。
北六条たちの参加は九十九の想定内であった。
北六条たちが〈黒樫の森〉に出かける算段を昨日からしており、その様子をライブ配信で九十九は見ていたのだ。
そこで九十九は北六条たちの移動ルート上で討伐のためのミーティングを時間を調整して開き、合流できるように仕込んだのだ。
九十九は北六条達の誰かにクラスを引っ張ってもらえないか考え始めていた。目黒や川崎らは他人のことにまで手が回りそうもないので、レベルを上げて育てたくなる価値がないと感じ始めていたのだ。
巣文字達よりも、クラスの主流でなかった連中がレベルが高い方が、未だに存在するであろうスクールカーストを壊すのに役に立つと思うのだがどうにも目黒らでは心もとない。
北六条らはクラスに馴染めず、孤立していた存在だが問題児というわけではない。
北六条はいつも軽口を叩き、派閥や徒党を組むのを嫌っている少年だった。
若松はともかく無口、万代は特定の友達を作れず、日立中はオカルト的な話ばかりしているだけで人畜無害である。
今回の合流はいわばオーディションだ。目黒らよりももう少しましな人材がいないか探すために北六条らを巻き込むことにしたのである。
総勢14名、アールセリア、〈輝きの狼〉のクロカッド、リッド、メタロ、スパオ、目黒、新代田、川崎、九十九、そして北六条、若松、万代、日立中、そしてフギンが〈黒樫の森〉の中を南西に進んだ。
30分した処で、フギンは足を止める。
「よし、来たぞ! ゴブリン34匹だ。用意するんだ」
50メートルの距離で〈
すると、ゴブリンは全員残らず、後方に吹き飛び、背中から倒れ込む。
「全員、前進して止めを刺せ! 魔法使いにもちゃんと獲物を回せよ」
フギンの号令で、13名が動く。
一番動きがいいのはクロカッドだ。起き上がり掛けていたゴブリンに順々に近づき、〈
次に働いていたのは意外にもアールセリアであった。〈
「ふはははっ! 我が同胞を貴様らに傷つけさせはせんぞ! わが剣さばきに震えあがるが良い!」
王族らしく剣術をきっちり仕込まれているのがわかる。
比べて2年A組の面々はぎこちないスタートを切った。
「えっと相棒……隣のゴブリンを狙ってくれない?」
「それは僕のセリフだよ。だいたい先にたどり着いたのは僕だよ?」
新代田と川崎は一匹のゴブリンを前に口論を始めていた。
そんな2人の前のゴブリンの顔が突如、炎に包まれる。
「ファイヤーアロー!!」
2人の前のゴブリンは目黒の魔法で絶命したが、新代田と川崎は振り返り、声をそろえて抗議した。
「危ないじゃないですか!!」
目黒も後ろに下がりながら言い訳をする。
「ご、ごめんなさ~い、でもそのゴブリンは初めにわたしが目をつけていたんで~」
同様の混乱は北六条らの4人にも起きていた。
「止めは自分が刺す算段だったのではないですか?」
「あ、ごめん。てか、うっかりしていた!」
「ちょ、ちょっと! もう次のゴブリンが迫っているよ! 要するに今は手を動かすってことだよ!」
「で、次はどのゴブリンを狙うんですか? 指示してくれないと迷うじゃないですか!」
北六条達は決めていた連係が状況に合わずに浮足立っていた。
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