第13話 ナノメタル細胞
九十九は声を出さずにMIAに問う。
「MIA、ガズ翁という老人の病気がなんなのかわかるか?」
「先ほどからサーチしていますが、やはりナノメタル細胞を侵入させる方が確実性が増します。今のところ、やはり心臓及び血管に関する異常ではないかと鑑定できます」
「そうか。よし、ではちょっと手当に挑むか」
ナノメタル細胞――それは〈
「ノドル、よかったらちょっとガズさんを治療させてくれないか? 俺は医療マッサージの免許皆伝の腕前なんだ。体を大きく動かすこともしないから、任せて欲しい」
という九十九の言葉にノドルとベキンナは驚くが、4分ほど2人で話し合い、了承に至る。
「医療マッサージというのが俺にはよくわからないが、少しでもガズ翁が良くなるならよろしく頼むぞい!」
許可を受けると、九十九は足や肩のツボを押すような仕草をして、ガズ翁にナノメタル細胞を注入する。
人の細胞よりも小さい構造のナノメタル細胞群は、あっさり老人の体に滑り込んでいく。
インチキマッサージを続けて11分した処でMIAが診断報告をあげる。
「やはり心臓の血管の癒着が起きています。他にも血管欠損が複数確認でき、冠動脈に血が充分に届いていません」
「それって手術が必要とする奴だよね。治療には凄い時間が掛かるか……」
「そうでもありません。長さに余裕のある血管の一部を切り取り、補修やバイパス作りをするだけなので1時間ほどで施術は完了します」
「えっ? え~?」
「治療を実行します。よろしいですか?」
「えっ? あ・うん……」
九十九は驚愕したが、そういえば〈テラープラネット〉内で切断された腕を、ナノメタル細胞で結合させるような場面を何度も観ていた。
わかっていてもゲーム内での常識から離れた現象を目の当たりにすると、やはり動揺せずにはいられない。
この後、九十九は1時間もマッサージをするフリをする羽目になった。
ガズ翁の家から出て55分で九十九は脱出ポッドについた。
手術自身は上手くいったようだったが、ノドル達には結果は曖昧にぼやかした。それでも経過を見ようと、九十九はガズ翁の家にドローンを数機在中させることを決める。
脱出ポッドの到着現場はなかなか凄い状況となっていた。
木々を軽く100本ほど根元から吹き飛ばし、直径150メートルほどのクレーターができていた。
「一応、大気圏から突入したという設定に整合性を持たせているのかな? というか、この調整をしたの誰?」
「マスター、おっしゃっている意味が分かりません」
MIAは悪魔によって〈ライト&ライオット〉の世界に叩き込まれた事実をまるで認識していない。が、教える意味がないので九十九も説明しない。
土にめり込んだ脱出ポッドに近づくと、脱出ポッドは3メートル大のラクビ―ボールのような形状であるのがわかる。
また70センチほどの穴が地中深くに向け、空いていた。九十九は〈不時着時自動システム〉でユニット〈ピピン〉が拠点を作るべく、地中深くへ移動した跡であろうと見当をつけた。
「取り合えず〈
そういうと脱出ポッドの外壁の一部がスライドし、50センチほどの穴が開き、そこから次々と淡い光に包まれた各アイテムが出てくる。
〈
各アイテムはそれぞれ自動で整列して配置されると、淡い光を消す。
「あとは……〈
「ポータブルサイズがあります。ポータブルサイズでもコーヒーならば1万倍は複製できます。重量がかなりあるので、〈
「あっ、そう。〈
「〈
「うん、もちろん」
〈
〈
次に九十九は〈
「よし! 感触はいつもと同じか」
着心地を確かめた後に、九十九は不意にジャンプする。
すると垂直に5メートルほど跳んだ。
なんなく着地すると次に付近の石を掴む。破壊音と共に石を握り潰す。
〈
次に九十九は〈
〈
九十九は6メートルほど離れた、太さ40センチほどの木に向かい、狙いをつける。
「〈
と設定し、射撃――すると木は一撃で着弾地点から折れ、倒れる。
次に隣の木に狙いを定める。
「〈
といい、〈
〈
「〈
とモードを変え、引き金を絞ると、空間を揺らす波動がほとばしる。波動を受けた木はのけ反り、揺れるとそのまま九十九とは逆方向にゆっくり倒れた。
「うん、確認終了だ!」
九十九は装備と兵器が〈テラープラネット〉と同じであるとわかり、すこぶる満足した。
これならばこの世界でも長く生きていけるだろうと、一安心できた。
次に九十九が行ったのは虫型ドローン2000機の設定だった。
虫型ドローンは全て人の視界を避けて移動し、情報を採取する能力があった。また一部には戦闘機能も備えたユニットがある。
「そうだな、俺の周りの警戒と監視に100機、俺と同じクラスの奴の監視に100機、町の人々のやり取りの記録に400機、町の周囲を広域に監視するのに300機。ざっとこんな感じだな。ああ、後は俺に関わった者の監視に300機――とりあえずはこんなところだ」
MIAは承諾し、すべてのドローンを九十九の希望通りに配置し、動かした。
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