第15話 冒険者ギルドにも行こう!
傭兵ギルドで登録を済ませた後、九十九らは教えてもらった冒険者ギルドに向かうことにした。
「よっし! いざ冒険者ギルドに行きましょう!」
目黒が先頭を歩き、新代田、川崎が続き、九十九は殿を務めた。
九十九は改めてパーティメンバーを査定する。
目黒ひまわりはクラスの女子で三番目に身長の低く、ややずんぐりとした体形をしている。化学が得意でいつもは比較的一人でいる静かな眼鏡女子だ。
九十九が目黒につけたあだ名は「40点」だ。やることなすこと、言動まですべて40点の評価に収まるイメージを持っていた。大人しく控え目だが無神経なタイプだ。
新代田風人は、眉毛が薄いなど顔がどこか蛇などの爬虫類めいた風貌をしており、全体的に細い男子である。川崎といつも一緒にいるが基本静かだ。
新代田に九十九がつけたあだ名は「カメレオン」。存在感を消すのに長けており、爬虫類っぽさも相まってカメレオンのようだと思っていた。。
川崎昴は小太りの男子で、新代田とつるんでいる。九十九はいつも目が細すぎるせいか、眩しいような顔をしているように見えていた。
あだ名は「マジシャン」。川崎はよく魚肉ソーセージやいなり寿司を授業の合間に手にするのを見かけるが、アッという間に口に消すことを何度となく目撃していた。
クラスでも自分を含めて最下層なメンバーがそろったな。まあ、何にせよ、何かあっても特に助けないけどな!
基本、九十九は仙川以外のクラス全員を嫌っている。巣文字達の被害を一番受けている九十九をかばう者がいなかったからである。
復讐するほどではないが、窮地になっているところを助けるようなことはないと考えていた。
時機を見てクラスメイトとは別行動を取るが、周囲の状況を把握するまではこのパーティでやっていく気だった。悪魔ジェスガインの仕掛けた何かがあるかどうか見極めるべきだと九十九は思う。
町を移動中、ふいに目黒が足を止める。
「わたしが魔法使い~、新代田くんが戦士、川崎くんが拳僧でしょう――だからいざ戦闘になった時は、一番前、九十九くんがタンク役をお願いね~?」
「えっ?」
九十九がきょとんとすると新代田と川崎もニヤニヤと笑う。
「えっと、やっぱ体の一番大きい九十九氏が盾役をやってもらうのが一番かと!」
「そうそう、だいたいガタイのいい人が先頭って自然だよね~」
目黒、新代田、川崎が決定したかのように、突きつけるように九十九に意見した。
九十九は内心で、なるほどと思う。
イジメを受けていた俺をこの最下層パーティでも沈めて、少しでも優位に立とうって考えか……。
九十九は少しだけガッカリしたが、すぐにナメるなと思う。巣文字や雲雀丘と渡り合ってきた自分と目黒らが対等なわけがない。
「タンクやってもいいよ? でも初回の、一番最初の戦闘は俺が後ろにさせてくれよ。俺、石を投げるのが得意なんだ。これで実績を残せたら、好きにさせてもらうよ!」
それだけいうと、目黒らの反応を見ずに歩きだす。反対されても、遊撃しながらの石投げは実行するという覚悟を見せた。
目黒達も九十九の反抗に戸惑ったが、押し黙る。九十九の言い分に妥協する形になる。基本、交渉能力のレベルが低いのだ。
九十九は3回中2回は投石を外し、目黒達をハラハラさせてやろうと目論んでいた。
冒険者ギルドは石材がたっぷりと使われている真新しい作りだった。
3階建てで大きさも申し分ない。中世ヨーロッパ感もあり4人とも満足する。
「じゃ、じゃ~、行くよ~!」
目黒が先頭を切って冒険者ギルドの中に入る。目黒は率先してリーダーを務める気なのだと知り、九十九は少し感心した。40点のあだ名を付けるのが惜しい頑張りと感じる。
「ごめんください……」
