第4話 いざ、連絡通路へ

 京王に仕える衛兵による案内に従い、俺はダンジョンを突き進む。


「むぅ、これが東西自由通路か。確かに、矢印方向には東口と書かれているが……」


 歴戦の経験が告げていた。これほどわかりやすい看板がダンジョンにあるのだろうか。いや、十中八九トラップである。どう見ても怪しいではないか。

 だが、俺以外の人間は皆ためらうことなく西から東へと向かって移動している。罠ではないということか。いや、俺以外の人間の存在そのものが、モンスターや悪の魔術師が仕掛けた罠である可能性も拭い切れない。

 既に俺は奴らの術中にはまっているのかもしれない――


「いいや、勇気を出して進むしかあるまい!」


 勇敢さを見せつけるためならば、敢えて罠にも飛び込もう。俺は東西自由通路を使って、西口から東口へと向かって歩き始めた。

 その時、俺はあることに気が付いた。人の流れが大きな波を作っていたのだ。皆左側に寄って列を作るようにして歩き、反対側も同じように人の波を作っていた。


「ふむ、これがこのダンジョンの仕掛けか! 逆らうのは難しそうだ。流れに沿って進もう」


 俺は人の波に乗り、他の者と同じように左側に沿って歩き始めた。すると、摩訶不思議な現象を目の当たりにし、俺は自分の頭がおかしくなったのではないかと錯覚した。


「な、何だこれは……!? はるか遠くまで一直線に伸びた光り輝く絵。しかも、動いている……だと!」


 東西自由通路の壁一面に貼られた長い絵は、眩しく光り輝きながら、様々な動きを見せていたのだ。俺の常識では測れないことが起きている。これは魔法なのだろうか? きっとマリリンにも使えないだろう。

 既にだいぶ歩いたが、光り輝く動く絵はしばらく先まで続いている。これは一体何を意味するものなのだろうか。全く見当がつかない。


 じっと光り輝く動く絵を見つめながら東西自由通路を進んでいると、急に開けた場所へ出た。そこで、俺はかつてない人口密度を体験したのだ。


「こ、これは! いつだかにダンジョンで遭遇したモンスターハウスよりも遥かに息苦しい! これが迷宮新宿駅の神髄か」


 周囲を観察していると、大きく“東口”と書かれた看板が見えた。ついに、俺は東口へ辿り着いたのだ。衛兵曰く、ここから地上へ出ればはすぐらしい。


「いや、だがよく見れば、地上へ向かう上り階段の裏にも迷宮が続いているではないか。宝箱や隠し扉などがあるやもしれぬ。ちょっと、行ってみるとするか」


 より深みへ、新宿というダンジョンの更なる奥地へと進むのだった。

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