第8話 銀河第三連合に連絡
九十九は20分ほどニタニタと笑ったが、今後の計画を起てることも忘れない。
「MIA、この星のデータをどの程度現在取得している? 衛星システムは?」
「この星に遭難した直後――15時間前に脱出ポッドから、小型衛星を打ち上げています。この星を網羅・解析するのに62時間が必要となります」
「62時間か……まあ、それまで成り行きに任せるか。で、ここからが肝心なんだけど……」
九十九は緊張して生唾を飲み込んでから尋ねる。
「〈銀河第三連合〉と連絡はついた?」
〈銀河第三連合〉とは九十九のキャラ・サイドワインダーが所属していた組織である。商業ギルドが母体の組織で、未知の星の開拓やレア素材確保をメインで行っている。
連絡を受け、支援がもらえれば、今以上の装備や技術を入手できる。
MIAはマスターに応える。
「衛星を打ち上げてから連絡を取っていますが、返信は今のところありません。」
その言葉に九十九はがっかりする。が、一拍あけてMIAは言う。
「脱出ポッドのログから逆算して、10光年以内に〈銀河第三連合〉の輸送艦がいるはずです。最悪でも3か月以内に連絡が取れるはずです!」
「おおっ!! 輸送艦! たしかアホウドリ、〈アルバトロス〉だっけ?」
九十九はサイドワインダーとして、輸送艦〈アルバトロス〉の護衛のミッションを行っていたことを微かに思い出す。
希望はある!! 三か月は待てない時間じゃない。
輸送艦〈アルバトロス〉と連絡が取れれば、回収してくれるか、惑星開発用の資材を投下してくれるだろうと考えた。
九十九がニマニマしていると、MIAが語り掛けてくる。
「マスター、〈不時着時自動システム〉を起動してよろしいですか?」
「はあ? それって何? 聞いたことがないんだけど?」
「文字通りに、予期せぬ未知の場所に辿り着いたときに、起動するプログラムです。〈ピピン〉というほぼナノマシーンで構成されたユニットを地下に投下・進行させ、鉱石などの採取等から開始し、おおよそ35日後に基地を作成するシステムです」
「へぇ~、35日で拠点を作り出すとか凄いじゃん。是非とも起動してよ」
「報告しますと〈不時着時自動システム〉を実行しますと、現在所有しているカルデェン粒子の5分の1を消費します。サバイバル下ではそれなりのリスクを伴うことになりますが、いかがしますか?」
カルデェン粒子とはFPSゲーム〈テラープラネット〉に登場するエネルギーの一種で、人類の銀河進出を加速させ、安定化させた存在である。銃や宇宙船のエネルギー源として、あらゆるテクノロジーを支えているのだ。
それはエネルギーとしてウランを超える出力と、確かな安全性を誇っていた。またナノマシーンとの相性も良く、〈テラープラネット〉内で不可欠なファクターになっている。
「5分の1か……まあそれぐらいならいいんじゃない。ちなみに残り5分の4で、この体を起動・制御だけで何日もつのかな?」
「大きな破損などがなければ、マスターの体を2361日運用することが可能です。もちろん地下でエネルギー供給の基盤が作れればそんなリスクはなくなります」
「そんなに持つの? じゃあ〈不時着時自動システム〉、開始しちゃってください」
「ですが良いニュースがあります。基地が整い次第カルデェン粒子の共振誘導結合が行え、補充できる可能性が高いです」
「はあ? カルデェン粒子の共振誘導結合? つまりこの星の大気にカルデェン粒子が漂っているということ?」
共振誘導結合とはいわゆるワイヤレス給電のことで、自動に充電できる技術の一つである。
〈テラープラネット〉内では宇宙船内や特定の施設でカルデェン粒子の共振誘導結合が行えていた。
「かなり不安定ですが、カルデェン粒子に近いエネルギーが計測され、位相変換を行えば共振誘導結合を行えます。成功すればカルデェン粒子はこの星のほとんどの場所で補充できます」
そんなご都合主義があるか!? 九十九はそう思ったが、カルデェン粒子に近いエネルギーが何であるのか想像がついた。
「魔力」である。
〈テラープラネット〉でいうカルデェン粒子が〈ライト&ライオット〉内では魔力と形容される可能性は十分に高いと思える。基本が同じゲームならばありえることだった。
難しいことはわからなかったが、魔力を変換してカルデェン粒子がチャージできるようになれば九十九にはありがたいことだった。
「補充できるのは朗報だ。是非とも補充できる方向で頼むよ」
「承知しました。カルデェン粒子の共振誘導結合を優先して運用します。それでですがマスター、もう一つ、大事な決定をする必要があります。脱出ポッドも地下基地建設のリソースに加えるか決めてください」
「脱出ポッドって……え~と俺が〈アルバトロス〉から逃げ出した時に乗ったとされるもので合っている?」
「その通りです。脱出ポッドのパーツを使えば、基地をおおよそ39%早く建設できる目算となっています」
「許可するよ。特にデメリットはなさそうだからね」
「承知しました。シーケンス、開始します。脱出ポッド内の〈ピピン〉を排出、起動させました」
「なんだかんだ切羽詰まった状況ではないな。よしならば、これから思いっきり『ライト&ライオット』の世界を楽しむか」
というと、左隣から咳払いが聞こえた。「静かにしろ」という意思が込められた咳払いだった。
九十九は知らぬうちに考えを声に出していたのだ。
九十九は口のチャックを閉じるジェスチャーをした後に、眠りにつくことにした。
〈ライト&ライオット〉の中では異物であるはずの九十九であるが、ステイタスボードにある表示がされていることに気づき、ワクワクしていた。
文字がバグるステイタスボードであったが、なんと卵のアイコンがあったのだ。つまり従魔を授かり、特定スキルを受け取れる可能性があることになる。
先がどうなるかわからないが、少なくとも絶望だけが待ち構えているわけではないと、単純に信じられた。
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