扉を開いて中に入ると、高級酒場のような内装だった。壁も床も同じ渋皮色の塗料で塗られており、壁にセットされた輝く石が室内を照らし、バーカウンターのようなものまであった。
広い施設内に人はほとんどいない。
オドオドしながら受付らしい場所に行くと、身ぎれいな若い女性がいた。
「あの、すいませ~ん。冒険者登録をしたいんですけど~」
目黒の言葉に女性は冷たい視線を向けてくる。そして目黒ら4人を品定めするように見ると、手を横に振る。
「うちは今、飛び込みの登録を受け付けてないのよ。悪いけど誰かの推薦状を持ってきてちょうだい」
「……そ、そうなんですか~」
目を丸くした目黒が大きくたじろいだ。が、新代田達のどうしようという顔を見て、再び受付嬢に声をかける。
「あの……わたし達ここに身寄りがないので、推薦状といわれましても困りまして~。どうしてもダメですか~?」
その目黒の言葉に受付嬢は美貌に明らかな怒りを浮かべる。
「この町の冒険者ギルドはそこらの冒険者ギルドとは違うの! きちんとした取引先があるんだから、身元が不確かな素人が小銭稼ぎができるようなところだと思ったら大間違いなんだから!」
侮蔑にも聞こえる言葉に目黒たちは硬直し、しばらくした後に何度も頭を下げて出ていこうとする。
「申し訳ありませんでした! 右も左もわからないもので……失礼があったらお詫びいたします~!」
そういって出口に向かうと、目黒の背に声が掛かる。
「おまえ達、昨日王宮に招かれた奴らだよな?」
その言葉に振り替えると、大柄で長い金髪の男が立っていた。
ど派手な男性だった。黄色の短着の上に金色の肩鎧をし、手には合計4つの金の指輪をしている。
「俺様はレオド! A級パーティ〈無敗の三日月〉の戦士だ。冒険者ギルドに入りたいなら歓迎するぜ! あぁん!」
まるでロックスター然としたレオドに受付嬢が困惑する。
「よろしいのですか? この方々、明らかに異邦の方のように見えますが?」
「あぁん? いいんだよ、こいつら、王宮から目を掛けられているらしいぜ!」
堂々としたレオドが自分たちに好感を持っているように見え、目黒らは嬉しそうにはにかむ。
さらにレオドの後ろから金髪の女性が現れる。長い巻き毛で上がり眉・涙袋が特徴的な大人の女性といった感じであった。
こちらは全身をダークレッドの皮製品で固めており、熟練冒険者の風格のようなものが漂っている。
「ようこそ新人さん、わたしは〈無敗の三日月〉の魔術師のクリムゾだ。仲間になってくれるというならばわたしも歓迎しよう」
クリムゾはそういって目黒達に近寄る。一人一人に近づいて、肩に軽く拳をぶつけてきた。九十九もクリムゾの大人の色気にドキッとした。
「わからないことがあったら何でも聞いてほしい。何だったらここら周辺でよければ、モンスター討伐の手ほどきをしてあげてもいいよ?」
「本当ですか! えっと、是非にお願いします!」
明らかにテンションの上がった新代田がそういった。クリムゾが好みの女性なのだろうと傍からわかる様子だ。
クリムゾが受付嬢に告げる。
「あなたはいい仕事をしていると思うけど、今、冒険者ギルドは人数を増やすべきだと進言する。特に有能そうな若者は率先して勧誘すべきだ」
すると受付嬢も頷く。
「わかりました。〈無敗の三日月〉の皆さんがそうおっしゃるのでしたら、登録をしましょう。皆さん、この紙に記入してください」
受付嬢に招かれた目黒達はカウンターに並んだ。九十九は自分たちの情報が王宮からどの程度流れているのか気になったが、取り合えず登録をすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます