現代日本へ転移した異世界英雄、高難度ダンジョン新宿をさまよう
玖蘭サツキ
第1話 いざ、異世界へ
俺はとある大国の騎士――数々の武勲を上げ、難解なダンジョンを攻略し、悪しき巨竜を打ち倒して英雄になった大男。だが、俺の冒険譚が終わることなどない。
さらなる冒険を求めて、俺は愛馬バルンムクを走らせた。広大な世界を冒険し、まだ見ぬ伝説を追い求めたのだ。助けを求める人々には手を差し伸べ、荒ぶるモンスターを蹴散らして土地一帯に平和をもたらした。
いつの日か、俺の知らぬものなど何もなくなっていた。その時、あることに気が付いてしまったのだ。俺がいる世界はあまりにも狭すぎる――
悩んだ俺は、古い友である賢者マリリンに相談した。
「ここではないどこか、まだ見ぬ場所で冒険する方法はないものだろうか」
その時、マリリンはおもむろに立ち上がって杖を振り上げた。すると、マリリンの目の前に大きな穴が開いたではないか。これは一体何なのかと訊ねると、マリリンはにやりと笑って見せた。
「異世界で屈指の難度を誇る迷宮へ続く門を開いた。このダンジョンを攻略してみせよ」
ようしと意気込んで、門の中に飛び込む。俺は未知の世界に足を踏み入れたのだ。今までいた場所とは全く違う世界。ああ、胸が高鳴る!
マリリンが開いた門をくぐると、途端に強烈な異臭が俺の鼻を刺した。一体何の匂いだ? そう思って周囲を見渡した時、自分の世界では見たこともないほど恐ろしいモノが視界に入った。
「な、なんだこれは……! モンスターか!?」
俺が対峙したもの――それは、あまりにも巨大な眼だった。かつて倒した巨竜のそれより、はるかに大きかった。刹那、俺は背負った剣を手に取ろうとした。だが、いつも背に差しているはずの剣が、なぜか無くなっていたのだ!
「な、剣はどこだ!?」
その時、すでに閉じ始めていた門からマリリンの声が響いてきた。
『剣は没収したよ。この世界では武器を使えないんだ。当然、素手による暴力行為も禁止だ。君は現地での情報収集のみを頼りに、黒き巨獣の足元まで進むのだ。私はそこで待っているよ』
そう言い残して、マリリンの穴は閉じた。俺はこの未知の迷宮――シンジュクに、丸腰で放り出されたのだった。
黒き巨獣――それが何を示すのかは不明だが、きっとダンジョンを攻略すればわかるのだろう。俺の新たな冒険の旅が始まった……!
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