第6話 ライト&ライオット

 全員の職業をチェックした雲雀丘がどうすべきか思案していると、またも巣文字が口をはさむ。


「合理的にパーティを振り分けるのも大事かもしれないけど、まずはつるみたい奴同士でつるむのが正解じゃねぇ?」


「まあ、それは確かに……では同じパーティで行動したい人同士で集まってみて!」


 そういうと短い話し合いで3組のパーティができた。前の世界でも付き合いのあった者たちが組んだのだ。


・雲雀丘 職業〈聖騎士〉・藤沢 職業〈魔剣士〉・神保町 職業〈暗黒騎士〉・関内 職業〈暗殺士〉


・巣文字 職業〈狂戦士〉・中山 職業〈竜騎士〉・蓮見 職業〈狩人〉・新代田 職業〈僧侶〉


・赤羽 職業〈付与魔術師 〉・小杉 職業〈陰陽師〉・吉祥寺 職業〈呪術師〉・町田 職業〈錬金術師〉


 この構成に仙川玲菜は憤る。


「明らかにパーティ構成が偏っていると思う! これでは皆の職業を訊いた意味がまるでないじゃないか!」


 そういった仙川に皆、無言で接した。正論であるが、やはり今までのつながりを消せないのは仕方がないという流れとなった。

 仙川ら5人が個人で動くと宣言する中、九十九は3人の者とパーティを組むことを強要された。

 

・目黒 職業〈魔法使い〉・新代田 職業〈戦士〉・川崎 職業〈拳僧〉・九十九 職業〈不明〉


 クラスでもドン臭いといわれる4人だった。九十九を含め、4人とも不服な構成だったが、パーティを組めるという魅力に言葉をのんだ。

 パーティを組むと命中・回避・回復・経験値獲得などに+5%の補正がつくのである。+5%の補正は生死をわけるほどに重要であることはゲームをするものならば誰もが理解することだろう。

 九十九もパーティ補正のことを聞き、それなりに安堵したところで4人組の女性に声をかけられる。吉祥寺・小杉らであった。


「あなた方はわたしたちのサポートに徹していただきますわ? 無論、パーティ認定を受けない距離を開けて、わたしたちの後ろをつける形になさい!」


 赤羽は九十九に命令したのだ。それに目黒が顔に不満の色を浮かべ、抗議しようとした。


「まあまあ今回のは決定ではないよ。しかるに数日様子を見て、その後に検証して決めていこうじゃないか!」


 不穏な空気を察したように雲雀丘がそういった。

 九十九は雲雀丘は影響力は大きいがやはり説得力が薄いと感じる。

 雲雀丘の堂々とした立ち振る舞いに皆は耳を貸すが、じっくり聞いてみるとあまり中身がないことにゆっくり気づくのだ。

 クラスメイトのほとんどの情報をおさえる九十九は、当然雲雀丘のパーソナルデータはおさえている。なので人の関心を集めるのはうまいが話す中身が形骸的しているのだ。その理由も抑えている。

 雲雀丘龍児にはとても優秀な兄がいて、大手ゼネコン雲雀丘建設の後を継ぐことになっていた。しかしその兄は突如「アニメ監督になる」といって家を出て行ってしまった。

 兄は家から絶縁状態となり、代わりに龍児が後継ぎとして英才教育を受けることになったのだ。

 信頼していた兄と疎遠になった上に苛烈な英才教育を施された龍児は、日々尊大な態度になっていったという。

 学業や部活動などで龍児は結果を残していくが、言動が時折支離滅裂になるという目撃談が複数確認できている。九十九も2回雲雀丘が破綻した話をするの遭遇している。

 九十九の予想では龍児は優秀であるが、今はただ力任せにエリートを演じているだけだと思えた。

 今現在の雲雀丘は劣化・暴走する可能性が高いと予測できる。姉ともうコンタクトできないからだ。龍児は有名なシスコンで、3歳の上の姉・雲雀丘霞が常に龍児を支え、励ましてきたのだ。

 霞という支えがあって何とかやってきた龍児であるが、二度と姉に会えないとなると話は変わる。

 つまり今の雲雀丘龍児は不安定なリーダーなのだた。


 ふと馬に乗った者たちが接近して来ていることに皆気づく。

 甲冑に緑の短着を着た者たちが騎乗し、10人ほど近づいて来る。


「敵か? みんな、万が一に備えて戦闘準備に入れ!」


 そう藤沢がいった直後に、クラスの全員が武器や杖を手にし構えた。九十九だけ無手であったが――。

 緑の者たちは先頭の者の指揮の元、進行の速度を緩めて、2年A組に近寄ってきた。

 距離を10メートルを切ったところで、先頭の者が馬から降りて、兜を外し、大声を出す。


「皆さまは転移者の方々か? こちらはエバグル王国の者である。啓示を受け、転移者たちを出迎えに来た! 代表者は誰か?」


 先頭の者――エバグル王国の者の呼びかけに皆驚く。

 だが半数の者が悪魔ジェスガインの指金ではないかと疑う。啓示を受けたというが、敵の可能性もある。

 同時に皆は〈自動翻訳〉が自身に備わっているのに気づく。エバグル王国兵の言葉は日本語に聞こえたからだ。

 2年A組内でしばし相談し合った後、雲雀丘が代表でエバグル王国一行と話し合うことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る