第2話 いざ、情報収集へ

 俺はどうかしてしまったのだろうか。


 不思議なことが起こった。マリリンが門を閉じて以降、こちらの世界の言葉を急に理解できるようになったのだ。それだけでなく、文字までスラスラと読めるようになっていた。


 先ほど遭遇した不気味で巨大な眼は「新宿の目」というらしい。どうやら芸術品のようなのだが、一体何を象徴しているというのだろうか。

 この眼を通して、誰かに見られているのではないか。そんな気がしてくるくらい、「新宿の目」には引き込まれるような魅力がある。


 さて、とにかく迷宮を攻略せねば。マリリンはで待つ、と言っていた。黒き巨獣とは一体何なのか。仮に巨大な魔物だとしたら、剣を奪われ戦うことを禁じられた俺に一体何ができるというのだろう。


「それにしても、ここは人の数が多すぎる。とてもダンジョンの中とは思えない!」


 大きめの独り言を吐き出した途端、複数の視線が俺の方へ向けられたのを感じた。同時に、ひそひそと会話する声も聞こえてきた。

 大国の英雄たる俺は、ただ強いだけでなく、五感の全てが人より数段優れている。当然、聴覚も例外ではなった。


「ふふ、ダンジョンだってさ。新宿来るの初めてなのかな」と、3人組の少女。


「あの人、背高いねぇ。外国の人かな?」 と、子連れの女性。


「僕も上京したての頃は迷ったなぁ。地下とかまさにって感じだし」と、2人組の青年。


 鋭い聴覚を持つ俺は、その言葉を聞き逃さなかった。マリリンの助言に従い、現地人との交流を通して情報を集めるのだ!


「君! ちょっと話を聞かせてくれないか」


「え、ぼ、僕ですか?」


 突然見知らぬ大男に話しかけられた青年は動揺していた。


「いきなり話しかけてすまない。俺はこの地下迷宮を攻略しに来た冒険者なのだ。ダンジョンを踏破し、とやらの元へ辿りつきたい。何か知っていることがあれば教えて欲しい」


 すると、動揺する青年の隣にいた友人が陽気に口を挟んできた。


「冒険者どのォ! 『新宿の目』があるこの場所は西口地下広場と呼ばれています。つまり、ここは地下迷宮の入口なのです。ここから東へ進めば、いよいよダンジョン“新宿駅”ですぞ! そして、地下迷宮を抜けた先にがいるはず。ご武運を!」


「そうか……過酷な道のりのようだな。情報提供、感謝するぞ青年!」


 いよいよ、地下迷宮での冒険が始まる。俺は西口地下広場を後にし、迷宮と呼ばれる“新宿駅”へと勇んで乗り込んでいったのだった。


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